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常連さんからのご依頼 前編

うちの探偵事務所では、夜になるとハプニングバーになる。


営業時間は18:00〜2:00まで。今日は週末で、お客さんが遊びに来ている。


「おー!ひめかさん。久しぶり〜♪」


「しょーちゃん久しぶり!今日はアンドレイ来てる??」


「アンドレイさんなら今、いちごさんとプレフィルターさんの''潮吹き対決''を眺めている所だよ。ほら」


佐藤はそう言って奥の方へと目をやる。そこには女性2人が長椅子に腰深く掛けており、男性2人が女性2人に電マを当てている所だった。そしてそれを正面から見つめている男性客、アンドレイさんがマジマジと2人の''あそこ''を眺めている。


「ちょっとアンドレイ!あんた、私に構わずして何やってるのよ!!」


佐藤にひめかと呼ばれた女性は、後ろからアンドレイさんの頭を引っぱたいた。


「いってぇ〜!誰だよ、俺はそんな趣味じゃ…って…ひめかじゃないか!!」


アンドレイはひめかを見るなり、潮吹き対決はそっちのけで彼女の方へ向き直る。


ちなみに、ハプニングバーは会員制で身分証を提示した後に''ニックネーム''を自分で考える。そして店の中では、そのニックネームで呼び合う事がルールだ。


「うわ〜!!!めっちゃ飛んだ〜〜!!!!!新記録だよ、プレフィルターさん!!」


いつの間にかアンドレイさんは潮吹き対決の観戦の方へ戻っており、プレフィルターさんという女性の潮吹きを見て興奮していた。


「えっと…1m83cm、凄いよ!こんなに飛ばしちゃったら、もはや潮吹きじゃなくて立ち幅跳びだよ〜!」


そんな楽しそうな光景を見て、俺も混ざりたいなと思う。


「おっさん、俺も混ざりに行っていい?」


「まぁ、お客さんがいいよって言うならいいよ」


佐藤はそう言って、ニッコリと笑う。


俺はそのまま、アンドレイさん達がやっている潮吹き対決に混ざりに行こうと駆け寄る。


「ねーねー!俺もいーれーて!」


俺がアンドレイさん達に話しかけると、全員が俺の方を向いた。


「いいよ!君の名前は??」


快く承諾してくれたのは、先程も紹介したひめかさんだ。


「えっとね、俺最近ここの従業員になったんだよね〜!名前はね、四五四五珍三郎だよ!」


「へ〜、四五四五珍三郎さんね。いい名前だね!私はひめか、よろしくね。で、こっちのおっさんがアンドレイ。私の事を''推してくれる人''なの」


「へー、そうなんすね。え、ひめかちゃんさ、俺におしっこ飲ましてくんない?」


「コラ!珍三郎くん!」


振り向くと、佐藤がいつにもない表情で怒っている。


「ハプニングバーでは、そういう''フェチ''に関する要求は、女性に聞かれたら答えるんだよ。それはマナー違反だよ」


…めんどくせーおっさんだな。


「わかったよ、クソ」


「…!なんだよその態度は!!こっちは珍三郎くんの事を思って注意してるのに!!」


「うるせぇ!母親みてぇなこと言ってんじゃねぇ!!東京湾に沈めるぞ!!」


「へ〜珍三郎くん、おしっこ飲むの好きなんだぁ」


俺と佐藤が言い合いをしていると、ひめかが話を割って入ってくる。


「アンドレイのおしっこは飲める??」


「いやいや…男のおしっこは嫌いなんすよ、汚いな」


「ふーん、そっか。いいよ、なら私のおしっこ飲ましてあげる」


「え?!?!いいんすか!!やったぜ。まじでひめかちゃん聖女すぎる!!!よ!おしっこの女神様!!!」


「いやいや(笑)それ褒め言葉になってないから。それと、飲んでもいいけど''条件''があるの」


「…?条件ですか??」


なんだか、すごく嫌な予感がする…


「ここってさ、ハプニングバー兼探偵事務所なんでしょ?珍三郎くんさ、私の依頼受けてくんない??」


「…え?」


うわ〜、めんどくせー女。何がおしっこの女神様だよ。ただの悪魔じゃねぇか。


「お??ひめかちゃんうちに依頼してくれるの?よ!!依頼一丁入りました〜!!」


俺が嫌がっているのを横目に、佐藤はテンションをあげてひめかの依頼を受け入れる。


「ラーメン屋じゃねぇんだからよ…ふざけんなよおっさん…」


「まぁまぁ良いじゃない。それで?ひめかさん、依頼っていうのは??」



ひめかの依頼は、なんだか不穏なものだった。


ひめかには妹がいるらしい。名前は澪というらしく、20歳の女子大学生だそうだ。大学へ進学するために上京した彼女は、一人暮らしをしているらしい。しかし、最近男の人に後を付けられていると悩んでいるらしい。


引っ越したいのだがお金が無く、さらに友人の家に泊まるあてもない。それで姉であるひめかに相談して、今に至るらしい。


「え、なに?俺東京行けってこと?やだよめんどくせぇ」


「何言ってんだよ珍三郎くん。東京なんてすぐ近くじゃないか。1時間くらいで着くよ」


文句を垂れる俺を佐藤が宥める。


「まぁ、、そうだけどさぁ…なんかめんどくせぇ〜っていうかなんというか…」


「お願い珍三郎くん。警察に相談しても、あまり相手して貰えないの…それに、事件を解決したら私のおしっこ飲ましてあげるからさ、ね?」


「…ッスーやります。この依頼、探偵である四五四五珍三郎にお任せください」


「やったぁ〜♪珍三郎くんまじ頼りになる〜!なんかかっこよく見えてきちゃった…♡」


「…はぁ?!俺は元からかっこいいし…!!てゆーか、まじでおしっこ飲ませろよ。約束破ったら豚箱にぶち込まれてでも、お前のことぶち犯すからな」


「きゃー♡こわーい♡」


「ほんと、調子がいいんだから…」


俺とひめかのやりとりを見ていた佐藤は、やれやれと言わんばかりに頭を抱えた。


















こうして俺は、ひめかの依頼を受ける事となった。そして俺は、東京に住んでいるという澪の元へ向かう。


「…あーもう!!!東京まじわかんねぇ!人多いし、電車はごちゃごちゃだし!!!」


俺は文句を言いながらも、なんとか澪の自宅がある最寄り駅までやってきた。まぁ、それまでに余計な過程を踏んだのだが。


「えーと、ここら辺のアパートなんだよなぁ…ん?ここじゃね?」


見ると、澪が住んでいるというアパートの名前が書いてあった。


確か、部屋が203号室だったから…


''ピンポーン''


俺は澪が住んでいるという203号室の部屋まで行き、チャイムを鳴らす。


''…はい?''


インターホン越しに女性の声が聞こえてきた。


「四五四五珍三郎だよ〜!多分、お姉さんから話聞いてると思うんだけど…」


俺がそう言うと、玄関のドアが開く。


「わざわざ来てくれてありがとうございます!姉から話を聞いておりますよ。優秀な探偵さんってね」


「いや〜!そんな事言われると照れるな〜!!」


えぇ〜?!?!めっっっちゃ可愛いやんけ!!!正直、ひめかより可愛い。てか、ひめかより澪ちゃんのおしっこを飲みたい。


「あ、照れてる場合じゃねぇか…そんで、一応お姉さんから話は聞いてるんだけど…」


「あぁ…はい、そうですね。とりあえず、中へ入ってください」


え、いいんすか入っちゃって?!25歳の元フリーターが20歳現役女子大生の部屋、入っちゃっていいんすか?!?!


あくまで平静を装いながら、俺は澪ちゃんの部屋に入る。


っかぁ〜!!!いい匂い!!!飯3杯は食えるぞこれ!!!


「…それで、ストーカーしているっていう男に心当たりはあるのかな?」


とりあえず俺は、澪ちゃんの部屋でくつろぎながら質問する。とても気が利く子で、俺なんかに茶を出してくれる。


「…はい、それなんですけど、、」


俺は澪ちゃんから具体的な話を聞いた。


ストーカーされたのは、大学2年生に上がってすぐのことらしい。バイトを終えて帰宅する彼女の後を、誰かが''付けている気がする''と思ったのがきっかけだ。最初は気のせいだと思ったが、毎日のように誰かが後ろから''付けている足音''が聞こえ、怖くなってきたという。


前述の通り、警察に行っても相手して貰えず、友人の家に泊まるあてもない。それで姉に相談したという訳だ。


「…多分、付けているのは元彼だと思うんです」


彼女はそう言って、表情を暗くした。


「どうしてそう思うの?」


「私、多分彼氏に恨まれていると思うんです。その、嫌な別れ方をして…」


「ふーん…それは聞いていい話?嫌だったら話さなくてもいいけど」


「いや、話します。少しでも情報が多い方が、役に立つと思うので…」



澪ちゃんの元彼は、バイト先の居酒屋で知り合ったらしい。彼の名前は村岡天五といい、澪ちゃんより1個年上の大学3年生らしい。付き合い始めた当初は、お互いにいい関係を保っていたらしいが、だんだん彼氏の嫌な部分を見てしまったそうだ。村岡は極度の人間不信で、常に彼女の位置情報を監視していたらしい。挙句の果てには、友達と遊んでいても電話がかかってきたりと、それはもう迷惑な事だったと。そして彼は、彼女の浮気を疑い''暴力''を振るうようになったらしい。それにうんざりした澪ちゃんは友達の協力の元、強引に別れたそうだ。


…なんかいかにもって話だなぁ。そんなん村岡で犯人決まりじゃん。


「わかった。とりあえずその村岡ってやつの居場所突き止めておくよ」


「ありがとうございます!助かります…!!」


彼女は顔をパァっと明るくした。ん〜この!可愛いやっちゃな!!


「そんじゃ、今日はこれにて失礼するよ。色々と話してくれてありがとね〜」


俺はそう言って、彼女の部屋を後にした。


















俺はとりあえず、澪ちゃんがアルバイトしていたという居酒屋へ向かう事にした。


今の時間はちょうど17:00だ。よし、居酒屋も開店する頃合いだろう。


俺は澪ちゃんのアルバイト先だった居酒屋へ入店した。


「いらっしゃいませ〜!!」


店内は普通だな。


「あ、こんちは〜。俺、飲みに来たんじゃないんすよね〜!」


「…??と、言いますと?」


「ここで働いていた澪ちゃんって分かります?その子から依頼されて、この居酒屋に来たんだけど」


俺がそう言うと、受付の人は''店長呼んできます''と一言、奥の方へと向かった。


「こちらへどうぞ」


受付の人が戻ってきて、俺を店内の奥へと案内する。


「失礼しまーす」


案内された部屋に入ると、そこには店長らしき人が座っていた。


「こんばんは。私、ここの店長をしております生田目です」


「どーも〜俺は四五四五珍三郎です。澪ちゃんがここで前働いてたって聞いて来ました。そんでさ、ここの従業員に村岡って奴いる?」


「村岡なら今、出勤していますけど…あの、何があったんですか??そちらの素性もわからないですし、澪さんに頼まれたって言われたってなんのことやら…」


あ、そっか。なんも説明してなかったわ。え?じゃあなんで俺の事、奥に案内したの?普通に不審者扱いってこと??


「すんません。俺、探偵なんすよね〜。そんで、澪ちゃんから依頼を受けて、その事で村岡に用があるって感じです」


「あ…!そう言うことでしたか。それならそうと早く言ってくだされば良かったのに…今すぐ、村岡をお呼び致しますね」















「…うーっす。村岡でーす」


「…うーっす。珍三郎でーす」


「は?(笑)珍三郎??ふざけてるんですか?変な名前ですね(笑)」


なんだこのクソガキ…あまり大人を舐めるんじゃないよ。君の息子をしゃぶり尽くしてやろうか。


「お前は後で殺す。とりあえず、話を聞きたいんだ。澪ちゃんのことでね」


「澪??あー、うちのバイトにいましたね」


なんか他人事みたいな感じで言ってんな。こいつチャラそうだし、過去の女は忘れたってか?


巫山戯やがってよ!こちとら小便飲んだ女の顔は1人も忘れてないんだぞ!!


''男ってモノは!!そういうモノだろう!!!!''


「随分と他人行儀なんだね。君と澪ちゃんは付き合ってたって聞いたけど?」


「付き合ってる??何言ってるんですか(笑)俺と澪は付き合った事なんて一度もありませんよ(笑)」


…??何言ってんだまじで?こいつ、村岡だよな…?


「え、ごめん。村岡って奴、他にいたりする??」


「いや、いないっすね。俺が入った頃に村岡って奴は1人もいなかったし、後にも入ってないっす。なんなら澪だって俺の後に入ってきたから。澪のアルバイト先の村岡つったら俺しかいないと思いますよ」


…おかしいな。え、まじでこれどゆこと?俺さ、おしっこ飲むのは得意なんだけど推理とかマジ無理なんだよね。苦手分野ってやつ?とにかく分からんから帰っていいかな?


「え、待って。村岡くんから見た澪ちゃんってどんな印象??」


「印象もなにも、俺あいつの事嫌いですもん。あいつ、めっちゃ俺に付き纏って来てて。ほんとにいい迷惑なんですよ。だから、辞めてもらって助かったというか…」






はい降り出しに戻りました!!1つも分かりません!!!!



えっと…整理すると、澪はストーカーに悩まされている→そのストーカーの犯人は元彼の村岡の可能性が高い→村岡に会いに行く→村岡は澪ちゃんと付き合った事がない所か、嫌いと一蹴した。


え、これどっちか嘘ついてるよな?え、怖くね。人間怖。



あぁ、考えていたら喉が渇いた。誰か生ぬるい尿で潤してくれ…


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