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異世界の色  作者: 波間柏ひかた


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80/94

80.短いのに長かった。

「これがどうしたのだ」

「これが金になる?」


さっきまで口を挟む間を与えなかった私に二人がそれぞれ呟く。


1つは真っ白で幾つもの繊細な糸が重なってレースのような模様の塊。もう1つは光にかざすと赤い大人の小指くらいの塊。


「白い方は砂漠の砂が固まったものですよね。

形も大きさも色々ありました。これがあるのは、今のところガインだけなんですよね?」


私は素人ながら考えを伝えていく。


「これは、インテリア、女性が食事するお店や部屋の窓際や棚、香水をつけても変色しなければ、トイレに置いたりもいいかも。そういう風に使えないかと思って」


まだまだある。


「それでペンを見て思ったんですが、硝子製品に優れていそうなので、こう入れ物を作り入れたり、元々かなり硬そうですが、周りを固めて更に崩れないようにできるなら、小さい物はこうして女性には髪飾り、簪に、男性には留め具とか」


王子から紙とペンを奪い書いていく。紙が荒いのか書きづらい。


「面白い」


何故か宰相さんが乗り気だ。


「硝子で追加なんですが、こう多面体にガラスを作って穴も開けられたら吊るしたり、色着けても綺麗ですよね。昼間は日の光で綺麗だし、夜はラーナの魔法石の淡い光で綺麗だと思います」


段々乗ってきた。

キラキラは大好きだ。


「で、この一見濁った赤い石は、ラーナ、灯りに使う石にくっついている周りの石で、捨てちゃってるんですよね?」


「あぁ。かなり硬くてラーナを取り出すとき面倒だ」


王子がかったるそうに話す。


「これ、試しに研磨、磨いてもらえません?

光にかざした時中が赤く透けたので、ピアスや指輪にできたら可愛いと思うんです」


多分ルビーみたいになる気がするのだ。私は胸元に手を突っ込んだ。


「おぃっな、何やってんだよ!」


昨日大胆に夜這いしに来たのに、こういうのには動揺するのか。


「ただネックレス出すだけです」


私は決して変態ではない。


ずっとしていた、転移した時ポケットに入れっぱなしだったネックレスを引っ張り、鎖に通していたへッドとピンキーリングを外し彼らに見せる。


「きっと削ったら小さくなりますよね?その赤い石でこういうデザインとか」


紙にもデザインを書いていく。


「これは、小指にはめます。確か左の小指は運を呼び込む、リラックス効果、右は厄除けやチャンスを掴みたい時みたいな意味だったと思います」


曖昧は仕方がない。まぁキャッチフレーズのようなもんよ。


「赤い石は恋愛に効果ありと言われたりするので女性に人気でるかなぁとおもって。あと赤と黒の色はガインの国のカラーだし、男性は赤と黒でカフスとかいいかも」


次よ重要なのは!


「そして、なぜ女性をターゲットにするかというと、買って欲しいから。お金が動けば経済も回り出す。あっこんなのもいいかと思ったんですよ!」


私は洗濯挟みを2つ背同士の間に鎖をつけた物を書く。これ、私は冬しか使わないけどいいと思うな~。


「この国の生地は綺麗で薄いですよね?せっかく綺麗なのに留める時、針だと穴開いちゃうじゃないですか。で、こういうのを作って羽織る時留めたら生地が傷まなくていいと思ったんです。一個でこう留めても」


絵を書く。


「夜は冷えるから羽織る時いいかもな」


今度は王子が乗ってきた。


「で、これらを作ってガイン特産品として輸出できればいいなぁと思うんです」


あと最後ですが、と二人に昨日食べた夕食について語った。


もし可能ならヴィラスから貝や魚の干物も、海藻もあれば輸入してもいいのではと。


ガインには海がないから、魚介類も摂取できれば身体にいいと思ったし、旨味成分もたっぷりだ。あと、ガインの独特なスパイスをそのままだとヴィラスの人には受けなさそうだから、ヴィラス好みのスパイスにブレンドしてお洒落な硝子ビンにいれ蓋を開けて、ふり入れればいいという形にすれば簡単で見栄えもするから輸出できるかな。


「そんな感じです」


私は酸味があるお茶をぐびぐびイッキ飲みした。ついでにサンドヴィッチもどきをぱくつく。


お肉のスライスが美味しい。


「なんがありまふ?」


もごもご食べながら二人に言う。お母さんに見られたら絶対怒られる。そういうのには厳しいんだよね家のお母さんは。


「よくしゃべったなーそりぁ腹もへるだろうな」


王子は呆れている。


「色々検討しないといけないが、興味深かった」


無理やり会議中の宰相さんを連れてきたのでよかったよ、無駄な時間だったとか言われなくて。


ブレスレットの石は赤に近いオレンジ。気合いでなんとかするしかない。


「じゃ何かあれば、あと少しはこの世界にいるから嫌だけど連絡して下さい」


私は立ち上がり、テーブルから少し距離をとる。


「護衛してくれた人達やメイドさんにお礼伝えて下さい。あっまぁ嫌だけど王様も」


「おぃ!」


王子の手が私に届く前に私は目を閉じ消えた。


「ヴッ」


次に目を開けたら、ルークさんの寝ている上にいた。周りを見ると夜の時と雰囲気は違うけど夜会の時の庭だった。


ジリジリ、じめじめとは違う暖かい日差しと爽やかな風に、優しい花の香りとルークさん。


「戻りました」

「遅い」


切り返しはやっ。


「無事でよかった。お帰り」


青い瞳が近くなる。


怒られると目を瞑り次に備えたら強く抱きしめられた。


どこかでやっばり、気を張ってたらしい私はやっと体の力をぬいた。



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