初めての友達
小屋についた。思った通り人影はない。臣はゆっくりと少女をベットに寝かせた。
臣 さて、ここまでこれたがどうするか・・・
ろうそくに火をつけながら、臣は困惑していた。このままだと本当にこの子は死んでしまう。しかし治療などは出来ない。しばらく考えていると、少女が目をさました。
少女 うぅ・・・あれ?私は確か・・・
臣 お!目をさましたか!
少女 おにいちゃん・・・誰?フランをいじめるの?
臣 な・・・
森の中でよほど怖い思いをしていたのだろう。少女は明らかに怯えていた。その姿を見て臣は優しく接する。
臣 俺は臣。君はフランって言うのかい?ここは君がいた森から離れた場所で安全な場所だよ!
フラン 本当?おにいちゃんがフランを助けてくれたの?
臣 そうだよ。
弱々しく、微かに聴こえるかというような声でフランは臣に話をした。
フラン おにいちゃんは人間だよね?吸血鬼のフランを何で助けてくれるの?
臣 人間が吸血鬼を助けちゃいけないかい?
フラン ・・・
フランという吸血鬼は涙を流し始めた。そして泣きながら今までのことを話始めた。
フラン フランはね、お家の中に居たの。でも気がついたらこの小屋の中にいてね?外に出たら日差しが強くて大変だった。
フラン でも一人で外に出たのは初めてだったの。だから痛いのを我慢して町の方に行ったんだ・・・
臣 (気がついたらここに?外が初めて?もしかしてこの子も幻想入りしたのか?)
フラン 町にはお店がいっぱいあってね?人間も沢山居たの!キラキラしてて面白いものがいっぱいあったんだよ?
フラン フランと同じくらいの子どもも居たの。でも、みんなに言われたの・・・吸血鬼だ!怖いって。
臣 ・・・
フラン そしたらみんなに苛められた。鉈や鍬を持ってフランを苛めてきたの。それでお空を飛んで森に逃げたんだ・・・
臣 ・・・・・・
フラン そしたら今度は妖怪がいっぱいいてまた苛められたの・・・
臣 ・・・・・・・・・
フラン そしたら・・・
臣 もういい!
フラン ひっ!
臣はつい大きな声を出していた。人間だから、吸血鬼だから、妖怪だから。もう沢山だった。フランの話を止めさせて臣はフランに言った。
臣 フラン?君は何か欲しいものはあるかい?
フラン ・・・欲しいもの?
臣 何でもいってごらん?今何が欲しい?
フラン ・・・
怯えながら、震えながら、フランは言った。
フラン お友達が欲しい・・・
臣はすかさず答えた。
臣 よし!それなら今から俺はフランの友達だ♪
フラン え?
臣 嫌かい?
フラン 嫌じゃ・・・ない・・・
フランは泣くのをやめなかった。それどころかよりいっそう泣いてしまった。しかし臣が手を頭の上に置くと、震えが止まっていた。
臣 (もう怯えていないな・・・良かった・・・でも、このままじゃフランは死んでしまう)
頭の上に置いた手をフランは力一杯握っていた。しかし、その力がどんどん弱くなっていくのが臣には解った。
フラン 臣・・お兄・ちゃん・・・フランと友達に・・・なってくれて・・あり・・がと・・・
臣 フラン!このままじゃ本当に・・・そうだ!
臣は自分の指を切った。そしてフランに差し出す。
臣 フラン!俺の血を飲むんだ!・・・フラン!
フランにはすでに意識はなかった。
臣 ・・・許せよ!
臣は自分の血を口に含みそのままフランに飲ませた。効果があるかは解らない、でも臣にはこれしか出来なかった。すると、フランがピクリと動いた。
フラン う・・・うあ・・・
血を飲ませると顔にはあった傷が少し消えていった。顔色も良くなっていく。
臣 よし!良いぞ!
臣はさらに自分の血を飲ませた。フランは目を開けないが、回復しているのがよくわかる。臣は傷口をフランの口に当てた。
臣 さあ。俺の血を吸うんだ!
フラン ・・・
臣の指にフランは噛みつく。自力で臣から血を吸っている。
臣 いっつ・・・
臣の指に激痛が走る。それに、自分の血を吸われているのは流石にいい気分ではない。
臣 思った以上に苦しいんだな・・・
目が回り体がだるい。頭も痛い。それでも臣は血を飲ませた。
臣 ・・・・・・
ドサッ
臣は倒れてしまった。幼いとは言え吸血鬼。臣は少し後悔した。遠くの方で声が聞こえる。
フラン あ!臣兄ちゃん!臣兄ちゃん!?どうしよう、どうしよう・・・
意識が薄れる。しかしフランは助かったようだ。
臣 フラン・・・元気になったようだね・・・良かった。
フラン 臣兄ちゃん!
臣 俺は大丈夫・・・少し眠れば良くなるよ・・・それより、夜のうちに早くお家に帰るんだ!・・・良いね?
フラン フランのために・・・こんなに血を・・・どうして?
臣 友達を助けるのは、当たり前の事だろ?
臣は意識を失った。異変解決の手伝いもお世話になった霊夢への恩返しも何もしていないのが悔しいと薄れていく意識のなか思っていた。
臣 ん・・・
体が動かない。正確には動かせなかった。多くの血を吸われた臣は、今まで感じたことのないほどの気だるさに襲われていた。
臣 温かいな・・・それに気持ちがいい・・・
目を開けたわけでは無いので解らないが、どこかのベットで眠っていたようだった。
臣 助かったのか?・・・
状況が解らない。起き上がる為にとりあえず寝返りをする。それにしてもこのベットはふわふわしていて気持ちがいい。
臣 頭が痛い・・・何処なんだ・・・?
ゆっくりと目を開ける。そこには少女が一人。
フラン ふふ♪私のお胸、そんなに気に入ってくれたの?
そこには何故か裸のフランが少し恥ずかしそうに、臣を抱きしめていた。
臣 !!!
全身の怠さが一気に消えて完全に目が覚めた。ここはフランを助けたあの小屋ではなく、倒れた臣をフランがどこかに運び、今まで添い寝していたのだ。
フラン 良かった♪やっと目を覚ましてくれた!臣兄ちゃん、このまま死んじゃうかと思ったから・・・
臣 フラン・・・
フラン 臣兄ちゃんの体がどんどん冷たくなっていっちゃうから、フランがぎゅってしてたんだよ♪
臣 フランが俺を助けてくれたんだな。ありがとう。
話を聞くとここはフランの家、紅魔館のフランの部屋。臣が倒れた後、回復したフランが臣をここに運び、ずっと付き添っていてくれたのだった。
フラン それにしても良かった♪早く元気になってね♪
少し強く臣を抱きしめる。
臣 苦しいよフラン。それに何で裸なんだ?
フラン こっちの方があったかいでしょ?
臣 そうだけど・・・もう大丈夫だから!服を着ろ!
フラン 臣兄ちゃんはまだ弱ってるんだから無理しちゃダメ!フランが暖めててあげるからじっとしてなきゃ!
純粋な心を持っているフランに臣は少し罪悪感を感じた。
臣 (でもこの姿を誰かに見られたら・・・)
フラン 今、美鈴がご飯を持ってきてくれるからね♪美鈴のご飯は美味しいんだよ?あ!来たみたい!
臣 え!?
美鈴 失礼しますフラン様。ご飯を・・・
フラン ありがとう美鈴そこに置いてね。あ!ご飯を食べるときはお洋服を着ないとお行儀が悪いよね!美鈴、フランと臣兄ちゃんの服を拾ってくれる?
美鈴 ・・・
臣 ・・・
フラン どうしたの???二人とも固まって。
この状況をちゃんと説明するには、三十分ほど時間がかかった。