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異世界の色  作者: 波間柏ひかた


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78/94

78.早く戻りたい。

「転移酔いしたらすぐ言え。」

「はい。」


神殿には何頭もスゥーリーが降りる場所がないと言われ空からは諦め転移で神殿へ行くことになった。


不機嫌そうに言う彼、デュラス王子は昨日の騒ぎで寝不足なのか目は充血していて、ドレードマークともいえる赤い髪はグシャグシャだ。

こちらも、もうさっさと終わらせ今日戻りたいので何も言わない。

私、王子、イケメンザスールさん、その他護衛さんが2名でなんとその2名の内1人は女性。

さすが鍛えているのか無駄のない体つきなのに出てるとこは出ており立っているだけでカッコいい!

しかも美人さん!

羨ましいです。

胸、分けてほしいです・・切実な悩みです。

他にも護衛してくれる人はいて先に神殿で待機してくれているらしい。


私達は魔方陣の中へ入る。

行き来する場所は陣で繋げておくと強い魔力がなくても転移が楽にできるらしい。

ザスールさんにさっき教えてもらった。

「行くぞ。」

グァン。

独特の感覚がきて、やっぱり目を閉じてしまう。

直ぐに地面に足が着いた。

なんとか立っていられたけど、やっぱり転移は苦手だなぁ。

目を開け周りを見渡す。

既に神殿内の中みたい。

建物はやはり白い。

ヴィラスよりも全体が小さい気がする。

「お待ちしておりました。」

魔方陣の前には、お尻迄ある水色の髪に青い目、肌はごく薄い褐色の女性の神官さん、後で知ったけれど神官長さんが出迎えてくれた。

これまた美人。

護衛のお姉さんは、強さとしなやかさを備えた艶っぽい美人に対して、神官長さんは、クールビューティだ。

何が言いたいかというと二人とも、いやこの世界の女性はホント美人ばかり。

「時間があまりないと伺っております。」

「こちらへ。」

挨拶もそこそこに案内してくれたのは、場所は違えど杯もどき。

私は小さく歌い杯もどきに手をかざし力を注ぐ。


・・何か違う。


ヴィラスの神殿の時と同じ事をしているのに、私の力が弱い?

もしかして、信仰の力が少ないからとか?

それとも、土地が疲弊し過ぎてるのかな?

左手首にはめたブレスレットのダート君に貰った石に力をほんの少しそそぐ。

オレンジ色に光った。

という事は力はまだ出せる。

信仰心は個人の自由だし、しょうがないとして、土地の疲弊だとしたら困るよね。

私は更に力を出すイメージをし杯もどきにそそぐ。

石の色が私がなんとか動ける赤まで。

土ってどうしたら元気になるんだろう。

日本だとミミズとか凄くいいって聞いた事あるけど。

やっぱり水と栄養かな?

頑張れ。

端から聞いたら頭がおかしくなった?と思われる事を呟く。

元気になあれ。

もっと力を。

あっ、杯もどきから光の柱が徐々に出て上に吹き出してきた。

ブレスレットをふと見ると赤い。

でも、いつもの光の柱にするにはもう少しだけ。

私は後ろにいる王子達に声だけかけた。


「気を失ったら、お城に戻って少ししたら必ず私を起こしてください。」

「急にどうし・」

「だから、絶対少しして起こしてよ!やることまだ残ってるから!王子!わかった!?」

杯もどきに集中してるので、ついイラつき怒鳴る。

「わーった。」

それを聞いた私は防御膜など必要分の力は残すイメージをし、他全てを注いだ。

あーブレスレットせっかくダート君に作ってもらったのに。

でも、まあ仕方ないよね。



おぃ・・おぃ。

何よ、おいおい煩いな。

「襲うぞ?」

バチン。

無理やり目を開けた。

「ぎゃ!近い!!」

つい手のひらでデュラス王子の顔を押した。

「フベッ」

王子の顔が手に当たりなんか嫌。

眉間のシワに気づいた王子はイラつきを隠さない。

「なんだょ!起こせって言ったろ?!」

襲ってくれとは言ってないから。

「私かなり寝ちゃった?」

私はすぐベッドから足をだし、起き上がって立ち上がってみた。

若干ふらつくが、なんとかなりそう。

「まだ昼飯前。」

「まだ動くなよ、かなり力使ったよな?」

王子もルークさんみたいだなぁ。

寝たいよ、本当は。

「でもあと1つまだ残ってる。」

ベッド脇に置かれた椅子に座っている王子に言う。

「何処か狭くていいから机あるとこ今すぐ用意と宰相さん捕まるかな?」

「あと、片手で食べれるサンドウィッチ、え~と、薄めのパンとパンの間に具を入れ挟んで小さく切ったのができれば食べたい。」

「あと、甘いお菓子も!」

糖分をとりたい!

「アンタ寝てる時と舞ってる時以外は落ち着きないな。」

「デュラスに言われたくないし!」

つい、呼び捨てちゃったよ。

気づいた時には遅い。

絶対怒るよ。

「しょうがねーな。」

「用意できるまで寝てろ。」

ズンズン歩き王子は去っていった。

・・なんか、呼び捨て嬉しかったの?

口元が笑っていたように見えた。

・・変なの。

まあいいや、私は、お言葉に甘えベッドにダイブした。


あともうちょっとでヴィラスに戻ろう。

・・この世界私がいるべき場所じゃないのに、家がもちろん1番恋しいけど、ヴィラスの皆にも会いたくなる。


きっと、さよならの時笑える自信がない。






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