27.護衛騎士達
ー ルークー
力を使ったカエデは直後ゆっくり体が傾いていく。頭が床に着く前になんとか受け止めた。
「大丈夫か?外かなり騒いでるよ~」
外にいたラウが入ってきた。急に発せられた膨大な力に流石に驚いたのだろう。
「我々はなんともないがカエデ様は気を失っている。脈が弱い。びしょ濡れだ。シャル、風で乾かせ。神官長殿、治癒をお願いできますか?神力のほうが効果があるかもしれません。普通の治癒は効きが遅いようなので」
神官長に試してもらおう。
神官長が胸元に手を置き力を注ぎ始めると淡い緑の光が出る。しばらくして手が離れた。
「そうですね。少しは回復されたと思いますが、精神的疲労も多いのかもしれません。効果がうすいのはやはり我々と違う世界の方だからか。今は安静にするのが一番かと」
「ありがとうございます」
ならば早く休ませなければ。
「ラウ、シャル、すぐ出発だ」
「了解~」
「はっ」
俺は腕の中の真っ青なカエデの顔を見下ろす。抱き抱えるカエデはいつも顔色が悪い。
ーシャルー
戦も終わり少し落ち着いた今、成人した僕は結婚の話もちらほらでてきていて面倒だった。いずれ爵位を継がないとならない。第2騎士団に入りたかったが、父が根回しして危険が比較的少ない第3騎士団に所属になった。
跡取りだからだ。僕は諦めた。
今は夜会の警護で参加するよりは数倍マシだ。
少し離れた壁際の椅子に、噂に聞いた使者様が座っている。黒目がかる瞳に黒髪の小さくて可愛い女の子だ。側にはルーク副隊長が護衛について安心だなと思っていた。
でも、しばらくして何やら不穏な空気が端から感じる。ルーク副隊長がいない。代わりに公爵が何か言っているらしいけど、音が邪魔で聞こえない。
何故か突然、使者様がこちらへ向かってきた。
「貸して」
僕の剣は脇にはめ込みの小さいナイフが付いている。使者様に貸してくれと言われるが、武器はまずい。でも女性を押さえつけるのに抵抗があった僕はまんまと奪われた。
その時、武器を渡した僕の人生終わったと思ったね。
でも、てっきり公爵に切りかかるのかと思ったら、自分の髪。女性は髪が腰まであるのが普通だし、とても髪を大切にしているのに、まさか髪を切るとはね。
治癒の力も凄かった。
降ってきた花びらは片方聴こえなかった耳が聞こえるようになった。これで随分戦いやすくなる。でも僕が印象的だったのは歌っているとき。微笑みながら歌っていたけど、どこか寂しそうだった。
僕は決めた。権力は今使おう。
使者様の側に行きたい。
ー ラウ ー
俺はあと2日で任務を終え、休暇をとる予定だったが突然呼び戻された。
夜中によ?
寝不足で城に着いてみれば、夜会で使者様とやらが何かやらかしたらしい。俺関係ない~。
と思ってたらおおありだった。
昼過ぎにルークと色んな意味で有名なお家がらのシャルぼーやと一緒に貴賓室へつれてかれ、護衛対象とご対面。突然現れた噂の使者様とやらは、ずいぶん無警戒だった。
よく今まで生きてこれたな。
ざっと直前にルークから聞いたが、別の世界から連れてこられたらしい。確かに黒目がかる茶色い瞳と黒髪は初めて見るけど、顔はまぁ普通の女の子って感じかなぁ。
シャルぼーやを苛めつつ自己紹介をすれば、使者様の視線が俺の耳に集中している。
ハイハイ、嫌だよねー。
大体の奴は獣族を嫌悪するんだよね。もう慣れたけど。耳をしまう事はできるが任務中には命取りだ。俺は先に謝る…?
「サイコーです! もふりたいです!」
驚いたね。
言っている意味はいまいちわからないけど、好奇心いっぱいの目を見ればわかる。
うん、使者様は普通じゃなくてちょっと可愛い女の子だ。




