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異世界の色  作者: 波間柏ひかた


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52.護衛騎士達~医務室にて~

ー護衛騎士達~医務室にて~


カエデが目覚めてから数時間後。


「大丈夫ですか?」


医務室ではルーク副隊長がベッドの上で壁を背に半身を起こしている。


「ああ。明日には動ける」

「珍しいなぁ。お前がくらうなんて」


行儀わるく椅子の背に肘をつきグラグラ揺らしながラウが話す。


「油断した」


違う。

この人が油断する事はないだろう。戦場での姿を見てればわかる。


相当相手が強かったのだ。


現に相手は生け捕りにされたが壊れかけて話も聞けない。加減が難しいほどの相手。おそらく生け捕りにしたくて加減をした為に怪我をしたんだ。副隊長はこちらに顔をむけ聞いてきた。


「シャル、カエデは?」


「目は覚めてますが、あまり動けません。最低でも今日1日は無理かと」


カエデは倒れてから2日間目を覚まさなかった。なのにフラフラ外にあんな格好で出ていて驚きだ。


「あのバカ公爵焦ってるとは思ったが、即席のわりにいいメンバー揃えてきたなぁ。さすがお金持ち~」


軽いラウだが、この人もかなりできる。

本気でやり合ったら今の僕では悔しいけど、確実に負ける。


カエデには伝えなかったが、僕達は罠に乗って逆に捕らえる事にしたのだ。


公爵の後ろはガインがいる。


ガインは優秀な魔術師が多い。ルーク副隊長はそちらを探っていた。ヴィラスも他国よりは魔術師がいるが、まだ公に動きたくない。


ルーク副隊長は本来副団長いや団長になってもおかしくないほどの実力だろうから適任だった。でも何故いまだそんな地位なのか謎だ。

そして今回は結果としては、微妙だ。

ガインの魔術師が口をわればいいけど。


使えなさそうだよね。


やっとガインと戦が終わり調停を結んだ。慎重にならざるおえない。やっぱり当分油断できないな。


父の影をもう1人借りるか。


「しっかし、カエデちゃん何者?馬車から出ちゃうは、近くにいた奴に聞けば、シャルが切り落とした腕を拾い上げくっつけたんだろ?普通そんなの見たらぶっ倒れるよね」


ラウの言うとおり、僕も聞いてびっくりした。

自分の負ったかすり傷が治ったのは気づいたけど、まさかそんな事をしていたとは。


普通の女の子は良くて気を失うか、まぁ吐いちゃうだろうな。


明け方の事を思い出す。

地面に座り薄くなった月を眺めていたカエデは、とても小さく華奢で、あんな力や行動をするようにみえない。黙っていられなくて腕を切り落とし、戦での余計な事を話してしまった。


頭を撫でられたのなんてほんの子供の頃だ。


僕をなんだと思ってるんだろう。ラウが言うようにカエデは無防備すぎる。あぁでも、だから惹かれるのかも。


そうだ。これだけは伝えないと。


「ルーク副隊長」

「何だ」

「前回のように全身ではなかったのですが、カエデの手が透けてました。しばらくして元に戻りましたが。本人は原因を知っているように見えました」


自分の両手が透けているのを見たカエデは一瞬驚いた表情のあと、諦めるような顔をした。


消させない。

そうとっさに思い加減を忘れ強く抱きしめてしまった。


「なぜカエデなのだろうな」


ルーク副隊長がため息と共に呟いた。

僕もそう思う。

カエデは優しすぎる。

でも、カエデで、カエデに会えてよかったとも思う。


あぁルーク副隊長もだけど、僕も重症かも。


「まぁとりあえずは、今日はゆっくり過ごそうよ~。夕方くらいにカエデちゃん様子みて明日、神殿行くか決めれば?本当は今日神殿行かないとなんだろうけど無理でしょ? 副隊長殿も今日はおとなしくしてさ~」


「そうだな」


僕らは医務室の防御を解き解散した。



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