第十六話 桶狭間
さて、織田信長好きなら誰もが知ってる桶狭間。
そんな桶狭間の戦いがどう推移したかとか、皆大体は知ってるよね?
場所がどうとか、諸説はあるけれど。
細けぇこたぁ、良いんだよっ!
* * *
駿河を領する今川義元が、大軍を率いて尾張に侵攻。
対して織田家では有効な手立てが見出せず、お通夜状態。
しかしそんな中、信長は颯爽と飛び出し、電撃的に桶狭間で今川義元を討ち取った!
残った今川軍は、駿河へ逃げ帰った!
* * *
此処までは良いね?
概ね史実通りだと思うよ。
まあ、兵力に多少の余裕があったとか。
国境付近の領主たちの寝返りは、実は偽装だったとか。
思わぬとこから横槍を受けたとか。
そんなことは些細なことでしょ。
そんなことより。
信長が英雄になった頃、俺が何をしていたかと言うと。
三河にいました。
何をしているかって?
暗躍とか工作とか、そんなんだよ!
お供に織田信正と織田宗政。
信正は俺の弟で、宗政は遠縁の一族で、若手のホープだ。
あと清正と、下山組の忍者(仮)が護衛に数名。
下山組ってのは、徐々に増員されて結成された忍者(仮)の部隊。
他にも福地組とかあるけど、下山組が初期メンバーだし信頼度も高いのは当然だよね。
* * *
はぁ~っ
三河で俺は、溜息ばかりついていた。
清州では、信長の偉大な行為を称えてお祭り騒ぎだとか。
俺だってそれはとても嬉しい。
彼の英雄が、真に英雄だと示されたのだから。
出来れば間近で見ていたかったとか、一緒に突撃したかったとか。
なんだったら別働隊を指揮したかったとか。
思う所は色々ある。
でも仕方ない。
自分で決めたことだもん。
だから、それはもう良いよ。
それに、三河で工作するのも嫌じゃない。
むしろ楽しい。
すっかり暗躍が板についてきちゃったね!
ため息をついてる理由はそんなことじゃない。
桶狭間の戦いで、一族にも大きな被害が及んじゃったことがね。
戦死したのは、大叔父の秀敏様。
そして、一族の飯尾定宗と織田永政。
特に、秀敏様は信長の後見役を務めていた。
そんな人が、自分から死地に赴いたんだ。
後の事はお主に任せた!なんて言っちゃってさ。
勿論止めたよ?
でも止め切れなかった。
正論だったし、策としても有用だったから。
飯尾定宗は秀敏様に殉じ、永政は桶狭間で散った。
一族以外にも、少なくない人間が散って行った。
そりゃね。
戦場に出て、誰も死なない何て有り得ないでしょうよ。
知ってるとも。
うん……。
* * *
よし。
切り替えよう!
何時までもウジウジしてても、どーしよーもない。
前を向こうっ
それが残された、託された者がとるべき姿のはず。
取り合えず、三河には騒乱を起こしておきましょうねー。
予約投稿セット一日目。
没タイトル案「織田一族の、織田一族による、織田一族のための天下統一記」
没理由:長過ぎる