59.ヴィラス第2騎士団達
「「嵐が去った」」
「使者様ちっさかったな」
「力も不思議だよなー。団長に膝をつかすなんてすげーな」
「最初あの格好びっくりしたな」
「でも、可愛いよな」
使者様が去ったあと皆はざわざわ話す。
あぁこれでまた使者様を慕う人が増えそうだな。
ちょっと嫌だ。
「しかし、あのルークの顔。ヒューイもとばっちりだな」
団長が僕に話しかけてきた。口数が少ない方なのに珍しい。しかもすこぶる機嫌がよさそうだ。
「でも、塔でお会いした時から気になっていたのは事実です。今日ちゃんとお話したのは初めてですが」
最初、使者様は気絶していたし警護の時も端にいる僕は目立たない。
「ラウニー様が言っていましたが本当でした。僕を見た使者様からは、嫌悪感のかけらも感じなかったです」
むしろ近づかれ触られ、本当にビックリした。
ちゃんと抵抗すれば、華奢な使者様の腕なんて振り払えた。でも、あまりにも嬉しそうに、切なそうに触れられて出来なかった。
なにより使者様は気持ちよかった。柔らかくて…思わずぶんぶん首を振ってしまった。
「使者殿は夜会の時といい今日といい気づいてないのだろうな。きっと気づいていたら、使者殿の感じからして照れるか、恥ずかしがるはずだ」
──使者様からの光の粒を受ける時声がするのだ。
見た目の幼さと違い低めな落ち着いた心地良い歌声とともにそれは降ってくる。
ケガが治りますように。
小さくてもいいから、いい事ありますように。
戦が起きませんように。
生きてほしい。
死なないで。
偽善だなんてわかってる。
でも皆が幸せに。
「…ルーク様にシャルド様…僕も立候補しようかな」
つい声にだしていたらしい。
「クックッ。応援するぞ?まずは、任務外されないよう持久力つけろ」
「はい!」
まずは強くならないと。
「ヒューイ!始めるぞ!」
仲間に呼ばれた。
「はい!」
僕は仲間の方へ走る。
「さて、どうなることやら」
団長は走っていくまだ若い騎士を眺めながら、楽しそうに呟いた。




