15. 騎士ルーク ~ 疑い~
ー ルーク視点 ー
「ヴィラスール神の使者?」
夜中の為足早に移動しながら、部下達から話をきく。
「聞いたことがない」
「約200年ぶりらしいです」
「今朝、神殿から人がきて神託があったと騒いでましたよ」
別の部下が話す。あぁこいつは、確か熱心な信仰者だったか。
「こんな時間に、しかも封鎖されている塔に」
休日出勤なんてするのではなかった。もう手遅れだ。そうこうしているうちに東の外れの搭に着く。
さてどうするか。
実はまだ騎士見習いの頃、俺は1度興味本意で入った事がある。
大昔は、祈りの場として使用されていたらしいが、何ヵ所か部屋のようになっているだけ。
幽閉場所のように狭い。また上までは、足場が悪く細い螺旋階段しかない。放置された点灯の魔法石も古くて使えないだろう。
部下たちに指示を出す。
「中の点灯の魔法石は多分使えない。俺が光の球体を作り上まで飛ばす。大きな声じゃ言えないが、中にいるのが本当に我々の敵ではないかも分からない。しかも扉前の踊場には数人しか立てん」
使者を疑う俺に不満の顔を向ける部下がいたが、視線で黙らす。何の確証もない話など俺は信じない。信じるのは、自分がこの目でみてからだ。
まず疑え。それが生き延びる為に必要だ。
「ザルグ、前に行き扉を壊せ。ヒューイ、援護しろ」
「「はっ」」
「俺は魔力の方に集中する。あれだけの力。
敵ならかなり苦戦するだろう」
いや、まともに戦ったら確実に負ける。
「残りは俺の後ろに続け。一気に上まで上がるぞ。行くぞ!」
「「はっ!」」
俺達は扉を壊し飛ばした光が照らすなか階段をかけ上がって行った。