四季 / 春が好きな桜
季節は、いつまでもいつまでも廻っていく。
ふわりと、風が肌をなでる――。
【四季】
しんしんと降る雪が、
風に舞って桜に変わる。
はらはらと落ちる花弁は、
土に触れた瞬間に緑の芽となり伸びていく。
ぐーんと、上へ上へ横へ横へ大きくなって、
深い青の葉をつける。
じりじりと陽に焼けて葉は色づき、
色とりどりに輝く。
ころん、と雨の雫はその上を転がり落ちて、
白い結晶となる。
そうして四季は廻っていく。
いつまでも。
いつまでも。
愛する人のそばで、廻っていく。
~~~
【春の好きな桜】
この子のために。彼女のために。
俺は、何ができるだろう……?
試行錯誤の毎日だ。
気分転換。
窓を開けて、外に出る。
澄んだ空気。ふわりと風が肌をなでる。
近くの枝に、ほんの小さく芽吹いた新しい生命。
若緑の向こうには、もう桜が咲いている。
「千尋、花見は好きか?」
「はなみ?」
「桜の下でお弁当を食べるんだ」
「さくら! おべんとう、リョウちゃんと食べる! ちぃ、食べたい!」
「よし。じゃあ、早速出かける準備をするぞ」
「うん。……どこいくの?」
上目遣いで見上げてくる千尋に、俺は目を細めて膝を折った。
目線の高さを同じにする。
「――俺が、ママを好きになった場所。とっても大切な場所だ」
そっとその髪に指をさした。
彼女のお気に入りのサクランボで、可愛く結ってあげようと思った。
「ママが大好きだった桜を見に行こう、千尋」
文字数の関係で、また2つ同時に投稿しました。
『肌をなでる風』、完結です。(表向きですが)
『四季』は、彼女(千春)視点の『季節観』です。
『春の好きな桜』は、哀しみはあるけれど、それでもやさしい気持ちで春を迎えてほしくて書きました。
……私、本当に作中で誰かが死ぬのは嫌いなんですよ。(現実もそうですが)
だから『季節観』を語る「俺」が頭の中に出てきた時に、
「絶対にどうにかして救わないと!」と思ったんですよね。
死は、予期せず突然にあるもので。
どうにか、それを乗り越えてほしかったんです。
笑顔になってほしかった。
でも、やはり「俺」1人では難しくて……。
『裏話』はある意味、単独でも成立するお話です。
(今度はちゃんと小説です 笑)
『肌をなでる風』のおまけ、という感じで書きましたが、
どうだろう……(汗)
「俺」に対する解釈が変わってしまうんじゃないかしら……。
まあ、どんな形でも「やさしく書こう」という思いは変わってないので、
興味のある方はぜひ読んでください。
最後になりましたが、
読んでくださった方、本当にありがとうございました!