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異世界の色  作者: 波間柏ひかた


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51/94

51.モテ期? カエデ&シャル

…花の香り?

そのまま辺りを視線だけ動かす。

いつものお城のベッドだ。ベッドサイドにお花を生けてくれたみたい。強くなく、優しい匂いはそこから香っている。


薄暗い。

夜中、夜明けくらいかな。視線を下げるとベッドに顔を伏せているベルさんがいる。

看ててくれたんだ。私は、寝ているベルさんを起こさないように、そっとベッドから出て、近くにあったブランケットをベルさんの肩にそっとかけた。


外行きたい。でも足がやたらふらつく。

私は、壁をつたいながらいつもの客間から出られる庭へ向かった。


なんか体が空っぽな感じ。

でも防御かけないと。何かあったらまた迷惑かけちゃう。腕輪に触れ、庭全体ではなく自分の体ギリギリに、防御と音遮断と念じた。


「よいしょ」


ベンチ迄歩く元気がないので平らな草むらに体育座りをした。


葉のすれる音だけが響く。

風が冷たいけれど気持ちがいい。靴も脱いじゃえ。足を投げ出し上を見上げるとやはり夜明け近いのか青い月が薄い。


どれくらい経ったか、ふいに肩に重たい物、みるとマントが掛かっている。上を向いていたままグルリと後ろへ頭を反らせば。


「そんな格好でうろついたら駄目ですよ」


困った顔のシャル君だった。

私は、なんとなく無視してまた月を眺める。


ふいに自分の手に違和感がした。


手が透けていた。ふとヴィラの言葉を思い出す。


『消えちゃうよ?』


…なんかもういいか。どうでもよくなってきた。

そう思ったら突然体が浮いた。


「駄目です。消えさせない」


苦しいくらいに抱きしめられた。もがいてもまったく動けない。


「気持ち悪いですか?僕が」

「何故?」


意味がわからない。

小さい声でシャル君がポツリと呟く。


「…あいつの腕を切り落としたのは僕です。戦でも沢山殺しました」

「気持ち悪くないし、怖くもないよ」


好きで人を傷つける人なんて普通いないよ。

私はもがくのを止め、シャル君の頭にそろそろと手を伸ばし撫でた。まだお礼も言ってなかったね。


「ごめんね。守ってくれてありがとう」


シャル君の髪が首に当たりくすぐったい。緩くなったと思っていたのにまた、ぎゅっと抱きしめられる。苦しいんだけど。


「カエデ、僕オトコだよ?」


はぁ?

わかってるよ。力もそうだけど、精神的にもこの世界の人は私のいる世界より大人だ。


「知ってる…」

「分かってないよ」


頬に音をたてキスされた。


「ちょっ」

「カエデは、ルーク副隊長が好き?」


グリーンの目で見つめてくる。


「分からない」


キスされて、拒む事もしなかったけど。

──でも。

私は、お母さんやルーク、友達、自分の世界を捨てれない。暗く考えこむ私をよそに、何故か嬉しそうな声が降る。


「まだ望みあるかな」

「え?」


シャル君の顔を見る。


「なんでもない。あっキスは謝らないから」


ニッコリ笑ったら今度は姫抱っこ!


「シャル君!」

「今、防御うまく張れてないくらい力ないでしょう?それに重くないよ。ただ目のやり場に困るけど。」


何でそこで顔が赤くなるの?

自分を改めて見てみれば、薄いネグリジェで身体の線が丸見えだ。しかも胸元が苦しくないようにか緩くリボンが結ばれていた。


「上から見ると胸元が…」

「言わなくていいっ!どうせないし!」


借りてるマントを引っぱる。


「違うよ、むしろ頬にキスのみの僕を誉めて欲しいよ」


オデコにチュッと音と共にキスされた。


「両手塞がってるからこれで我慢する」

「異世界いったい、ホントになんなの…」


思わず呟いた私にシャル君は楽しそうにクスクス笑っている。


「さて、まだ早いから一眠りして下さい。お姫様」


自分の両手を見ると、もう透けてなかった。








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