42.腕輪の使い方~カエデ&ラウ
「痛いの好きなの?ま、まあ人それぞれあるよね。色々」
後退りしてるし。
なんて事言うんだ!
「違います!ちょっと待っていて下さい!」
私はラウさんに渡す為に部屋に小走りで戻る。
「手を出して下さい」
不思議そうな顔をしながらも出してくれた手に部屋から持ってきた辛子おじさんのカフスを落とす。私は周りをキョロキョロし、丁度いい凹凸の少ない石の壁を見つけた。
「こっちに来てもらえます?」
手でおいでをしてラウさんを呼ぶ。念のためもう一度外から見えない、音も遮断、と呟いておく。私は腕輪に触れ、金色の石を壁に向け呟く。
「再生」
スッと石から細い光が出て壁に広がりスポットライトのようになる。
「泣き叫んでいるかと思いきや余裕だな」
そこには辛子おじさんが、音声付きで映っていた。隣にいるラウさんを見てみる。
ラウさんは、固まっていた。
やっぱりこうゆうのは、ないのかな。まあ石に普通こんな事できるわけないだろう。
この腕輪が特別だからだろうな。ヴィラはこんな事に使って怒るかな?そこうしている内に映像は終わり光も消えた。ちらっと隣を見上げる。目が合った。ニヤリとラウさんが笑う。
「カエデ、アンタやっぱり面白い」
呼び捨てだし、遂にアンタ呼ばわりだ。
「でも、多分これは証拠にならないでしょう?」
何故?と目が聞いてくる。
私は続ける。
「ラウさんの反応をみるに、この国には似たような物すらない。私はこの国、この世界の人間じゃないから、勝手に辛子おじさんを陥れる為に映像を作ったと言われる可能性がある」
そして1番のネックは。
「しかも私には地位が高い人の後ろ楯がないけど相手は相当位が高い。などを後から考えて、ただの叩かれ損でした」
ホント痛い思いしただけだったな。
ラウさんが何故か頭をポンポンしてくる。
「頭もそこまで馬鹿じゃないんだよなぁ」
「私の評価って…」
「馬鹿な部分はとりあえず1個だけな」
ラウさんがしゃがみ私と目線を合わせてきた。
「自分の体を傷つけるのはなしな」
なんとなく素直にはい。と言いたくない。
また顔に出ていたのだろう。ラウさんが私の眉間を人差し指でつつきながらじっと見てくる。
「カエデちゃん、お腹いっぱいになった?」
「?はい」
唐突に聞かれた。
返事をした瞬間、頭の後ろに手が置かれ引き寄せられてラウさんの胸に顔がぶつかる。
「とりあえず、お休み」
体の中に暖かい何かが流れ私は意識を手放した。




