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疾駆伝 肆 追想~飛翔~

信長視点による戦国疾駆本編の回想他(四)です。

ペラリ、ペラリ……。


「……おっと、もうこんな時分か。」


小姓がそっと行灯あんどんに灯りを足して行く。

それに気付き、信長は随分と刻が経過したことに気付いた。


「今夜はこれ位にしておくか。」


信長も若くはない。

いざとなればまだ徹夜も出来るが、流石に分別のある良い大人。

ある程度で区切りを付け、身体を休めることを選択した。


敷かれた布団に身体を横たえ、目を瞑るも浮かんでくるのは昔の事。

思考を過去に馳せたまま、信長はまどろんでいくのであった。



………。


……。


…。



* * *



武田への抑えに、遠山に嫁いだ叔母上の養子として信清の二男が入った。

俺の子でも良かったが、アイツの子なら俺の子も同然。

問題は何もない。


しかし叔母上が、まさか信清の側室に納まろうと動くとは。

なんとか押し留めたが、流石に予想外だった。

確かにアイツは女受けが良い。

だからと言って叔母・甥はな、流石にな……。



そうれはそうと、美濃は既に織田家の本拠地の一つ。

余所者などに荒らされてなるものか。


そう力んだら、横から「元は織田家も余所者だけどな」などと世迷言が聞こえてきた。


俺は美濃国主・斎藤道三の婿であり、正統な継承者だ。

何も問題はない。


不埒な事を言う愚か者には、制裁を下してやったわ。

ふん、脇差で済ましてやったのだから文句を言うな。



さて、武田を抑えつつ朝倉が滅んだ頃。

次の世代を担う若者たちが、初陣を飾った。


信忠は勿論、信益や信澄らが信清の後見を受けて近江に出陣した。

そうそう、信孝も一緒だったな。

奴とはちゃんと話をして、信広兄者の養子に信孝をやったのだ。


信清は次世代の奴らについても、よく見て考えていた。



嫡男・信忠は俺に似て、勇敢で優秀ながら気も優しく細やかだ。

女にも人気があるし、流石は我が嫡男よ。


二男・具豊は北畠の名跡を継がせたが、戦時では勇敢だが少々優柔不断だな。

それに、通常は暢気と言っても良い。

嫡男でなくて良かったと密かに思ったりしたのは、アイツ以外には内緒だ。


そして三男・信孝だが、当初は信忠の家老をと思っていた。

しかしアイツは一家を興させ、一軍を任せるべきと言う。

だから宙に浮いていた信広兄者の養子とし、大事な一門を継がせてみたのだ。


結果は言うまでもない。

やはりアイツの見る目に間違いはないな。

信孝もその抜擢に奮い、努力を重ねている。

良い影響は連鎖するものらしい。



* * *



足利義昭めが不慮の死を遂げたが、神輿はまだ必要。

どうするつもりかと思っていたら、何と阿波から連なる者を連れてきた。

それが足利義助なのだが、良く知ってたな。


アイツの知識には驚かされるばかりだ。


足利義助を将軍位に就けると、ひとまず畿内は落ち着いた。


加賀方面で上杉謙信の動きが気になったが、ひとまずは無視だ無視。

専守防衛に努めればどうにかなる筈、とのことだったしな。


西では信勝や広良が頑張っていた。

穏健な弟組は、順調に播磨に但馬などを平定している。


もっとも、弟たちは穏健だがその配下は猛将揃い。

柴田に佐久間、和田に山内。

緩急織り交ぜての侵攻に、国人共は対処出来ず仕舞いだったな。


そんな頃、遂に武田が動いた。



とは言え、俺がやったことは兵糧を手配し、援軍を送ったくらいだ。

あとは現地で信清が差配し、武田を食い止めることが出来た。


ここで物を言ったのが、またも鉄砲部隊。

信清自ら指揮し、武田の出足を挫いたらしい。


武田は乱世でも屈指の強さと見られていた。

それを撃破したのだがら、信清の武名は天井知らずだ。

皆も驚嘆し、喜んでいた。


俺も嬉しさのあまり、小姓どもと一緒に屋敷で槍を付いて足を踏み鳴らし、奴の偉業を讃えた。

そして煩いと濃に怒られた。



* * *



情に厚く、身内に甘いと評判の信清。

それは事実だが、情に流されないのもまた事実。


吉良義昭は、一族の娘を養女として信清の側室に差し出していた。

それは良く聞く話で、実際問題もない。


しかしその一族が武田に加担し、謀反に及んだのだから問題だ。


だが、アイツは迷わず処断。

普段と異なる苛烈な対応に皆は戦慄し、身内に甘いと侮りの空気は消え去った。


まあ、俺は知ってたけどな。

アイツが甘いのは事実だが、それも状況次第。

当たり前のハズだが、アイツの普段の人柄のせいか意外性を持たれたようだ。



比叡山が燃えたのもそのちょっと後だったな。

バカをやる方が悪い。

アイツを怒らせる奴が悪い、ただそれだけだ。



* * *



それからは順調だった。


東は信玄亡き武田を降し、北条を取込み、上杉を睨む。

西は山陽・山陰を進み、尼子残党を取り込み宇喜多を滅ぼし、毛利と接敵するに至る。


さらに信忠と信益を中心とした四国征討軍を組織し、侵攻させた。

妹婿の佐治信方ら、水軍の活躍もあって順調だ。


この頃、紀伊平定も成し遂げた。

他にも能登・飛騨に従属的同盟者を得て、侵攻して確保。


石山本願寺に対しても、枝葉が敵対したので滅ぼしたが本体は従順そのもの。

素直に従うなら、それなりに遇してやるのが俺たち流だ。



そして遂に、上杉謙信が倒れたと言う報せを受け取る。

九州と東北に、毛利なども残っているとは言えもう難敵は居ない。


おっと、慢心するなとアイツに怒られてしまうな。

注意は疎かにするべきでない。


しかし……。


上杉さえ滅ぼしてしまえば天下は目前だ。

もう、東北は信清に任せてしまおう!



信頼も過度に傾斜すれば、周囲からは危険視されます。

しかしながら、年季が入り過ぎてて誰も気付きませんでした。

また、信清と信長では重視する織田一族が少し異なります。

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