68.ガイン
修正しました。
「デュラス王子っ!」
「デュラス様!」
ルークさん達が殺気だっている。少し離れた所からデュラス様と叫び焦っている集団は彼の国の人かな? 服装が黒と赤を基調としている。
不味い事態になりかけてるのかもしれないけれど、なんだかお昼のサスペンス劇場みたいな状況に私はピンとこない。
「ん?王子?」
「あぁ」
自称王子を失礼だが上から下まで観察してみる。髪は、燃えるような真っ赤だ。いままで見た中で一番派手。しかもメッシュ金だし…。
でもその派手さに負けない容姿をしている。少し褐色のツルツルの肌に鋭い瞳は青。凄い色の組み合わせだけど、合うなー。
誰かに似ている。
「あっ、態度が大きくて俺様なダート君に似ている!」
手のひらをグーでポンとつい叩いてしまう。
「使者殿、アンタ結構失礼な奴だな。この状況わかってんの?」
呆れたように、刃の背で、自分の肩をペシペシしながら話しかけてくる。勿論ローズちゃんは、がっしり捕まれている。
「わかってますよ。あなたは、ガインの王子様ですよね?」
フフンという表情。当たりかな。前に夢で見た旗の色と褐色の肌の兵士。私は選択しないといけない。思わずため息をついた。課題が終わったと思ったら、またすぐ次が発生する。
決めた。
彼に話しかける。
「あなたのボタンでもいいから下さい」
「はぁ?」
「先ローズ嬢離して」
何故彼女を脅しに利用したのかが分からない。けれど、ローズ嬢を見殺しにはできない。ふざけた態度の彼だか、きっと何の躊躇いもなく殺すタイプだ。
「行ってあげる。ガインに。転移してみるから、あなたの身に付けているのを貸して」
「信じるとでも?」
ニヤニヤの王子。
でも探る目は本気だ。
「さぁ?」
私は上からキャラになる事にした。ここで、お城で生活して気付いた事は色々あるけど、その中の一つに時には立場が上の人はそういう態度や雰囲気を出すのも必要だという事。自信のある態度は安心感を生み出したりもする。
まぁ私がそう思っただけなんだけど。何か足元に飛んできた。拾うとカフスだ。拾いながら彼を見る。
「いいだろう。面白い」
よし。成立だ。
「カエデ!」
声に振り向くとラウさんに押さえられているルークさん。他国や王様達、皆いる中で剣振り回されたら不味いよね。
ラウさんさすが。
そしてルークさん、人前なのに呼び捨てですか。私は、ルークさん達やマリーさんを見て笑顔を作った。上手く笑えてるかなぁ? 小さく手を振った。
手にしたカフスを握り場所を念じる。凄い緊張する。吐き気がしてくる。
大丈夫、絶対大丈夫。
「行ってきます」
浮遊感の後にズンと体に圧がかかる感じがして地面に足が着く。膝をつきたいけど、こらえろ。
私は目を開けた。だだっ広い。そこは、イメージした場所。間違いなく王様であろう人が、離れた雛壇席で肘をつき私を気だるげに見下ろしていた。
私が唯一マリーさんに満点をもらった動作。膝を少し屈まさせ、本来視線は下げるが、私は臣下でも何でもない。目を見て挨拶をした。
「初めまして。ガインの王」




