60.意欲
借りている部屋に戻り着替えて、お昼ご飯を食べ終わり、神殿に行く前に午前中の事をメモしようとアリエヴェルちゃんがいれてくれたお茶を飲もうとカップに口をつけた時。
「よぉ! できたぜ!」
「あちっ!」
突然、私が座っている横にダート君が現れ、顔を除きこまれた。
「近いです!」
「わりーわりー」
人指し指をたて何かを引っかけくるくる回している。あっ私の貸したブレスレットだ!
「それ大事なんです!乱暴にしないで!」
「強化しておいたから、そう簡単には壊れねーよ。ほらっ」
投げてきた。
反射的に受けとる。
あれ?つまんで上に持ち上げると。
「石が1つ増えてる」
透明感のある黄色、赤、オレンジの混ざった色で、形は、まん丸でビー玉みたい。
元気が出そうな色。
「きれい」
「フフン、俺様の力作だ」
あっ背後にルークさんが。
「グェッ」
さっきの私のようにダート君は襟首を掴まれている。私の時より苦しそう。
「城内の転移は禁止のはずですが?副団長殿」
言葉は丁寧だが、全く敬意を払っていない。むしろギリギリと首の締まりが強くなっているような。
「無理っ」
ボトッ。ゴロン。
「ゲホッ」
わかります。苦しいよね。
「侍女殿達も苛立ってますから、要件だけ言ってください。これから確か、会議ですよね?」
「わーったよ!モウルのじーさんより煩いなぁ」
ルークさん、こめかみをピクピクしないで下さい。ダート君が乱れた襟を直しながら、石の説明をしてくれる。
「その石に力を注ぐイメージをしろ。微量でもカエデから出る力で判断し光の色で身体の状態がわかる。黄色、赤、オレンジ。黄色が昨日の午前中、空に近い状態な。オレンジは昨日の夜」
という事は、動ける限界は赤。
正直もう二段階くらい知りたいけど。
「あと今日のな。二段階くらい分かるほうがいいだろ?時間かかるから、とりあえずそれで我慢しろ。いずれ作り直す」
ピンクの玉を渡された。
やっぱりダート君出来る子だ。
「有り難うございます」
「おぅ。さっきから、負のオーラをばらまいている奴もいるし帰るか」
「会議は出てください」
釘をさすルークさん。
「わーってるよ!じゃあな」
初めてダート君がドアから去っていった。
なんか変な感じと思った私が変なのかな。
そして、なんだかんだで時間はあっという間に過ぎて神殿に行き、杯もどきに力をそそいだ後、神官長さんに別れ際私は提案した。
「舞いの衣装なんですけど、浴衣はどうですか?」
「ユカタ?」
「はい。それなら作れるし、着れます」
もう色々嫌がるのは止めて、突き進むことにした。舞でもなんでもやりますよ。




