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第五話 月の文明

 ミヅキの研究室の天井には小さな太陽系が浮いていた。これも立体CGだとわかっているが、太陽よりも巨大になった自分が宇宙を上から見下ろしているような気になる。


 部屋の真ん中に大きめのテーブルと四脚の椅子があった。左の壁には天井まで届くスチール棚があり、中に石の標本や実験道具のようなものが並んでいた。


「いらっしゃいませ」


 急に呼びかけられ、びっくりしたラジオが振り返るとジョーイが立っていた。

 ミヅキは我関せずといった様子で小さな太陽系の中からさらに小さな月に触れて大きくした。ラジオの顔くらいの大きさになった月が目の前に浮いている。


 ラジオが目の前の月を触ってみると、月はくるくると回り、普段は地球から見ることができない裏側が現れた。さらによく見ると、昨日、ラジオたちが降り立った月のステーションもある。


「ミヅキ、これってもしかしてリアルタイムの映像?」

「そう。人工衛星から受け取ったデータで作ってる今の月の様子だよ。私が研究してるのは月の内側」


 ミヅキが月を人差し指で真っ二つに切るようにさわると、月が半分にぱかっと割れた。


「月の中の映像はあくまで想像図なんだけど。私は月の地層から、月がどんな星なのか調べてるところなの」


 ミヅキは小学生のラジオにも分かるような言葉を選んで、月や自分の研究していることについて説明した。どこにもまだ発表されていない最新の知識が聞こえてくると、ラジオよりもロックの方が興奮しているようだった。


 一通りの説明を聞き終えると、ラジオは一番疑問に思っていることをたずねた。


「ミヅキがぼくたちに見せたいものって何だったの?」


 ミヅキはにやっと笑い、棚から小さな四角いケースを取り出すと、テーブルに置いた。鉄製のケースの上の部分はガラスになっていて中に何が入っているのか見える。


「あれ? これってぼくのペンダントと同じ石みたいだ」


 ケースの中には淡く銀色に光るあの石が入っていた。ラジオの石と全く同じ見た目をしている。石を出して、ミヅキは手のひらに乗せた。


「これは、今から約一万年前の月の地層から発見された石なの。ううん、石のように見える人工物。つまり人が作ったもの。私以外でこの石を持っている人は初めて見たわ」


 ミヅキがラジオに顔を近づけ、さっきより一段低い声でささやいた。


「この石は太古に月に文明があった、人が住んでいた証拠になると思ってる」

「博士、いい加減にそこまでにしてください」


 初めてジョーイが口をはさんだ。あきらめのような表情を浮かべている。


「別に学会に発表するわけじゃないし、あくまで仮説よ。でも科学はありえないと言われていたことを否定してここまで発展してきたものでしょ」

「ありえないのレベルが違います。一万年前の月の文明など非科学的です。まるでヴェルヌの小説です」


 ミヅキがジョーイをにらんだ。ジョーイはさすが秘書アンドロイドだけあって、どこ吹く風だった。この二人の間の沈黙を破ることはさすがに勇気のいることだったが、ラジオは思い切ってミヅキに話しかけた。

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