6.私はカエデ
「使者殿?」
はっ。
「すみません。ルーク様ですね。しばらくの間お願い致します」
さっと立ちきっちり頭を下げる。
挨拶基本!
あれ?
ちょっと引いてる?
「私に敬語や頭を下げる必要はございません。使者様は国賓扱いになっておりますので」
あっ頭下げるのよくないのか。年上の人に敬語なしなんて無理だなぁ。そして私が色々ブツブツ呟いている間に話は進んでいく。
「夜会では私がエスコート役として護衛につきます。また宰相から言伝てがあります。本来なら先に神殿にご案内し神官長と今後についてなどの話し合いのはずでしたが、王子の誕生日祝いの夜会の為申し訳ございませんが明日になります。との事です」
そう、昨日美少女の神様が私を送った場所は今いるヴィラスのお城内のかなり外れた高い塔のてっぺんだったらしい。昔は祈りの場として使用してた場所で今は封鎖していたらしく、神託とやらを受けた神官様はてっきり神殿にくると思っていたのに待てどこず。
そして何故か夜中に異常に強い力がお城のはじっこから発生し、お城の魔法使いさんや魔力の高い人達が察知して大騒ぎに。
私のせいじゃない。ジメジメの中に置かれたせいでスーツはヨレヨレになってしまった。これでも一張羅なのに。
とりあえず夜会とやらに出る事だけ考えよう。
あっ、まずは一言。
「あの、マリーさんも皆さんも使者様ではなく、木ノ下 楓です。楓と呼んでください!」
使者なんて美少女神様の配下みたいで嫌だっ。