第二十七話 梟雄
時は戦国、世は乱世。
そんな時代に現れる数多の英雄たち。
彼らの分水嶺は、どこに在るのだろうか。
* * *
松永も道三殿も、間の良い事に京にいたらしい。
早速彼らを呼び集め、協議することに。
いや、ちょっと待て。
道三殿と通じるモノがあるかも知れない。
確かに、そう言った。
だから相談してみろと。
それで得るモノがあるだろうとも。
だけどね?
誰も、梟雄会談を行えとは言ってないんだが……。
* * *
「お初にお目にかかる。斎藤道三と申す。」
「ふむ、是は御丁寧に。松永久秀に御座います。」
某茶室にて。
戦国日本が誇る、二大梟雄が揃い踏み!
「松永。お主は義昭公に憎まれておる。無論知っておるな?」
「勿論存じております。亡き義輝公の仇と。」
「確かその頃、松永殿は領国に居たと聞いておるが。」
「倅が都におりましてな。親として、責任を感じております。」
「三好三人衆の暴走であった、とも聞いたが。」
「止められなかったのは事実。我らも同罪にて。」
「ほう。では三好殿は、実際どう思っているのかな?」
「義継様は、公方様に逆らう気持ちはありません。亡き長慶様も同様にて。」
信長も交えての、英雄会談此処に在り!
いや、どうしてこうなった?
茶室は落ち着いた空気が満ちている。
でも、俺は何か落ち着かないよっ
「信清殿。先ほどから黙って、らしくないぞ?」
やめてっ
道三殿、お気遣い嬉しいけどこっちに振らないで!
「そうだな信清。言いだしっぺはお前だ。ちゃんと参加せよ。」
確かに提案したけど、曲解した信長のせいだから!
「ふむ。そう言えばまともにお話するのは初めてでしたな。」
そうですね松永殿。
初対面じゃないけど、俺は主に周辺対応が多いですから。
「信長様の親友だとか。ふむ、折角ですのでお話しましょう。」
OHANASI?
いや、お話ですか。
「ふむ。貴殿は上位者。敬語は不要ですぞ?」
えっ
「そうだぞ信清。お前は、俺の親友なのだからな!」
ちょ、
「それに、ワシの命の恩人でもある。気楽に対応して貰えると助かるの。」
ヒィッ
英雄たちに囲まれて、なんか知らんが持ち上げられる。
こんなに心地よく、居心地の悪いことが他にあろうか。
いやない。
* * *
要は、松永殿が将軍から睨まれない様にしたい。
どうしようって話。
いっそ隠居でもして、道三殿みたいな立場になるとか。
「流石に厳しかろう。それに、大和を治める手腕は手放せん。」
そっかー。
悪くないと思うんだけどな、相談役。
「ふむ。道三殿は、信長様の相談役なのでしたな。」
そうそう。
だから松永殿も、三好家の政治顧問とかどうだろう。
「それも悪くはないですな。
しかし大和は長慶様より賜った大事な土地。おいそれと手放す訳には参りませぬ。」
「おや、随分と真摯な物言いですな。」
まあ松永殿は、ずっと三好家当主に忠実ですもんね。
辣腕振るう上に真っ直ぐ過ぎて、周囲から嫉妬されたりや勘繰りされちゃうんだよね。
……ん?
な、何ぞ?
「いや、よく知ってるなと。」
「まるで見てきたかのように言うの。」
「……。」
流石に知識とは言えない。
と言うか、松永殿の全てを見通す目がマジで怖い。
こっち見んな!
* * *
伊賀衆を手懐けてるってことで納得して貰った。
それはいいんだが、何度も深く頷いてたのが気になる。
こっちが少し引く程に。
何が琴線に触れたんだろうか。
とりあえず、興福寺を優遇する方向で。
松永殿に譲歩を強いた、って言ってみたらどうかな。
「まあ、そんなとこだろうな。」
将軍様のご機嫌取りも大変だ。
蜜月が何時まで続くか判らんが、早々に切る訳にもいかんのがもどかしい。
この後、せっかくだから色々と話を聞かせて貰った。
爛々と輝く瞳が何かを捕えて離さなかったのは、気のせいだと思いたい。
以前オススメ頂いた、某笑顔動画の梟雄伝を少しずつ視聴しています。
いやあ、日々のささくれ立った心が癒されるようです。