第十五話 追憶
ただいま!
美濃国に潜入するとか、守護代様のすることじゃないよね。
勝手にやったことだけど!
収穫は見ての通り。
道三殿は忍者(仮)の皆さんに護衛して貰いつつ、犬山城内で保護してる。
とりあえず暫くの間、療養に務めてもらおう。
あ、そうだ。
落ち着いたら、斯波義銀の教育に一役担って貰おう。
* * *
ところで。
前に、信長が上洛した時。
俺は守護代と言う職に就かされ、働かされた。
面倒だったけど、案外良い経験だったね。
この国の行政機構がどういったものか、良く分かったから。
うん。
特に問題なかった。
細部はともかく、全体としては思ったよりちゃんとしてたよ。
俺の知識が特に役立つことはなかった。
ま、あの新しい物好きで合理的な信長が制定してるんだ。
大体問題ないのも頷ける。
そんなことよりっ
俺の知識と、現実が整合しないことが幾つかある。
その中でも群を抜いて大きいのが、三河松平との関係。
正確に言うと、後の徳川家康と織田信長の幼少時エピソードね。
信長が遊びに連れ出して、縁を育んだとかそんなん。
良くも悪くも、ガキ大将な信長のエピソードだったはずなのだが。
誰に聞いても、なーんもない。
ただ二人だけの胸に秘められた大切な思い出……。
なんてことはないと思う。
むしろ、俺こそ大体信長と一緒に居たのだから、何かあれば覚えている筈。
そんな俺に思い出が無いとか。
……ん?
ひょっとして。
これは、やっちゃったか。
俺がずっと信長と一緒に居たものだから、家康とのエピソードが削られた、とか?
尾張での思い出は、只々人質として意味のない日々だった、とか?
あらぁー。
* * *
うん。
まあ、やっちゃったものは仕方が無い。
それに、俺が知る歴史が正しくない可能性もある。
勝てば官軍って言うアレ。
だから、鵜呑みするには危険ということだ!
よし、脳内理論完成。
で、三河との関係なのだが。
これがもう、悪いのなんの!
まー、考えてみれば当然か。
三河織田家創出の野望を胸に、侵攻を繰り返してきたんだもん。
ポシャッたとは言え、その事実は消えない。
一部の分家以外とは、もう絶縁状態と言っても良い。
その分家は姻戚だからね。
いやはや。
つまり、このままだと徳川家康との同盟は結べないかも知れない。
まだ徳川になって無いけど。
因みに。
彼の徳川家康も歴史の英傑だが、俺は正直あんまり好きじゃない。
革新的な信長とは、全く反対の様に見えたから。
いや、実際はそんなことないんだろうさ。
それに、偉い人なのは間違いない。
判ってはいる。
でも。
固定化された好みってのは、どうしようもないわー。
だから。
そこは、逆転の発想で行こうじゃないか!
* * *
っていうか。
そんなことより桶狭間だよ!
もうすぐだよっ
今川が出兵の準備をしているとの風聞、是有り。
戦後の事なんか考えてる暇はない。
とか言いつつ。
松平の分家をメインに探ってる辺り、俺も業が深いね!
旅に出ます。探さないで下さい。
前守護代・織田大和守の名前を「達勝」から「広信」へ修正しました。
この修正に伴う内容の変更はありません。