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メガネの裏側

作者: 稲神蘭

春の風が窓を揺らす教室で、凛は窓際の席に座っていた。クラスの中で目立つことが苦手な凛は、いつも隅の方で静かに過ごしていた。誰にも興味を持たれず、日々を淡々と送るだけだった。そんな中、彼女が気になっているのは、クラスの隣の席の男の子、田辺翔だった。


翔はどこか冷静で、誰にでも優しいけれど、少し浮世離れしているように見える。彼と目が合うと、凛はすぐに顔をそらしてしまう。普段、周囲の人たちから注目を浴びることは少ない凛にとって、翔のような少し遠く感じる存在は特別なものだった。


そして、ある日、席替えが行われた。凛の隣の席に、なんと翔が座ることになったのだ。


「や、やっと隣になったね…」と、震える声で凛は言った。翔は、少し笑いながら「うん、よろしくね」と返してくれた。普段はあまり話さなかった翔が自分に話しかけてくれるなんて、凛の心は高鳴った。


しかし、最初はぎこちないままだった。お互いにどう接していいのか分からず、しばらくはただ黙々と授業を受ける日々が続いた。だが、ある日の休み時間、凛が席を外して、教室の隅でこっそりとメガネを外して寝ているとき、翔がその姿を見かけた。


翔はそのとき、普段見ている凛と少し違った一面を目にする。メガネを外した凛は、まるで別人のように可愛らしく、落ち着いた雰囲気が漂っていた。普段の彼女ではなく、ただ一人の女の子として見えた。それを見て、翔は少し凛のことが気になり始めた。


その日から、凛が授業中や休み時間にちらりと翔を見ることが増え、翔もまた彼女に優しく接するようになった。だが、凛は次第に不安を感じるようになった。彼が自分に優しくしてくれるのは、メガネをかけているからだろうか?それとも、素顔を見て気になったからだろうか?


凛は心の中で自分に言い聞かせた。「変わらなきゃ…」そう決心し、少しずつ外見を変えることにした。


最初はコンタクトレンズをつけてみた。最初は目に違和感があったけれど、だんだんと慣れてきた。次に髪型を変えてみることにした。少しだけ前髪を整え、軽くセットしてみる。自分でも気づかなかった変化が、自信を与えてくれた。


ある日、ついに凛は意を決して、翔に話しかける場面が訪れる。「翔くん、今日も一緒に帰ろうか?」と、凛は勇気を出して言った。翔は驚いた顔をした後、にっこりと笑って答えた。


「うん、いいよ!」


その後、何度か一緒に帰るようになり、二人の距離は少しずつ縮まった。凛は少し照れながらも、翔が自分に気を使ってくれることに幸せを感じていた。


そして、ある日、とうとう翔から告白された。

「凛、ずっと気になってた。付き合ってほしい。」その言葉を聞いた瞬間、凛の心は跳ね上がった。驚きと嬉しさで胸がいっぱいになり、彼女は力強く頷いた。

「うん、私も…翔くんのことが好き。」


二人は付き合うことになり、日々が輝き始めた。しかし、時間が経つうちに、翔は少しだけ不安を感じるようになった。


「凛、あの…実は、ちょっと気になることがあるんだ。」翔は少し顔を曇らせながら言った。「君、すごく可愛いと思うんだけど、周りにバレるのがちょっと怖いんだ。だからメガネに戻してくれないか?」


その言葉に凛は驚いた。彼女は少し考えた後、静かに言った。「分かった…でも、翔くんが言うなら。」


凛は、またメガネをかけることに決めた。自分が変わることに不安はあったけれど、翔のために、彼の気持ちを大切にしたかったからだ。


そして、二人はお互いにとって一番大切な存在となり、静かに幸せを育んでいった。

メガネの裏側を読んで下さりありがとうございます。

メガネをしている女子がメガネを外すと本当は可愛いみたいな展開1度は考えたことあるはずです!


誤字脱字がある場合は教えてください

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