プロローグ:ラストページを、君と描くために
廣田良介、二十九歳。
五年前、夢にまで見た「小説家デビュー」を果たした――はずだった。
だが現実は甘くなかった。処女作は鳴かず飛ばず、次回作も話題にはならず、打ち切り。今では連載もなく、細々とした投稿でわずかな収入を得るのみ。
親からは「三十になったら定職に就け」と言われている。もう、その“三十”が目の前まで迫っていた。
唯一、希望があるとすれば、今まさに書いている小説――
『光の勇者伝説』。
これは、自分が初めて“心から書きたい”と思った物語。
それも、あと“ラスト1ページ”を書けば完成する。
だが、その“1ページ”が、どうしても書けなかった。
時計の針は23時を回っていた。
気晴らしに、近所のコンビニへ出る。いつもの夜道。乾いた風。
と、その途中――
「……良介?」
声をかけてきたのは、どこか懐かしい声の持ち主だった。
振り返ると、そこには絵里が立っていた。
「え……絵里?」
中学時代からの幼馴染。彼女は、地元の図書館で司書として働いていると聞いたきりだった。会うのは数年ぶりだ。
「久しぶりだね。元気してた?」
彼女は柔らかく笑った。その笑顔は、相変わらず眩しかった。
絵里は、小説家としての自分を陰ながら応援してくれていた数少ない存在だった。
売れなかった作品も、全部読んでくれていた。感想を言ってくれた。救われたことも、何度もあった。
二人でそのままコンビニへ。
本棚の一角に、大きなポップが目についた。
『〇〇新人賞 大賞受賞作!』
――ズキッと、胸が痛んだ。
どこかで見覚えのあるような、鮮やかな装丁。
同年代の作家が、華々しく受賞していく。
自分は、何も成せていない。何一つ。
「……俺は、いつになったら……」
ため息を漏らすと、隣の絵里が微笑んだ。
「でもさ、最後まで書けたら、きっと届くよ。その物語、私すごく好きだから」
何気ない言葉が、胸に沁みた。
帰宅し、PCの前に座る。
気づけば、キーボードに添えた手が震えていた。
――あと1ページ。
このラストを、自分は何のために書く?
迷いながらも、モニターを見つめる。
キーボードにそっと触れた――その瞬間。
「……っ」
頭がグラリと揺れた。
吐き気とも、目眩とも違う。世界が捻れるような感覚。
背後に……誰か、いる?
振り返ろうとしたが、視界がブラックアウトするように沈んでいった。
静寂。重たい空気。
意識が戻ったとき、自分が横たわっていたのは――
――草原だった。
「……は?」
目をこすって起き上がる。周囲には、見たこともない大地、青空、そして……モンスター?
状況がまるで理解できない。
そのとき。
「……あなた、大丈夫?」
ふいに、声が降ってきた。
目の前にいたのは――金髪に蒼い瞳を持つ、美しい少女。
見覚えがある……はずはない。だが、胸の奥がざわめいた。
なぜだろう。どこか、懐かしい気がした。
「……君は、誰なんだ?」
少女は、少しだけ悲しげな笑みを浮かべた。
──ここから、物語が始まる。
まだ、誰も知らないラストページを描くために。
※本作はAIの補助を用いて執筆しています。構成・物語・キャラクターは作者による創作であり、最終的な編集・表現も作者自身が行っています。