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異世界の色  作者: 波間柏ひかた


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47.疲労からのルークさん

「それは!」


神官長さんが大きな声を出しながら立ち上がろうとした。


「止めろ、落ち着け」


宰相さんが手で神官長さんを制した。


「つっ、すみません」


我にかえり座り直す神官長さん。


そうだよね。

叩かれてもおかしくない。

この世界全土なのか、この国だけなのか分からないけれど信仰心が、かなり強いのは気がついている。だからこそ神託だからと、他から見れば怪しげな私を皆拒否感なく受け入れ更に守ろうとしてくれる。


…話してみようかな。


「私の事になってしまうのですが聞いてもらえますか?私は仕事を決めるために、今就活と言うのをしているんですが、此処にくる1ヶ月前くらいに面接を受けに行ったんです」


なんかもう、遠い昔の出来事におもえてしまう。でも、この世界に来る前の私は本当に必死だった。


「そこは神社、神様を奉る所です」


テーブルの上にある装束を見る。


「そこに採用、受かればこのような装束を着て舞いもしたでしょうね」


私はまた神官長さんの目を見て話す。神官長さんは私のような小娘の話を真剣に聞こうとしてくれていた。


「その時の面接で最後に訊かれました。神様はいると思いますか?と」


今でも思い出す。

私はきっと、今とても嫌な笑みを浮かべている。


「何て答えたと思いますか?」


神官長さんの答えを聞かずに話を続ける。


「私は、いればいいなぁと思います。と答えました。その時の面接してくれた神官さんは、そういう時はいます。と答えないと駄目ですよ。と子供に教えるように、苦笑しながら言いました」


恥ずかしく情けない私。


「学校の先生は就職率を上げる為か過去就職した生徒の職場を私達に教え、とりあえずどこでも受けるようにという感じです。もちろん曖昧な自分がいけないんですが、それがもろに出ました」


いけない。


「話、脱線しました。えっと、ようは、いればいいなが私の精一杯なんです」


続けてと神官長さんが目で言う。となりの宰相さんは、のんびりお茶をすすっている。


「私の国は信仰は自由です。私も人それぞれだと思っています。ちなみに私は無宗教なので、余計に思うのかもしれませんが、真剣に信じてる人達に失礼なのでその装束を着たくありません。信じている人を否定しているわけじゃないです」


伝わったかな?

私はあの面接で思い知った。本当になりたいと思わないとなれない職業だ。でもそれは他の職種もだよね。


ー無いんだよ、なりたいものが。

これは今二人に関係ない。


「わかりました。衣装は検討し直します。取り乱しすみませんでした」


謝る神官長さんは、いつもの穏やかな瞳だ。


「さて話はいいかな」


宰相さんが飽きたという感じで話す。


「しばらくは、神殿以外城からの外出は控えてもらうのが身の為だ。まぁこちらも早めにあぶり出す予定だが」


その表現怖いですよ。


二人と話が終わった後まずしたのは。


「マリーさん、胃薬あります?」


シャル君案内のもと部屋に戻り不味い薬を飲む事だった。


夕食も終わり、またお茶のカップ片手に庭に出て石のベンチに伸びをするように後ろに手をつき空を見上げる。


今日は曇っているのか月が見えない。今日も濃い1日だった。つい言葉が出る。


「疲れたよぅ」


呟いた瞬間ざわりとした。

張った膜は人を察知すると空気が揺らぐ。揺らいだと思ったら。


「大丈夫か?」


髪を触られると同時に逆さまなルークさんのアップだった。


「ぎゃっ」

「前から思っていたが、なんなんだ、その声」


ため息ついてるよ。


「きゃーとか普通出ませんよ」


しかし、まだ改善だなぁ。


「防御今かなり強く張っていて、ルークさん達、マリーさん達には作用しないようにしてみたんですけど」


「ああ。越える時違和感は少しあるが、衝撃はまったくない」


「あとは察知の揺らぎが早い段階でわからないと駄目ですよね。念のためにも。今揺らいだと思ったら、もうこの距離」


あれ?


「具合悪いんですか?顔色悪いですよ」


夜だし月明かりもないので、手元の球体の可愛い手提げランプしかないけど、ほのかな明かりの中でも顔色が悪そうだ。


「どこかのお姫様が勝手に外に出たりしているので心労がたえません」


…私か。

そして嫌味ですか。


「…すみません」


とりあえず謝っておく。

そしたら全く関係ない提案をされた。


「膝貸してくれたら許します」

「はぁ?」

「あぶなっ」


持っていたカップを取られたと思ったら、ベンチに寝転んだルークさんの頭が私の膝の上に乗っていた。


…意外と重い、そしてなんだかとても恥ずかしいし、沈黙がツラい。


「寝心地は?」


なんとなく聞いてみる。膝枕なんてした事ない。サラサラの髪と目が閉じているのでよく見える長い睫毛を観察していると。


「硬い」

「…」


子供の頃母と一緒にピアノを習っていた先生のお家には猫がいた。その猫はいっつも母の膝を選んでいた。私だって乗せたいのに無理に動かすとよく威嚇されたものだ。


硬かったのか…。


「私の姫はもう少し太ったほうがいい」


見ると目を開けている。恥ずかしいんだけど、目を見てしまう。顔は勿論もの凄く整っているんだけど、瞳が好きだなぁ。


ふいに頭を押され、唇が微かに触れた。

目が、顔が近い…。直ぐに頭から手が離れていった。


「…初めてなんですけど」


触れたよね今。思わず唇に手がいく。

多分自分の顔真っ赤だ。


「いい匂いで誘うのが悪い」


また手が髪の毛の中に入ってくる。


「いいよ、抵抗して」


優しい声で、頭撫でながら言われたら無理だよ。


2回目私は目を閉じた。

軽い感触の後目を開けると、私の膝の上で嬉しそうに微笑んでいるのが至近距離で目にはいる。


流されっぱなしだよマリーさん。

まずいです私。











次はマリーさん達視点にしようどうしようか…です。

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