爽やか紅玉タルト
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
渡が苦手な物を食べた時のお話。
都会の街に重鎮する摩天楼の一角に、そこは御座います。五階の天井をぽっかりと開け放ったた吹き抜け天井に、中庭の様なテラス席がちょこり、ちょこりと。ホールの様な構造の内部は、人のお声がふわり、ふわりと反響して、何だか夢を見ている様なのです。
私はその隅のお席に座り、ぼんやりと上を見上げました。蔦の絡んだ人口天井からは、星屑の照明がぶら下がっておりました。前には一つの紅玉タルト。一つの完成された美がそこに。
苺の原型を残したままのコンポートが、扇形の天井をすっぽりと包み込み、光玉の如くキラキラと輝いております。アクセントとしてヘタ付苺が何とも愛らしい。
ではまずその冠から戴くと致しましょう。そのまま口の中に受け入れると、甘みの少ない爽やかな果実の味がふわりと口に広がります。鼻から抜ける仄かな酸味が春風のように去りゆくのです。
フォークを差し入れると、上に飾られた苺の瓦礫がぽろりと崩れ、断面のクリーム顔を出します。口に入れるとやはり爽やか。甘みの少ない、苺の酸味が口に秋風を齎します。
タルト生地は固め。荒く砕いたビスケット生地が噛む事にサクサクと音を奏でます。思っていた以上に、爽やか。とても、とても爽やか。
「気に入らなかったんだ?」
ご友人と喫茶店を共にしたことで御座います。ご友人は相変わらず悪戯っ子の様な微笑みを浮かべ、珈琲を嗜んでります。
対する私は少しの困惑。このお方とお話する際には、本心を深く理解なさっている様で、戸惑ってしまいます……。
「そのような事は……御座いませんが……」
「何年お友達やってんだ。顔みりゃ分かるよ。渡は顔に出る」
そう仰って、私が頂いているケーキを一瞥なさいます。
目の前には扇形のマロンタルト。柔らかなブラウンのクリームの真上にちょこんと栗が一欠片。先日戴いた物と似た構図。
口に入れるとクリームの甘さを基盤として、栗の柔らかさが舌を撫でます。ほろりと砕けるクッキー生地は蜜をたっぷりと含んで柔らかくくずれるのですが。甘いタルト。爽やかな酸味とは異なる、ビスケットのサクサクとは異なる一品。
「渡って甘党だよね。だから果実の酸味よりも、甘さに重きを置いてる。それに、この前食べてたタルト生地がフォークで砕けたのを見て、半泣きになってた」
「うぅ……貴方は時折、意地悪です……」
そう、返してしまったのは、恐らく本心だったから。私には大人びた酸味も、ざっくりしたビスケットも、何方も苦手だったから。
「ごめんごめん。でも勧めてくれたって事は、私に合いそうだったからかなと思って」
「……今度ご一緒致しますか?」
「一緒に来てくれんなら」
オマケ また来たよ!!
ザクッ……。
「……っ」
私の前にはぽろりと崩れたビスケット生地。どんなに頑張っても上手に口に運ぶことは出来ない、気難しい貴方。上手に口に運ぶことは難しく。
「やっぱりビスケットが崩れると泣きそうな顔するよね」
コアな読者様
今まで渡が苦手なものを写した話はないけれど、食べたらどうなるの?
作者
こうなります。えぇ、こうなります。
渡はゴリゴリの甘党です。
辛味、苦味、酸味の味があんまり得意じゃない。
だから食べている時の表現が、少しドライな気がします。瓦礫とかあんまり言わない気が。
あと表情に出やすい。
それは前々からお友達から話されている事。
でも合わないものは大抵友達が好き。
と思っているので、よく紹介してます。
苦手なだけであって嫌いじゃないし、たまにはこうして遊びましょう。というノリ。