44.女子会
目が覚めたらもうお昼だった。私は、お部屋で軽食後は、のんびりソファーに座っていた。だって流石に昨日の今日で外出できないよね。
昨日の夜を思い出す。
ラウさんの魔法も不思議だったなぁ。きっと顔色悪いから眠らされたんだろうけど、自分の意思に関係なくされると気分はよくない。
「うん、耳触りまくろう!まだモフってない!」
「カエデ様」
マリーさん達が花や可愛いテーブルなどを運んでいる。
「模様替えですか?」
「いいえ。よろしければ昨日できなかったお茶会をこれから外で、こちらの庭になってしまいますが。いかがですか?」
「わ~是非! 昨日できなくて、残念に思ってたので嬉しいです」
忙しいだろうに、本当に優しいんだよなぁ。
最近私の部屋近くの通路で警備している騎士さん達も声をかけてくれたり、夜会での力で古傷が治ったとわざわざお礼を言いに来てくれる騎士さんもいる。
私じゃなくてヴィラの力だ。
しかも使者だと主張する為に使ったのだ。後から考えると自分は結構勝手な人間なのかもしれない。
忙しそうなマリーさん達を見て手伝いたいと思ったけど邪魔になりそうなのでやめた。
「どうぞ」
ニコニコしてアリヴェルちゃんが呼びに来てくれる。
「可愛い~。そして美味しそう!」
白いカントリー風の花の形の木の円形のテーブルに同じ白の椅子の背の上部も花びらの形だ。
テーブルの真ん中には、パステルカラーの花が花瓶に生けられ、その周りにはクリームたっぷりのプチカップケーキ、可愛いケーキやクッキーが沢山お皿に並んでいる。
「喜んでもらえてよかったですわ」
「花は警備の騎士達からです」
皆で席に着く。
「「では女子会を始めましょう」」
私がまずした事は、防御も大事だか1番大事な防音だ。
話はかなり盛り上がった。
「マリー様は騎士団長様をお慕いしてるんですよね?」
ベルさんがニヤニヤしながら話す。
「ベルはラウニー様でしょ?」
言われたマリーさんは、ベルさんに反撃だ。
ってまさかのラウさん?!
「ちょ、ベルさんはチャラいのが好みですか?!」
つい聞いてしまう。
「ラウニー様は真面目な方ですわ!」
ベルさん顔赤いですよ。
本気の恋なんですね。
ラウさんが真面目な人かは怪しいけど、本気なら応援しますよ!
「アリヴェルちゃんは?」
この金髪美少女はかなりモテるだろう。
「興味ないです」
ニッコリ。
…これ以上話はありませんというオーラ全開だ。
おかしいなぁ。確か一昨日は乗り気だったのに。
「アリヴェルは、昨日お父様から婚約の話が上がってきて少し苛立っているのですわ」
クスッとマリーさんが困ったように笑う。
「えっ早くないですか?アリヴェルちゃんかなり若いよね?!」
「アリヴェルは16歳、もうすぐ17歳で成人ですので早いというほどではないですわ。特に貴族の中でも位が高いほど早く決まります」
マリーさんが説明してくれる。
日本でいえば高校生だ。私は、その頃何をしてた?
うん。部活三昧だった。
婚約なんて考えられない。
「ちなみに相手は…」
「言いたくありません」
バッサリ。
気になるなぁ。
「カエデ様はどうなんですか?やっぱりルーク様ですよね?」
アリヴェルちゃんの反撃だ。
「ルーク様、夜会の時黒い留め具を着けてらしたものね」
ベルさんがニヤニヤして言う。確か前にもそんな話が。
「その、黒い色をルークさんが着けるとどうなるんですか?」
あれ?
三人が凝視してくる。
「相手の髪や瞳の色を身につけているのは既婚者か恋人がいるという印ですわ」
マリーさんが教えてくれる。
「はぁ?!恋人 ?!」
「カエデ様の国では違うのですか?」
ベルさんが不思議そうに聞いてくる。
「私の国は大多数黒目黒髪です。髪を染めたり瞳の色をオシャレの為に変えたりはありますけど。恋人や結婚したりするとペアの指輪を着けたりはします」
「まぁ。てっきりお着替えの際何もおっしゃらなかったので」
えっ…。
「リボン!ルークさんの髪の色だった!」
ぎゃ~あんな大勢の前で最悪じゃない!頭を抱えだすわたしをスルーする皆。
「てっきりお互い一目惚れだったのかと」
「「ロマンですわ」」
うっとりな表情のマリーさんとベルさん。
「あやかりたいです」
遠い目のアリヴェルちゃん
皆、間違っている。
「で、どうなんですか?もう恋の告白などされてたり。首筋もルーク様ですよね?」
ベルさん目がキラキラです。
「うーん。本気だみたいな事言われましたけど…」
「「キャー!」」
マリーさんとベルさんは、どこか別の世界にいるようだ。
「胸いっぱいです」
アリヴェルちゃんは、なんでそんなにげんなりとした顔なの?
そして皆興奮し過ぎですよ。
「「「それでカエデ様は…」」」
「正直わかりません」
過保護でたまにブラックだけど、でも優しい。
あの夜サンタアクアマリンの瞳にやられましたよ。でも、私はこの世界の人間じゃない。
お母さんやルーク、叔母達、少ないけど、とても大切な友達は…。
この世界にはいない。
この世界にいるかぎり会えない。
「ゆっくり焦らないで流れに任せるのもいいかと思いますわ」
マリーさんが見透かしてるかのような言葉を言ってくれる。
「はい」
素直に返事が出た。
急に空気が動いたような感覚。客間のほうからシャル君が顔を出している。張っていた膜を解除すると。
「楽しんでいる所にすみません」
シャル君がよってきて、申し訳なさそうに言う。
「神官長様と宰相様がお呼びです」
楽しい時間はあっという間だ。




