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ぱっと目を開けると、梁が見えた。
とりあえずお決まりの台詞を言っておく。
「・・・知らない天井だ。」
・・・
私はだあれ?ここはどこ?
・・・
?
ぐーぱーぐーぱー
手をひらいて閉じてひらいて閉じる。
ぺちぺちと肌を叩く。あらすべすべ。
・・・
は?
え?
きょろきょろと部屋を見渡す。
襖!
畳!
か・け・じ・く!
わお、イッツエキサイティングッ!!!
はあ、ふう。
呼吸を整える。まったく意味がわからない。ついさっきまでお蕎麦をすすっていたというのに、どこだねここは。
・・・はっ!?俺のお蕎麦どうなった?の、のびちゃう!
きょろきょろ
きょろきょろ
・・・え、ほんとにどこ?
なにこれ。
え?
え?
激しく混乱してうろちょろと部屋を旋回していると、襖が無造作に開いた。
びゃっと飛びずさる。
巨人がそこにいた。
俺の二倍はあろうかという巨体・巨躯。
腕は太く、足も太い。
そして、特徴的なちょんまげ。
え?
ちょ、ちょんまげっ!?
再び混乱していると、これみよがしに溜息をつかれた。
目も、なんだか嫌な感じだ。
なんだろう・・・あ、あれだ。女の子が芋虫見た時のあれ。
・・・は?
俺のハートはガラス製なのだ。見知らぬ巨人に蔑まれるのは御免である。
「貞世様。」
渇いた声で巨人が呼びかける。
貞世、ふむ。ここに二人しか居ない以上、貞世は俺の名だろうか。
・・・いや違う。俺は銀二だ。
こ、ここはなるべく紳士的に対応しなくては。そう、事情を話せばなにか進展するかも。
よ、よし。
「いかがなさいましたか?」
一オクターブ上げて返事をしたが、再びため息をつかれた。
好意に悪意で返すとは。越谷一の清純派と呼ばれたこの俺でもいらっとする。
なんというか、全体的に小馬鹿にされているのがわかる。
思い返せば襖も急に開けてきやがった。
むらむらとこみ上げる謎の怒りと戦っていると、巨人が告げた。
「御屋形様がお呼びです。お早く。」
それだけ言ってすたすた去っていく巨人。
な、なんやねん。
御屋形様って誰やねん。
が、一拍遅れて気づく。
声が高い。
・・・おや?
俺の変声期はとうの昔に終わっている。自慢じゃないが中高と合唱はテノールだったのだ。
あれ?と疑問に思い、顔に手をやる。
すべすべである。
パニックに陥って身体のあちこちをまさぐる。
ひげはなく、腋毛もない。
肉体労働で変形していた指もきれいだし、おまけになんか、そう、地面が近い。
動揺したまま股間をまさぐる。
あ、よかった。未使用とはいえ愛着があるからな。
ふう。
・・・
俺は、考えるのをやめた。
ここどこだよとか、なんで幼くなってるねんとか、疑問は渦巻くが、わからないものはわからない。
オーバーヒートしてしまったので、いったん全部後回しである。
よし、では・・・どうしよう。




