第九話 兄弟
一族会議・第一段階、簡単に言うと顔見せ大会ははひとまず終了。
概ね成功したと言って良いだろう。
それでは隠された本命。
作戦は、第二段階へ移行する。
* * *
信長と兄弟たちとの忌憚なきお喋り大会、はっじまりーっ!
なんか信長が睨みつけてくるが、無視だ無視。
とりあえず兄弟仲が良好であれば、その他の有象無象は何とかなる。
そんな発想からきている。
俺と信成も、義兄弟枠で参加だ。
「いやあ。僕はまだ、義兄弟になってないんだけどね。」
細かいことは気にするな!
どうせすぐなる。
信成の呟きを打棄り、せっかくなので司会進行を任せることにした。
参加者は信長の兄弟の内、信広殿、信勝、信興、秀孝。
そして元服前だが喜蔵と三十郎、そして九郎もご招待。
これより下は流石に低年齢過ぎるからね。
喜蔵は織田寛近の養子となり、川村城主を務めている。
まだ九歳だが。
因みに、信広殿と同腹なので気分的に少し特別。
信勝は末森城主、言わずと知れた信長の同腹。
秀孝と三十郎も末森で暮らしている。
九郎は織田達広の跡を継ぎ、七歳にして野府城主だ。
まだ信興と共に那古屋に住んでる。
信興と言えば、平手の爺様の嫡男を、信長付から信興付に変えて置いた。
何か信長と相性良くなかったみたいだから。
小さなことからコツコツと、な!
* * *
信秀叔父上の戦略を踏襲することに決めた信長は、その旨を兄弟たちに伝える。
それを聞いた兄弟たちは目を見張った。
中でも、信勝の驚きは特に大きかったようだ。
「あのっ!……、信広兄者は、どうなるので?」
三河織田家の創出がポシャッたことは皆知っている。
すると、信広殿が宙に浮く訳だが。
「ああ、気にするな。ワシは信長殿の家臣で良い。」
何なら信清の家臣でも良いぞ、なんて薄く笑いながら何でもない事のように言う信広殿。
ないわー、それはないわー。
「信広兄者には、相応の席についてもらう。否とは言わせぬ。」
信長がすかさず対応。
具体的には、一門衆筆頭の地位に座ってもらう。
これも事前に話し合って決めた。
「ははは。まあ、そういうことらしいの。」
「そう、ですか。」
秀孝と喜蔵が、信勝を心配そうに見てる。
ま、信勝の様子を見る限り大丈夫だとは思うが、一応ね。
「信勝。どうだ?」
「は、どうとは。」
「認めるか、否か。」
「……。」
結局のところ、信長に対抗出来るのは兄弟一族見渡しても、俺か信勝しかいないのだ。
あ、自意識過剰とかじゃないよ?
血統とか領地とか、家臣団のことを考えてね。
そして、俺は信長に不満などなく、むしろ傍で支えてやる気満々だ。
あとは実弟の信勝が、不満なく兄に心服するかどうか、だ。
今は心服出来ないと言われても、延々説得続ける積りではある。
でもやっぱ、自分で納得して結論を出して欲しいもんね。
* * *
結論。
上手く行きました。
信勝は頭が良い。
そして素直だ。
話せば分ってくれると信じていたよ!
会議は大成功の内に幕を閉じた。
信成もまた、再会を約して帰って行った。
* * *
閑話。
ふと思い出したんだけどね?
秀孝の死因は確か、一人馬の遠乗り中に誤射を受けた、とかだったような。
一応、今のうちに釘を刺しておこうかと。
なあ秀孝。
一人で馬乗りなんてしてると危ないから、止めといた方が良いぞ。
ん?
俺は信長はどうなんだって?
おお、なんだ秀孝。
俺や信長みたいになりたいのかっ!
嬉しいこと言ってくれるじゃないの……。
いやいや、そんな顔を青くして謝る必要はないぞっ
まあ謝罪は受け取るけども。
あ、うん。またな。
気を付けて帰れよ?
何かな、ちょっと釈然としない……。
油断すると説明書きになってしまうので、注意して削ってます。
年内に終わらせるため、昨日今日と例外的に昼投稿を実施してみました。