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異世界の色  作者: 波間柏ひかた


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38/94

38.油断

「詳しい話は後程、宰相からあると思いますので」


そこで神官長様が、悪い笑みを浮かべた。


「舞に関して私にも良い案がありますので、カエデ様とじっくりお話をする時間をとれるとよいのですが」


あの神様のような微笑みは嘘だったんですか?

今、どす黒いオーラ出てますよ?


「ひとまず、この話は後に」

「…はい」


抵抗するのも面倒になってきた。

なんだろう弱い自分。


私はまた杯もどきの前に立つ。石の台に乗り指先だけ水に触れる。今日は寝ないで直ぐ胚もどきに力を注いでいく。取り込んで開放し願う。

遠くまで届け。ヴィラにも。


「今日は力を上手く加減できたようですね。お顔の色もよさそうで安心しました。ではまた明後日お願い致します」

「はい」


帰りの際に、トイレに行きたくて借りる事にした。石造りのせいか冷えるんだよ。気遣ってくれたのか神殿の女性の人がトイレに案内してくれた。


「こちらです」

「ありがとうございます」


そして済ましてドアを開けたら。案内してくれた女性が立っていた。

あれ?

待っていてくれたのかな。至近距離で待たれていたのが恥ずかしい。でもお礼を言おう。


「ありがとうございま…」

「申し訳ございませんっ」


最後に見たのはその女の人のとても悲しそうな顔だった。









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