5.ルークという名
「ふ~」
バッタリとお高そうなテーブルに腕と顔をつける。よそ様の家でなんつー行儀の悪いことか。分かってますよ。でも今は許して。
クスクスと頭上から声がした。
「陛下とも無事お会いになられようございました。謁見の間は特に豪華ですし緊張しましたでしょう。なにより宰相様や神官長様、騎士団長様など迫力満点です」
なぜか後半キャピキャピな口調のピンク髪のメイドさん、もといマリーさんがお茶の用意をしてくれつつお話タイム。
「それに使者様はルーク様の忠誠の誓いを…」
「ぎゃーなん、なんで知ってるんですかっ?!」
マリーさんその場にいませんでしたよね?!
女子校なみの情報網…怖っ。
「だって聞いてないですよ。外人さんがプロポーズする時にやる膝ついて手にチュー…」
えっどうしたかって?
軽く握られた手を引っこ抜きましたよ。これ、かなり失礼な態度だったらしい。固まってましたよ騎士様。私も固まりました。
「うっ~思っていたより上手くできたのに最後で失態です」
なれないドレスで、スーツは却下された。そもそも足出しは駄目らしい。飛ばされた日は学校で模擬面接だったからスーツだったんですょ。で、いやあれよと綺麗にしていただきなんとか転ばず面接練習の成果か言葉遣いもまあセーフだったと思う。
しかし最後がなあ。
この歳で免疫ない上に美少女神様が言っていた通り美男美女だらけ。中世の人達なこう存在感、圧がねー。そんな中での手に…いや口じゃないよ?でも手ってゆうのもね。意外とくるよダメージ。そしてチューは曖昧な感じで未遂に終わり、ほっとした。
「ルーク様がいらしたようです」
悶々としてたらまさに。
うっ胃薬この世界にあるかな。
「失礼致します」
低い声とともに入ってきた騎士様。
「先程は失礼致しました。改めまして本日から護衛の任務に就きました。ルーク・ジル・ウィルラートと申します」
いい声のお兄さん、もといルークさんがピシッと片腕を胸につけ礼をとる。つい、ちろりと観察。整ってるけど、無表情でちょっと怖いオーラが。仕事中だからかなぁ。さっきは目を見開いてちょっと感情出てたけど。
そう、このお兄さん姫抱っこの人なんです!
背は180センチくらいかなぁ。
目の色はサンタアクアマリンの石みたい。
明るいけど深い蒼。
髪は黒に近い紺。
まだこの世界の人達を沢山見たわけではないけど黒っぽいのが珍しい。
この国では黒目というか黒のような茶色、黒髪はいないようだ。就活中だし真っ黒な髪の私はいやに目立つ。
そして、そう名前、ルーク。
あぁ、うちの黒豹に今すごく会いたい。