「選挙対策の金配り」で突如として出てきた「財源」について
◇「選挙対策」のためのバラマキ
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は石破総理が6月13日に「国民1人あたり現金2万円、お子さんには1人2万円を加算する。住民税非課税の低所得世帯の大人の方々には1人2万円を加算して給付する」表明したことについて語っていこうと思います。
質問者:
25年4月は「バラ撒きになる」ということで同程度の給付金が無くなったと思ったんですけど、一体どういう事なんでしょうか……。
筆者:
最近は国民民主党が「山尾公認問題」で失速気味であることや、
小泉氏が「米問題」で毎日のようにニュースに上がってきており
相対的に自民党の世論調査での支持率は上がっています。
しかし、山尾氏は国民民主党が公認しないことが決まったので「国民民主の支持率再上昇を見込んで」のことではないかと僕は思っています。
現状「選挙の眼玉」になるような自民党の政策は無いですからね。
衆参同日を思い切ってやるつもりもないみたいですし、現状の支持率よりも自民党側は自信が無いのではないかと思います。
また、減税については決してしたくないようなので「お得意のバラマキ」でお仲間にもお金を配るシステムにしたのでしょう。
◇「税収の上振れ」とは何か?
質問者:
私たちは複数の財政指標を見ているのでそんな風には思っていませんけど、「ギリシャより財政が悪い」と石破首相は発言されていましたよね?
一体どこから財源が出てきたんでしょうか……。
筆者:
それが本日の最大のテーマであり指摘したいところです。
現状複数の記事を見た際に分かることとしては「税収の上振れ分を活用」するとのことです。
しかし、昨年10月ごろに所得税の壁を103万円から178万円に引き上げを国民民主党が提案した際に「税収の上振れ」を挙げたのですが、「税収の上振れ分は財源には当たらない」と言って自民党は退けたのです。
質問者:
えっ……! かつて退けた案を使って「財源」としようとしているんですか?
筆者:
これについて報道しているメディアがほとんど無いので本当に酷いと思うんですけど、
「自分の都合」で「財源として扱ったり財源にしなかったり」しているという事です。
質問者:
また、マスコミですか……。本当に自民党と仲が良いんですね……。
でも思ったんですけど、そもそも「税収の上振れ」って言うのはどういう事なんですか?
筆者:
毎年、財務省が3月末までに予算を組む際に歳入と歳出を試算します。
歳出については各省庁から概算要求があってそれをベースにあらかじめ決まっているんですけど、歳入に関しては「完全に予定」と言うわけなんですね。
その「予定分を上回った分」というのが「税収の上振れ」と呼ばれる金額です。
ちなみに近年どれぐらいの金額かと言いますと、
2020年5.7兆円、2021年9.6兆円、2022年5.9兆円、2023年2.5兆円、2024年3.8兆円、この5年間の平均は5.5兆円となります。
どうしてここまで差が出ているのかと言いますと、20年と21年はコロナ渦でありながら企業業績回復が想定以上だったこと、22年からは物価高を背景とした消費税増収です。
まぁ、大抵はこの「上振れ」は国債の償還に充てられているみたいですけどね。
質問者:
所得税の壁を178万円まで引き上げるのに7兆円と言われていましたから、それには及びませんが同程度の規模はあったんですね……。
筆者:
今後も物価高は続くことが予想されていますから、物価高に応じた税収増なら基礎控除引き上げぐらい「当たり前」としてやっていく必要がありました。
実際に物価が安定的に上がっていた90年代前半には「所得税の壁」は財源の議論も特段に無く自然に引き上げられていたようですからね。
質問者:
それを粘りに粘ってほとんど潰してしまったという事ですか……。
筆者:
また「7兆円以上財源が必要」という試算も「減税による経済波及効果」が1ミリも考慮されていない金額ですからね。
これを「複雑で波及効果が無い程度の所得税の壁の引き上げ」に終わったのは本当に残念なことです。
ちなみに所得税の壁を178万円に引き上げた場合にどれだけ減税額が実現できたのかと言いますと、 年収200万円世帯であれば8.6万円、500万円世帯であれば13.2万円、1000万円世帯であれば22.8万円減税されるはずでした。
質問者:
今回の「給付案」を全て上回る金額なんですね……。
ただ、高年収世帯ほど減税額が多いという事が当時批判にありましたがそれについてどうなんでしょうか?
筆者:
これも「減税したくない人たち」の典型的なロジックの一つなんですけど、高年収の方ほど当然ながら使うお金の金額も多くなります。
そのために「金額」で見た場合においては減税額も大きくて当たり前です。
しかし、先ほどの178万円に引き上げた場合の所得に対する減税額の割合で申しますと年収200万円世帯は年収に対して4.3%税負担が軽くなり、
1000万円世帯は2.28%負担が軽くなるので、圧倒的に200万円世帯の方が減税割合としては高くなります。
また、よく「高年収に対して給付をしない、減税をしない」といった案が検討されていますけど、
高年収の方々もあらゆる控除の対象から外れていき、負担額として厳しくなっています。
そのために制度を簡素化して事務負担を減らす意味でも「一律の減税」と言う事が望ましいと僕は考えます。
質問者:
確かに日本だと相対的に年収1000万円世帯は高所得者のような気がしますけど、
世界で見たらそこまで多いわけでも無いようですからね……。
やっぱり所得税の壁を178万円まで上げた方が良かったという事ですか……。
筆者:
それも「恒久的に」でしたからね。給付金との差は歴然と言えます。
また2020年の特別定額給付金は12兆6千億給付に対して1458億円給付のための人件費などがかかりました。
減税であれば制度改定を周知すれば良いだけなのでここに「ロス」が生じるわけです。
「ロス」は給付回数が多ければ多いほど生まれますから「恒久減税」をする方が同じ金額を国民に還元するにしても、国民の手取りにプラスになることは間違いないです。
質問者:
ただ、マスコミはそこをまた報道してくれませんよね……。
筆者:
もしかすると「ロス」させている下請けの企業から広告収入を得ているのかもしれませんね(例えばパソナなど)。
そのために「忖度」するために報道しないのかもしれません。
いずれにせよ歪んだ構造がどこかにかあり、きちんと報道してくれていない現実があるのです。
◇ポピュリズム宣伝に使われている
質問者:
何と言うか、選挙前に国民からの支持率をまさしく「買う」ような形で給付金が決まるというのは実に悲しい気持ちになります。
国民が舐められているのではないかと思いまして……。
筆者:
「令和の米騒動」もそうなんですけど、自民党政権と言うのは「マッチポンプ」が大好きなんです。
米騒動につきましても長年の減反政策とその延長線上の政策が農家の高齢化や離農に繋がっていることが原因です。
まとめて適切な金額で買い取り、戸別補償をする。余った米を輸出することで国は損失を食い止める。こういった形にするべきなのです。
それを放置し続けて「小泉農水大臣のお陰で米が安く買える」などと言ったプラスの評価をするのは自民党をプラスに評価し過ぎです。
質問者:
確かに自民党の長年の失政で農家が先細っているのに多少米価格が下がった程度で賞賛されても何だかなと言う気もしますよね……。
筆者:
給付金に関しても先ほども触れました通り、恒久減税の方が国民に対してロスが少なく、還元率が高いわけです。
それをやらずして選挙前に「それ配ってやる。有り難く思え」みたいな感じで配られるのは本当に「権力を利用した票稼ぎ」にしか見えないわけです。
質問者:
本当ですよね。ただ、問題は野党の方々も頼りないことです。
立憲民主党も「厚生年金流用、将来年2,3兆円の隠れ増税」だと筆者さんが分析されている年金法案の片棒を担ぎましたし、維新の会は万博問題で支持率が下がりました……。
筆者:
何と言うかどの党も一長一短なんで投票する際には「何を自分の価値観で一番重視するか」それに尽きると思います。
本当は政策ごとに党に投票できて、分野ごとに力を持つ党が変わったりして事実上の国民が政策を決定するみたいな感じだったら良いのかもしれませんけどね。
現実はそんな事は無いんで、どの党を応援したいかと言う気持ちが大事だと思います。
僕はお勧めしませんけど、自民党以外政権をどうしても任せられないと思うなら自民党に入れればいいと思いますしね。
質問者:
なるべく聞き心地が良い言葉や政策に惑わされないことですね……。
筆者:
実際に何をやったのか、何をしようとしているのかそこをポイントとして投票先を選んで欲しいですね。
参議院選挙前にまた特集みたいに記事を作りますのでその際にはまたご覧下さいね。