14 報告
ラバキア平野北部 ラバキア街道沿いの雑木林の中
帝暦1936年5月7日 18:15
すでに日は落ち始めている。
三組の狙撃隊を派遣した。
最初に戻ってきたのはヒルカモタリ組、ついでカーリン組、最後にテンチャ組の順だった。
「さて……」
ミュコセキー中尉とリイナ・ツダマ上級軍曹、それに分隊長のホノタラム軍曹たちが、6人の少女の前に立つ。
「首尾のほどは、いか……」
「あしじゃ!あしあし!あしの手柄じゃ」
「はい!はい!うちら!うちらです!」
中尉が話し出すか出さないかのうちに、ヒルカモタリとキラコが同時に口を開いた。
「あん!?キラコおまん!何言ってるがか!」
「ヒルカさんこそ!やったの絶対うちらです!」
「きさん!手柄横取りするか!」
ヒルカモタリがキラコの襟首につかみかかりそうになり、キラコも負けじとこぶしを振り上げた時、後ろから声がした。ヒルカモタリとキラコは諍いの手を止め、全員がそちらの方へ振りむいた。
「風速は東から0.3メートル。ほぼ無風」
テンチャ・マサキ兵長だった。
「戦車の相対速度は時速20キロ。相対距離はそれぞれ500メートルから600メートル。ヒトロクゴウゴウ、最初にそこのチビが撃ち始めた。3斉射。二発は外装に、そして最後の一発が右側覗視孔に命中。だが貫通しない」
テンチャが顎で軽くカーリンを指す。
「ヒトロクゴウハチ、次のそっちのでかいのが一発。いい腕だね。弾は右側覗視孔に命中。チビの攻撃でダメージを受けていた防弾ガラスを貫通、車内に侵入した。おそらくあの位置だと、装填手か操縦手にダメージがあったはず。まあたぶん装填手だろうね。砲撃がその時点で止まってる」
全員があっけにとられたように彼女の報告に聞き入っている。誰がチビじゃ!とヒルカモタリが暴れだしたが、ホノタラム軍曹に抱えられ、足だけバタバタさせている。
「まあとどのつまり、限定的ながら攻撃は成功。中尉、あんたの作戦勝ちってとこだね」
それだけ言うとテンチャは踵を返した。
「あ、そうそう。おまけもあったっけ。な、マヌアー兵長?」
テンチャ・マサキ軍曹は恥ずかしそうにうつむくキホ・マヌアー兵長の肩を抱くように去っていった。




