第十九話 目先
伊勢国に限らず、侵攻には名目があった方がいいよね。
「まあ、そうですね。」
せっかく伊賀国に伝手があるんだから、そこを利用するといいかも?
「君が抱えてる、忍び衆のことかい?」
そうそう。
例え小さい勢力でも、呼び込みがあれば良いよねぇ。
クックック。
「また何か悪いこと考えてるみたいだね。」
失敬な!
* * *
「ところで、近江の方は浅井との同盟話が浮上しているようで。」
ああ、北近江の浅井か。
浅井と言えば、浅井長政。
裏切って朝倉に付いて、散々信長を苦しめた戦巧者。
色々説はあるけども、浅井長政が優秀だったのは多分間違いない。
その家臣団もね。
ただ、朝倉の紐付きだったのが運の尽きってか。
於市ちゃんを嫁がせて、って話だが。
うーん……。
「あれ。君は反対なのかい?」
別に反対と言う訳じゃない。
と言うか、良いか悪いか判断し兼ねる。
「悪い話ではないと思いますが。」
信成も宗政も賛成か。
まあ、悪くはないと思うんだよ。
結果が、あんな風にならないよう注意すれば良いことだし。
信長は身内に甘いからな。
甘やかした結果、噛み付かれると非常に傷つく恐れがある。
そうなると、多分史実みたいになるんじゃないかなー。
おお、怖い怖い。
一族として、於市ちゃんにもちゃんと幸せになって貰いたい。
でも他国に嫁ぐとなると、対応も相応に難しくなる。
ぬぅ。
しゃーない。
別の良案がある訳でも無し。
まーた暗躍しかないかねぇ。
* * *
伊勢の話はひとまず打っ棄って、信長に会いに行く。
浅井との同盟話は、織田家にとっても一大事。
勝手に決められちゃ敵わんからな。
「おう信清。よく来たな。」
偉い上機嫌だな。
なんかった?
「うむ。先の将軍の弟が、この俺を頼って来おったわ!」
あー、足利義昭か。
居たな、そんな面倒な奴。
「奴を推戴すれば、京への道も開くと言うもの。」
正当なる足利の血統をって掲げれば、確かに。
面倒事も増えそうだが。
「それでもだ。利点の方が多い。」
ふーむ。
「む、信清。お前は反対か?」
ん?
いや、反対じゃないよ。
ただ、三好や六角との戦は免れないと思ってね。
「うむ。……だが、その大義名分は大いにある。価値は高いぞ?」
そーだねぇ。
確かにメリットは大きい。
但し、あくまでも目先のみ。
長い目で見ると、デメリットが浮かびまくる。
何かと困ったちゃんだからなー。
「まあ、実際に動座するのは暫し後になる。その前に浅井との盟約だ。」
於市ちゃんを嫁がせるとか?
「ああ。気乗りはしないが、有用な策であるのは間違いない。」
そうだな。
気乗りしないことも含めて同感だ。
「相変わらず過保護なことだな。」
お前に言われたくはない。
信長って結構なブラコン・シスコンだよな。
別にいいんだけど。
* * *
「そう言えば。」
ん?
「伊勢はどうなっている。」
あー。
伊勢なぁ。
「まさか、何も考えてないとは言うまいな?」
それこそまさかだよ。
いや、せっかくだからちょっと集まりたいな。
「ほう。」
前にもやったけど、今後の展開を占う、一族会議をね!
入浴中、ハエトリグモが乱入。愛い奴め。
そこで色々考えましたが、やはり五十話以内での完結を目指します。




