46.私の気持ち
「なぜ、ここに?」
このヨーロッパ風の国にまったく合わない。ちょっと似ているならまぁ100歩譲る。
じっくり見なくても分かる。この衣装は、本物だ。ご丁寧に装束だけでなく金色の冠や鈴まである。
「カエデ様この部屋に防御と音を遮断していただけますか?」
神官長さんに頼まれる。
力もそんなに使わないので問題ない。
「はい」
私は返事をし、腕輪に触れ小さく呟く。
強く防御、音遮断、ついでに外から半透明で見えないように。金色の薄い膜がドーム状に張られた。宰相さんが周囲を見渡し膜に触れ驚いている。
「これは…。感じるのは微かだか触れると予想以上の力が流れている」
「ええ。そしてとても美しい」
二人は誉めてくれるけど、残念ながら私には力も何も感じない。正直、今はどうでもいい。
「それよりこの装束は誰のですか?」
日本人がここにいるの?
「約200年前の使者様の者です」
神官長さんが話始めた。
「約200年前にもこの世界が危うくなったそうです。その時のヴィラスール神が使者として異世界から喚んだと言われています。この服は使者様が喚ばれた時、身に付けていらしたようです。」
神官長さんが済まなさそうな顔をする。
「この服は神官長になると使用する部屋に保管されていました。資料などお見せしたかったのですが資料保管室は誰が閲覧したか常に監視されています。この200年前の出来事は機密扱いの為尚更です。我々は、他者にまだ動きをあまり知られたくないのです」
いくつか疑問があるけど。
「明日神殿でヴィラに聞きます」
本人に聞くべきだ。
神官長さんに言うことは一つだけ。
「わざわざ装束を持ってきたというのは、私にこれを着て欲しいんですよね?」
「使者様に、カエデ様に相応しいかと」
「できません」
「…何故とお訊きしても?」
そんな残念そうな顔されても。
「着付けがわからないのと、なにより着る資格がないです」
信仰心強い、しかも神官長さんに言いたくないけど。嘘は言えない。神官長さんの綺麗な紫の目を見て話す。
「私は神様あまり信じてません」




