70.やはりトップは違う
「弱く戦闘能力のない娘と聞いていたが」
まだ余裕たっぷりの王様。
私、怒っているんだよ?
ルークさん達は前より色々話をしてくれるようになったけど、刺客の人達のせいで、ラウさん達だけでなく他の人も怪我を負ったりしてるのを隠している。
私はこっそり夜中、ばれない程度にゆっくり確実に治癒するように力を飛ばした。
手のひらに更に力を込め片手づつ作った渦を手のひらを合わせ1つにする。自分で作り出してなんだけど、すごい風。王様の頭上に下がっている国旗がはためく。どこかで花瓶だろうか、割れた音がする。風が私の髪を更に巻き上げ簪がシャラシャラ鳴る。
最初が肝心だ。
政治的に利用されないように先に釘を指しておかないと、また本当に戦になってしまう。
私が理由でなんて事になったら嫌。
私はずっと王様の目を見つめていた。
視線を外したら負けな気がしたから。
「私は誰にも支配されない。利用されるにしても自分で決める」
今度は私が首を傾げ両手の渦を王様に向ける。
「まだヴィラスに人を派遣します?」
まだ刺客送るなら今、あなたごと消すという意味をこめて問う。
「おぃ!」
王子様が私の肩を掴もうとする。
バチバチッ
「イッ」
王様から目を離さず王子様に言う。
「邪魔」
「クックッ気が強い女性は嫌いじゃないよ。」
やっと肘から顔を離した。
「使者殿のお好きなように」
王様は降参のような手振りをする。
「派遣の件も考慮しよう」
私が作った渦は恐らく本当に国を滅ぼせる。
その証拠に周りの兵士、後から力に気づいたか魔術士であろう人達が来たが顔が皆真っ青だ。
…最後迄王様の口元の笑みを崩すことができなかった。
どんな人にしろ頂点に立つ人は凄い。
私はアッサリ手のひらから渦を消す。
「理解して頂けてなによりです」
後ろを振り向き他の人に言う。
「部屋散らかしてすみません」
片付ける手間をかけさせてしまうので頭を下げちゃんと謝った。
「クックッ!面白い。戦場で恐れられた氷の騎士ルークがご執心なだけあるな」
…ルークさん、あなたもサムいあだ名ついてましたよ。
皆にビクビクされながら、休憩させてもらう部屋に案内してもらい、お茶を入れてもらった。
一口飲んでみる。ジャスミンティーのような味と香り。
温かいお茶はホッとする。
念のため疑うのは悲しいけど、自分に毒は効かないように。祝福の力は自分に使えない、治癒などは無理だけど自分を守ったり、攻撃はできるのだ。横にだらしなく立つ人に声をかける。
「どうしてデュラス王子がいるんですか?」
「親父に案内しろって言われたんだよ!好きで居るわけないだろっ!」
そう怒鳴らなくても。
「気が短いんですね」
「アンタに言われたくない!」
「親父にあれだけやらかしたのアンタが初だぜ。よく首つながったな」
少し見直したみたいな表情の王子。
「まぁ、あのドデカイのぶっぱなされたら流石の親父もまずいしな」
「アンタじゃなくてカエデだよ」
私はこくりとお茶を飲みながら先程の事を思い出す。
「気づいていたよ」
「あ?」
「私がやるはずないって」
最初から本気じゃないと気づいていただろうけど、私がどれくらい力があるのか、どんな人間なのか確認したかったのだろう。
彼にしてみればお遊びだ。
でも周りには力を見せる事で牽制になったし、よしとする。
さて、ここからだ。
あっ先に聞いておく事が。王子様にお願いしておく。
「魔術でヴィラスに伝言できるかな?」
「可能だが、何て伝えるんだ?」
「う~ん、明日か明後日の朝には帰ります」
「帰れると思ってるのか?」
帰るに決まっている。
最後は家に帰るんだから。
お茶を飲み終わり、よいしょっと立ち上がり王子に聞く。
「さて。まず、杯もどきってガインにある?」
「はぁ?」
口に飴いれたあげようかな?っていうくらい王子の口が開いた。




