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Wandernder Panzer ~戦場の少女たち~  作者: 出雲 笛筒
第1章 樹海にて
21/30

21 補給処にて

 ラバキア平野北部 ゼルコヴァ共和国第103補給処

  帝暦1936年5月7日 19:20


 ゼルコヴァ共和国軍第十一師団第三補給大隊第103補給処に所属する、ウェリナ・ラムナ少尉は退屈していた。

 戦闘はどこか遠くで行われているらしい。

 午前中に一度、戦車小隊がやってきて、弾薬と燃料の補給を求められたが、情報らしい情報はもらえず、戦局の風向きは全く見えてこない。

 まったく勝っているんだか。負けているんだか。まあこんな味方の勢力圏奥深くまでは、戦場の微風すら漂ってこないが、安全なことだけは保障できた。

 補給部隊に配属されたのは、運がよかったかも。

 私はツいてる。ウェリナはいつもそう感じている。

 周囲の森は深く、一応は味方の勢力圏ということになっている。

 しばらくは何事もなさそうだな、などと思っていると、森の中からガサゴソ物音がするのだった。

「誰何!?」

 ウェリナは森の中からこつ然と現れた一隊に警戒したが、彼らの軍装に示されたゼルコヴァの徽章を見て安堵した。

「中尉殿!」

 ラムナ少尉は先頭の見知らぬ士官に敬礼した。中尉は答礼し、ウェリナに話しかけた。

「師団命令です。補給物資をいただきに上がりました」

「了解であります。命令書を拝見いたします」

 中尉は一瞬首を傾げると、おもむろに腰のホルスターから拳銃を引き抜き、ウェリナ・ラムナ少尉の白い首筋に押し当てた。

「非常時です。これが命令書です」

 周りを見渡すと、仲間の補給隊員たちは次々に武装解除され、見覚えのない何人かの兵士がそこら中から武器や弾薬を運び出し、あろうことか、補給処配備のトラックに続々と積み込んでいるではないか。

 これまた見覚えのない上級軍曹がウェリナの前に現れ報告する。

「中尉、搬出できそうなものはすべて持ち出しました」

「よろしい。では撤収しましょう。少尉?」

 中尉はウェリナに拳銃を突き付けたまま笑顔を見せた。

「今見たことはすべて忘れてください。車と少々の荷物をいただきましたが、員数合わせはゼルコヴァ兵ならお手のものでしょう、少尉。上への報告はうまくやることですね」

 ウェリナ・ラムナ少尉は首元に冷たい金属を感じながら、小さく二度うなづくのがやっとだった。

 なんてツいてないんだろう……


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