第三話 義兄弟
俺と信長の関係で対外的に重要なのは、従兄弟で義兄弟という肩書だ。
だが、俺と信長にとって一番でかいのは親友と言うことで間違いない。
さて。
繰り返すが、信長は天才だ。
しかも、革新的な。
ただの天才なら、周囲にチヤホヤされることもあるだろう。
しかし革新的な天才の場合、周囲の理解が得られず、孤立してしまう。
信長の奇行は、そういったとこから発生したものなんだろう。
と言うわけで、理解者を投入してみました。
するとどうでしょう。
すっかり大人しい態度を取るようになったではありませんか!
これには周囲もビックリ仰天。
お陰で一族や家臣たちとの距離も、少しずつ縮まっているようだ。
一部の人間からは、俺も信長側の奇行種と認識されているらしい。
心外だ!
* * *
「で、調子はどうよ。」
「ぼちぼちだな。姉上は元気か?」
「おう。来年にはついに俺も父親となるらしいぞ。」
「そうか……。そういえば、信広兄者がえらく心配していたぞ。」
「あー。今は三河だったっけ。」
信長が言う信広兄者とは、信長の兄である織田信広のことだ。
央とは同腹であるらしく、祝言の時はわざわざ犬山城まで来てくれた。
よって、俺にとって信広殿は義兄である訳だ。
だからちょっとだけ特別扱い。
信広殿と信長は、兄弟とは言え歳も離れており、居城も違うしで接点がなかった。
しかしそこに、俺と言う接点が出来たことで徐々に仲良くなってきている。
うーむ。
やはり接点のない、未知と言うのがいかんのだね。
実際会って、話してみないと何も判らないし進展もないということだ。
かく言う俺も、当初は信長には逆らわずに大人しく従い、生き延びるなどと考えていた。
しかし今ではご覧の通り、ガチでタメ口に喋る親しき関係となっている。
時には武力行使も辞さない。
最初の頃は、余りの暴君ぶりに本気で閉口したこともあったものだが。
ま、これを言うと信長が拗ねるので心に仕舞っておこう。
俺は大人だからな!
* * *
さて、信長を知ってからの俺は、色んな人と積極的に話すようなった。
なんせ犬山は那古屋から遠い。
途中には岩倉もあるし、清州や楽田、小幡に守山もある。
同じ尾張国内の同族にも関わらず、接点が薄くなりがちだ。
俺の親父が亡くなって、繋がりが薄くなることを恐れたのか、信秀叔父上は娘を嫁がせた。
当時既に、俺と信長はとても仲良くなっていのたが、それだけで安心出来ないのがこの戦国時代と言うもの。
留め具は多ければ多いほど良い、と言うことだった。
その余波で信長と信広殿の兄弟仲が良く成るのだから、判らないものである。
それはそうと、留め具はどうかと思うと言ったら、継接ぎでも良いぞと返された。
大差ないやねん……。
* * *
「時に信清よ。岩倉の方はどうだ?」
信長は、義兄となる俺を兄とは呼ばない。
その以前からずっと親友となっていたのだから、当然ではあるな。
むしろ呼ばれていたら、とても微妙な気分になっていただろう。
だから、俺としては問題はないのだが。
央と一緒にいる時に呼び捨てにされると、央が軽くキレる。
目上に対して何たる物言いか、と。
流石の信長も姉には弱いのか、平身低頭で謝っていた。
あの時は大いに笑ったものだ。
後でボッコにされたが。
ともあれ岩倉か。
岩倉には尾張上四郡の守護代、織田伊勢守がいる。
当代は織田信安と言う。
俺の親父は、信安の後見役を務めていた。
信安の妻が親父の妹だったらしいからな。
その親父が亡くなり、俺は家督を継いだが当然後見役は継いでない。
結果、岩倉と疎遠になりかけた。
が、せっかく縁戚だというその伝手を、みすみす手放すのは勿体ない。
勿体ないオバケが出るぞ!
そこで、まずは個人的に会って話すことから始めた。
次に猿楽が趣味と言うので、信長を誘って一緒に楽しんだりもした。
その上で、俺の弟である源三郎を、岩倉の重臣・織田源左衛門の養子にと伺いを立てていたのだ。
「結果は上々。喜んでお迎えする、だとよ。」
「そうか。随分あっさりだったな。」
全くだ。
まあ岩倉としても、犬山を繋ぎ止める旨味は十分承知しているということだろ。
犬山は美濃との境界、重要な立地。
それに、清州側に対する政治的なカードも備えている。
「ああ、あとな。楽田の寛貞とも交誼を結んでおいたぞ。」
「なに!?いつの間に……。いや、そうか。」
重要な立地繋がりで、楽田城に居を構える織田寛貞とも結んだ。
ここは先代から何かと協力関係にあったので、ついでとばかり声をかけたら快諾された。
むしろ、娘を側室にどうかと迫られて困ったくらいだ。
今のところ、ハーレムを築く予定はないのだ。
央も子を授かった訳だし。
それに、その子は十歳くらいだった。
俺は、断じて、ロリコンでは、ない!
勢いだけで書いているようなものです。
なので、二十話を超える位で完結するのではないかと予想しています。