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異世界の色  作者: 波間柏ひかた


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50/94

50.現実

「それだけ力を使えばぶっ倒れるわ」


帰りの馬車の中でラウさんに、「お前馬鹿か?」と頭をグーでゴリゴリされる。地味に痛いからっ!


「止めてください!」


ギブと言おうとしたら、シャル君が言ってくれた。君は私の味方だ。


あ~やだやだとシャル君と言い合っていたラウさんが、突然動きをピタリと止めた。シャル君も少しして表情が無になる。


「どうしたん…」

「お出ましだ」


私の言葉を遮りラウさんがニヤリとした。

直後馬車は急停止した。

ダンッ


「来たぞ!」


外から扉を叩く音と怒鳴り声。ラウさんの意識はすでに外にいっている。


「カエデちゃん。最大防御して外には絶対出るな。これ命令な」


ラウさんの目が爛々としている。


「久しぶりだなぁ~シャル坊や。城にこもりっきりで鈍ってんじゃないの~?行くぞ」

「まさか」


不敵に笑うシャル君。

目は笑ってない。本気だ。

シャル君はこちらを向き今度はニッコリ笑った。


「大丈夫ですよ」


頭をポンポンされた。


「いってきます」


次の瞬間二人は飛び出した。

私は言われた通り腕輪に触れ防御をかける。

外では、激しい怒号と剣のぶつかる音。


…どれくらい経ったのか。

音が少なくなってきた。

私は自分で自分をきつく抱きしめていた。

我慢できなくなってきて、扉に手をかけ外に出てみた。


そこには何人…10人くらいだろうか。

既に息をしてない人もいる。まだ生きているが荒い息をし倒れている人と目が合う。

…その人の側に腕が転がっていた。


これは現実?

夢でみた時と同じ血の臭い。


──夢じゃない。


転がっている腕をまた見る。無意識に震えている手でその腕を拾い、倒れている人の側に近付いてその腕を近づけ目を瞑る。


元にもどって。周りの人達の傷も治して。


死んでしまっている人は無理だろうか。

ならせめて苦しまないように。

お願い、お願いします。

頬に砂利が当たった。

地面に倒れたんだなと思った。




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