66.驚き
緩やかな弦楽器の音が鳴り響く。
私は神官長に踊りとともに教わった「幸せの呪文ですよ」という昔の言葉を呟きながら、舞う。
中心から円を描くように。
最初より後半の足元がとても複雑だ。
余裕なんてないのにふと上を見上げれば青空が広がる。
そういえば、私は自分の世界にいた時、空なんて最近眺めた事がなかった。
朝は早いし、帰りは学校の図書館で実験の考察など調べていつも夕方。建物が高くないからか、空がとても広く見えた。
あぁ、きれい。
この世界は本当に綺麗だなぁ。
くるりと回ると私の浴衣の上にもう一枚着ている羽織が優雅にひるがえる。
浴衣は淡いピンク。上に羽織るのは白。作りは同じだけど袖と裾が長く広がる作りにした。
帯は他の淡い色とは対照的な赤。耳の横でシャラリと棒の鈴とは違う音が鳴る。頭には、金の簪が4本。
豪華なのを嫌がる私にミリーさんが、もう使ってないからと自分のピアスとネックレスをリメイクしてくれた。
簪は細い繊細な鎖が繋がりあい、ペリドットのようなグリーンの石がキラキラ日の光で光るのが視線の端に入る。気分が良くなってきたせいか、自然と身体から金の粒が。
どうせなら桜の形がいいなぁ。
願い変化させた。
音楽が盛り上がりやっと終盤に入った。
1番外側の円の最後を繋げる為大きく棒を振り上げ地面を突く。
瞬間、何もなかった地面に魔方陣のような物が金の光と共に浮き上がる。
これ、私が描いたのだ。
次に眩しい光の洪水。柱のように縦に吹き上がる。
「えっ」
そこに、夢で会っていたより、ずっと大人びた姿のヴィラが浮かんでいた。




