第十三話 守護代
信長は守護代に就任したが、肝心の守護が追放された。
いや、一応まだ俺のとこに居るんだけど。
どうしましょうね、コレ。
ふむ。
まだ若いし、せっかくだから俺流の教育を施してみようか。
* * *
「上洛だ?」
「ああ、そうだ。」
信長に呼び出されたので、何事かと思って清州に来たら。
何と!
上洛するとなどと言い出したではないかっ
今っ?
馬鹿なの?阿呆なの?
死ぬの!?
「うるせぇっ!」
ぶべらっ
* * *
「悪い、取り乱した。」
「取り乱し過ぎだ、阿呆。」
すまんすまん。
で、なんだって?
ああ、上洛か。
尾張守護のためかい。
「ふん。判っておるではないか。」
そう言いつつ、理解されて嬉しそうなマイルド信長。
天才性に基づく英雄性は残しつつ、苛烈な危険味が軽減され実に良い塩梅。
それを為したのは、何を隠そうこの俺!
犬山城主っ 織田 信清様だぁっ
ああ、話の腰を折って悪かったな。
だから脇差は止めよう。な!
助けて信勝!
あ、こら逃げんなっ
* * *
「斯波義銀を追放した手当か。」
「うむ。美濃の状況もキナ臭いからな。余り国を空けたくないのだが。」
斎藤道三はまだ生きてる。
いやね?
信長が尾張を統一したのは、斎藤道三死後のことだったような気がするんだよ。
記憶違いなのか、もしくはこれも俺の影響なのか。
「そんで、俺は留守役か?」
「うむ、頼もうと思っていたのだが。良いか?」
「ああ、良いよ。」
「そうか。本当は、お前と一緒に行きたかったのだが……。」
ちょっと聞きました!?
信長がデレたぞぉーーっ
「道中、お前の意見を聞きたかっただけだ。変な勘違いするなよっ?」
衝撃!信長ツンデレ説。
キモい!
「ともかく!お前には留守居を務めて貰う。判るな?」
「ああ。尾張の留守役ってことね。」
「そうだ。そこで信清、お前を守護代に任ずる。」
ん?
「尾張守護代だ。任せたぞ?」
えっ
「清州城代は信広兄者に任せる。」
「おう。任せよ。」
「信勝は末森、信光叔父上は那古屋を頼む。」
「承知!」
「信次叔父上は守山、信成は小幡だ。他は信清に従え!」
「「御意っ!」」
え、ちょっま
「秀孝と信時は俺に随行せよ。」
矢継ぎ早に指示を出す信長。
あ、信時ってのは元服した喜蔵の名前だ。
三十郎も信包となり、九郎も信治となった。
皆が無事に成長してくれて俺も嬉しいよ。
じゃなくて!
「おい、守護代って」
「岩倉には俺から手紙を出す。恙なく受け取れ。」
「聞けよ!」
* * *
信長は決定を変えることなく上洛目指して出立し、俺は守護代となった。
マイルド信長なんていなかったんや。
やっぱまだ横暴さが残ってるよーな、気もするなぁ。
それとも、身内ならではの甘えか?
変なことにならなきゃ良いが……。
ここまで高評価を頂くと、オリジナル展開でガッカリされるのが怖いですね。
では「完全」オリジナル展開になるのかと言うと、断言は出来ませんが。