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13. 騎士ルーク
ー 騎士ルーク視点 ー
「ふぅ」
ついため息がでた。
上を見上げれば、月が見えていたはずが急に雨が降りはじめている。
久しぶりの雨だ。
腕の中の使者様、カエデをマントで包む。
ジリッ。
動かした右腕に火傷のような痛みが走る。カエデの防御膜はかなり強かった。待てばよかったのかもしれないが、気がつけば破っていた。
腕の中の少女を見ると先程まで開いていた黒のような茶色の吸い込まれそうな瞳は今は閉じており、すうすうと微かな寝息をたてている。急激な力の放出が1番の原因だろうが、それだけではないのだろう。涙の跡を起こさぬように指先で慎重に拭う。
「ん」
くすぐったかったのか、首を振る。
短くなってしまった黒髪の間から白い首すじが、見えた。
「はぁ」
また、ため息が出た。