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第3話

なんて、不埒なことを考えながら通るいつもの通学路。高校生活にもだいぶ慣れ、新しかったことも段々と日常となっていく。

不思議だ。あんなに憧れていたこの高校での毎日が、日常になるなんて。

だけど、瞳の存在までもを、日常として受け入れる日がくるなんて一体、誰が想像しただろうか。

俺、昨日から出てこない瞳の存在を気にしていた。

いつもは、呼ばれてもないのに勝手に出てくるくせに。

どうしたんだ?

いやいや、悪いのはあいつの方だ、なんで俺が気にしないといけないんだ。

しかし、本当に俺、瞳のことや他の部位達のことも当たり前のことのように考えている。

不思議だ。

俺が、しみじみ感慨にふけっていると、銀子が背の高い女子と二人ならんで登校しているのが目に入った。

驚きだ。人外生物にも友達なんていたんだな。

いや、俺も銀子の友達のつもりだけど。

俺は、興味津々で観察した。

俺の背は、ギリで165センチだが、銀子の隣にいる女子は170センチを軽く超えるくらいに背が高いのがみてとれる。なにせ、銀子が160センチくらいだったからな。銀子より15センチ以上は背が高いのが遠目にも分かる。

髪型はショートカット。手足が長く、顔がとても小さい。きっと運動部なんだろう。体全体に適度に筋肉がついていて健康的な感じのモデルってイメージ。

そんな娘がなんで銀子と一緒にいるんだ?

「おはよう。ゆきぴろ。」

銀子が、俺に気がついて手を振るので、俺は自転車を止め挨拶をした。

「おはよう。」

隣に立つ女子をちらっと見る。色白で、目は切れ長。かなりの美人だ。

「あ、この子、7組のリョーコ。私の親友なんだ。

 リョーコ、彼が噂の、ゆきぴろね!」

「ああ、あの人ね。

 話はいつも銀子から聞かされているよ。

 よろしくね。私、陣涼子っていうの。

 銀子に例のCD渡されたんだって?

 びっくりしたでしょう。ばかだよね、この子。

 あれを聞いてどうしろっていうのか…。」

「何よ。リョーコ。

 これだから凡人は。なんであの声の世界のよさが分からないのかな。

 ゆきぴろ、ちゃんと聞いてくれた?

 ね、ね、よかったでしょ?

 めちゃくちゃ、よくなかった?」

俺は、陣さんを意識するあまりしどろもどろになって答えた。

「いやーー。

 なぜ、これを俺に貸してくなのか、君の意図がつかめなくて混乱した。」

声がかすれているのが分かる。

すると、陣さんがはじけるように笑った。

「あはは。だよね。絶対そうだよ。」

陣さんは奇麗な顔をくちゃっとさせて笑った。それが、とてもかわいくて、俺はぼうっとみとれてしまった。

「あ、そうだ。返そうと思ってCD今日持ってきたよ。

 借りたからには、義務に思えて昨日ちゃんと聞いていたら、途中で妹が部屋に入ってきてめちゃくちゃ焦った」

「あはは。もしかして、お兄ちゃん百連発を聞いていた?」

「うん。でも、イヤホンで聞いていたからセーフだった。」

「ははは。超うける!」

銀子も陣さんもかわいい声で笑う。声優のCDを聞いたから言うわけじゃないが、声って確かに重要な要素かもしれない。あんまり意識したことなんてなかったけど。天性のものだよな。

「じゃ、俺先に行くね。」

俺は、どぎまぎしながら自転車をこいだ。

不思議だ。銀子がいると、陣さんとも気楽に話せる感じがする。

銀子の親友って意味で彼女もやはりちょっと人とは違うんだろうな。だから、自分を否定されない気がして話ができるのかもしれない。

「遂にゆきぴろが、自己分析をするようになるまでにご成長あそばされましたか。

 僕は、今猛烈に感動している。」

…。うるさいよ、瞳。

「なんだよ、ゆきぴろが、あんな美人と知り合えて、一緒に喜びを分かち合おうとこうしてこうしてわざわざ出てきてやっているのにさ。

 それに、さっき寂しがってたじゃないか!

 あれ、ゆきぴろ。あいつ昨日のイケ面だ。」

え?俺は右足をぼりぼりかきながら、見渡した。

「かいちゃだめだよ。あと残るから。

 ほら、校舎のところ。目立つね。」

本当だ。瞳の言った辺りに背の高い集団がいた。皆、同じスポーツ用バックを肩にかけている。バスケ部か。

均整のとれた体つき。長い手足。本山は後ろ姿でもひときわ目をひいた。

確かに、目立つ奴だ。オーラがある。

俺が、まじまじ観察していたら、急に本山がふりむいて、目があってしまった。射抜くような視線がつきささる。俺は、とっさに目をそらすこともできずに、ぼんやりと立ちすくんでしまった。

ふんっと鼻で笑うような仕草をした後、本山は仲間と行ってしまった。

「何たたずんでんの?」

振り返ると、さっき知り合ったばかりの陣さんが一人で俺の隣に立っていた。

「陣さん。

 あれ、銀子と一緒じゃないの?」

「うん。用事を見つけたみたいで先に行かれちゃった。

 それより、さっき本山君と見つめあっていた?」

俺が、ぎょっとした顔をすると、陣さんは笑顔をみせて言った。

「え、山根君って、もしかして…。」

「ち…、違うよ。違うよ。」

俺は、あわてて否定した。本山に昨日おかまなのかって、聞かれたことが、すぐに頭に浮かんだからだ。普通だったら、「もしかしてって、何?」って、気楽に聞き返すところだよな。しかし、人と話すことがそもそも高校デビューのこの俺にそんなレベルの会話を求めることがどだい無理な話だと思わないか?

否定の仕方があまりにきょどっていて自分でも怪しまれそうな反応だと思う。

くそっ。「男らしさ」が遠い。

案の定、陣さんは、

「何が、違うの?」

って、聞いてきた。

だよね。だよね。そうくるよね。流れ的に。

でも、俺はおかまじゃないから。陣さんにも女子認定されたら俺、たちなおれない。

「何がって…。」

俺が、顔を真っ赤にさせてまごついていると、

「ふふ、冗談よ。ごめんね、山根君があまりに素直な反応で、ちょっとイジワルしちゃった。

 それよりバスケ部の本山君て、ちょっと変なんだよね」

と、口をわずかにすぼめて言う。俺は、陣さんのちょっとしたしぐさにどぎまぎしながら、悲しいかなか細い声でかろうじて会話を続ける。

「…どこが?」

「だってね。私この間、初対面でレズなの?って聞かれたの。

 はぁ?って感じでさ。

 かっこいいからって、この人なんなのって思ったわけ。むかつくでしょう?

 仮にそうだとしたらなんだっていうのよ。

 センシティブな問題をいきなりぶっこんでくるのって最低だと思う。」

「本当?

 奇遇って言っていいのかな。

 実は俺も昨日おかまなのって聞かれた。」

「え!」

陣さんは、俺をまじまじと見て、ちょっと考えている様子だった。

「本山君って、最初に銀子の友達かどうか聞いてきた?」

陣さんの言葉に、俺は勢いよくうなずいた。

「うん。聞いてきた。聞いてきた。」

すると、陣さんは微妙な表情になって、ためいきをつきながら言った。

「問題は、本山君じゃなくて、銀子のような気がしてきた。」

「え、でも、二人の接点って見えないな。

 一方は学園のアイドル、一方は『オタク』。中学も違うだろ。」

「あ!銀子をオタク呼ばわりした。うける。

 当たっているんだけど、怒るぞ銀子。ふふふ。

 そうね。銀子に聞いてみないことには分らないわね。」

「うん。

 …でも、なんだか、聞きたくないような気もするな。」

「そうね。

 なんか、とっても関わりたくない感じね。」

俺達二人は一緒にため息をつくのだった。

陣さんと別れ、一人になった俺は陣さんの背の高さを思い出し、今日から嫌いな牛乳を飲んで背を伸ばそうと密かに心に誓ったのである。

高校3年間で、絶対に陣さんよりも高くなってやるんだ!


今日も楽しい授業が続く。

俺は特に数学が好きだ。国語と違って明快な答えが導かれるところが気に入っている。

数学の時間に、銀子が話しかけてきた。

「ゆきぴろ。

 今日の、宿題どこだったっけ?」

こいつ、またか。

昨日から見ているんだが、銀子はどの授業の宿題もやっていない。

「ここの、問1から問4と、ここと、ここ。」

教えてやると、銀子はいつものごとくその項目に目を通す。その最中に、数学の先生が黒ぶち眼鏡のずれを中指で上げながら回答者を指名した。

「じゃ、問4を山田。」

そして、銀子の凄いところは突然当てられても、問題ないところだ。

なんでもないようにすらすら黒板に完璧な解答を書いていく。俺が昨日、悩んでトイレにこもってやっと導き出した解答よりもずっとすっきりとした解答をだ。

関係ないが、俺はトイレで考え事をするのが好きだ。妹に不潔とののしられるが。

銀子は観察する限り勉強した形跡が全くみられない。全く、ないのだ。

ノートは白い。いや、漫画しか描かれていない。

俺は、天才ってこういうやつのことを言うのだと思う。

あいつはぱっと教科書を見れば、それでいいんだ。どの教科でもそうなんだ。

段々、競うのがばからしくなってきた。

だって立っている場所がそもそも違うんだからな。

それに、俺は勉強するのが好きなんだ。努力したことが身になって行くプロセスも好きだ。

自分で言うのもなんだが、それが俺の才能だと思う。だから、銀子と比べて悔しがる必要なんてないんだ。

つまり俺は俺だし。銀子は銀子ってこと。

「えらい!ゆきぴろ!」

俺は、またも神聖な授業中に出てきた瞳に痛烈な一瞥をおみまいしてやった。

でも、心のどこかでは瞳がいつもの様に、好き勝手に出てきたことにほっとしていたんだ。だって、瞳がそうであることに慣れてしまっていたから。別に、依存しているとか、そんなんじゃないぞ!

そうだ、昨日のこと俺はまだ怒っているんだ!

っていうか、さっさと消えろ!

「最近、なんか、ゆきぴろかわいくなーーいー。

 ぷーーんだ、ぷん!」

そう言いつつも瞳は退散してくれる。段々お互いに、互いの扱いが分かってきたって感じだ。

「何を~!」

思考を読まれるのって面倒だな。

はい、無視。

俺は数学のわくわくする世界へと没頭していくのだった。

「ゆきぴろ、CD返して!」

休み時間に銀子がにこやかに話しかけてきた。

「そうだった。

 ありがとうって、あんまり言いたくないような?

 はい。」

「素直じゃないな~。本当は、ちょっといいって思ったでしょ?」

俺は静かに笑うにとどめる。

「まぁ、いいや。次はね。」

「え。…次があるの?」

「そうだよ。だって、いっぱいお勧めなのがあるんだもん!」

そう言って渡されたのは、玉塚歌劇団のDVDと韓流のCD。

「なんか、いちいち濃いんだな。」

「ふふ。ゆきぴろ、食わず嫌いは良くないんだからね。」

いや、そう言う問題じゃないと思うぞ。

「…もしかして、コレ陣さんにも?」

「うん。ひととおり貸したよ。」

「へえ。」

陣さんも気の毒に。

いや、それとも案外気に入っている感じなのか。

「じゃ、一応借りとく。」

そう言って手をさし出すと、銀子はいつものおたふくスマイルで手渡してくれた。

「このDVDの玉塚歌劇団のトップスターはね、すっごいリョーコに似ているの!」

へえ。なんか、興味湧いてきた。

「どうやって、陣さんと仲良くなったの?」

「それはね。私が、リョーコに一目惚れしたから!」

分かったぞ。こいつの言動が問題なんだ。

あらゆる意味で誤解を招く。


「リョーコ、中学まではバスケ部でね。たまたま練習試合にうちの中学に来たのを私が目をつけて、お友達になってね攻撃をしたんだ。」

へえ…。

って、怖い。恐すぎる。

お友達になってね攻撃。…嫌だ、とてつもなく嫌な響きだ。

「大会にも毎回応援に行ったんだよ。差し入れ持って。」

「へぇ。」

「そうだゆきぴろ。私が何の部活に入りたいか、分かった?」

「…。

 声優研究部みたいなの?」

「あ!いい線いってる~。

 でも、違うんだな。

 放送部に入ろうと思って。

 そのうち、私の美しい声が聞こえてくるから、耳の掃除きちんとしてちゃーーんと聞くんだぞ!」

「…。うん。」

思ったよりも意外に普通な選択でなんだか残念なような、安心したような。めんどくさいような?

まぁ、かってにしてくれって感じだ。

俺が微妙な反応なのを気にする風でもなく銀子は聞いてきた。

「ゆきぴろ、いいかげんそろそろ部活動決めないと期限きちゃうよ?

 どうするの?」

「うーーん。

 まだ、決めかねている。

 そうだ、陣さんはどこの部に入るの?」

「リョーコ?ゆきぴろが他人を気にするのって、珍しい。

 いい兆候だね。もっと、社会に溶け込めるようになっておかないとね。」

銀子、一体何の心配をしてくれているんだ?

銀子にだけは言われたくない言葉だ。

俺の心外な思いなど意に介さず、銀子は話を続ける。

「ハンドボール部にもう入部しているんじゃないかな。

 ふふふ。あの子普段はあんなだけど、スポーツすると別人なんだ。

 めちゃかっこいいんだよ。」

「そう。見てみたいな。」

「うん。リョーコがレギュラーになったら一度応援しに行かなくちゃね。」

「そうだね。」

「もし、どこの部活にするか決めきらなかったら、放送部においでよ。面倒みてあげるから。」

「…ありがとう。」

これは、…まずい。四六時中いっしょにいる事態は回避しなくては。

銀子に面倒みてもらうのはあらゆる意味で危険だ。俺の高校生活にこれ以上の混乱はいらない。

俺はその日から、真剣にどの部に入るのか考えるようになった。


蕁麻疹のできた右足は三日後には、はれもひいて落ち着いた。はれている間は想像以上にかゆかった。何度ムヒをぬっても、無意識にかきむしってしまってしまい、気付くと皮膚が破れて汚くなってしまっていた。

まるで虫食いの痕のようだ。どんな家に住んでいるんだって思われそうだな。

なんて、ぼんやり考えていたら、ふいに野太い怒号が聞こえてきた。

「お前の、ワタシに対する愛情を確かめさせてもらった。」

家に帰り、その日の勉強を終えてほっと一息ついた時だったので、俺はすごく、すごく面倒くさい気持ちになった。

軽やかに俺の頭上を舞いながら、

「あ、右足君がね。

 どうしても、君にものもうしたいんだって。」

と、瞳があくびをしながら説明する。

何?まだ怒っているの?…執念深いやつだな。

話しやすいように、右足も映像イメージしたほうがいい?

すると、右足は俺と瞳の会話に割って入った。

「それには及ばない。瞳のような甘ったるい姿にされてしまったら末代の恥。

 ワタシはワタシの思う姿で現れよう!」

すると、どどーーんと、芝居がかった効果音と煙とともに、鉄血宰相の異名を持つビスマルクが俺の目の前に現れた。

天にそりかえった立派なお髭もそのままに、いかめしい姿で登場だ。プロイセン式軍帽(頂にとがった金具が付いている)もきっちり着用している。

俺の脳、一体どうなっているんだ。こんなリアルな幻覚みていて、正常といえるのか?

それにしても、これまたけったいなのがでてきた。

「けったいとは何事だ。貴様、いちいちけしからん。

 ワタシは猛烈に失望している。

 ワタシの美しい右足をなぜああもむごい姿になるまでかきむしったのだ。

 愛情が足りない。

 絶対に足りない!」

そんなの、かゆかったからに決まってるじゃん。

…愛情って。

自己愛の話になるんだろうか?それは、なんとも気恥ずかしい話な気がする。

なんだよ。怒るぐらいなら最初から蕁麻疹なんて出すなっつーの!

それに、ちゃんとムヒぬったじゃん。そこんとこ、認めてくれてもいいと思うよ?

俺努力したじゃん?それでもかゆかったんだからしょうがないじゃないか。

「しょうがなくない!

 ムヒなど言語道断。そんな邪道、そもそも認めるものか。

 耐えてこそ男じゃではないか!」

怒りのためか、ビスマルクはわなわなふるえている。

なんか、相手がヒートアップしているとこっちはすっと冷めちゃうよな。

なんでだろ。

そんな俺をよそに、ビスマルクはまた吠える。

「貴様!たるんでおる!」

自分の怒りに疲れたのか、肩で息をしている。

血管切れそうな感じだな、おい。

奴は呼吸を整えている様子。

そして、きっとにらむと大げさな身振り手振りで話しだした。

「お前、何の部活に入るのかを考えあぐねていたな。

 よろしい。ワタシが決めてやる。

 お前のようなあまったるい奴は、応援部だ!

 そこで、そのどうしようもない根性を徹底的に鍛えなおしてこい!」

人差し指を向けて、びしっと言われても、困るんだけど。

だいたい、人に向かって指で指すなんてことしちゃいけないんだぞ。

っていうか、はぁ?って感じだし。

勘弁してよ。

応援部って、どの運動部よりきついじゃん。上下関係厳しいし。

明治時代そのままな体質ですよ?精神論・精神論・精神論のエンドレス。

成せば成るっていう感じがね、俺には無理だよ。

それに、手のひらの皮膚が破れるまで拍手の練習なんてさせられたら、俺えんぴつもてないじゃん。勉強に支障をきたすのは学生の本分にもとる。承服しかねるぞ。

瞳も、俺に同意してくれた。右手を左右にぷらぷらふって緊張感なく意見をのべる。

「僕も、反対。

 ゆきぴろが、そんな過激な部に耐えられるわけがないじゃん。

 僕らの体は立派でもゆきぴろの精神はとってもとってもナイーブなんだから。

 そんな自殺行為は認めません!」

瞳の奴、なでだろ、すごくむかつく。

ナイーブって言い方が、子馬鹿にしてないか?

それに、こないだお前のせいでソフトボールが腹に当たったよな?あれは確実に生命活動の危機だったぞ。まさに自殺行為。

こいつ、自分のことは棚上げかよ。

でも、まぁいいや。ここは、擁護してもらっているんだし、流しとこう。

大人になれ、俺!

すると、ビスマルクはつばをまきちらす勢いで反論する。

「分かってないな。

 その軟弱な精神を一から鍛えなおすと言っておるのだ。

 けしからん。何が、草食系男子だ。流行りだと?ふざけるな。

 っく、日本男児はかくも落ちたものよ。

 ワタシは認めないからな。

 ゆきひろだけでも、ワタシが世界に誇れる日本男児となるよう導いてやる。」

瞳は首をすくめて言う。

「論点ずれているし~。

 ちょっと頭冷やしたほうがいいんじゃない?

 左足君、たのむよ。」

「仕方ないなぁ。分ったよ。」

艶っぽい声と共にビスマルクは消えていった。


左足君。また新しいのが出てきた。

「ああ、彼はどちらかと言うと君に似たタイプの子だよ。ビスマルクとは正反対。

 でも、彼ら不思議と仲がいいんだ♪

 右足君は剛毛派だけど、左足君は薄毛派だよ。左足君は、むしろ体毛なんていらないって言っていたな。」

…それも、意味が分からない。体毛ないと困るじゃないか。まつ毛、鼻毛、大事なんだぞ。

「って、まつ毛と鼻毛だけ?他の体毛が聞いたら怒っちゃうよ?

 まぁ、みんな理想がそれぞれ違うってことだね。」

ついていけない。

どうでもいいが、右足のやつ日本男児だの何だの語るわりに、なんで姿がビスマルクなんだ?

勝手にしてくれ、俺は疲れた。寝るぞ。

会話をしながら、すでに俺は寝支度を終えていた。後は布団に飛び込むだけ!

おやすみ!

「ちょっと、寝ないで!ゆきぴろ!」

…なんだよ。

「ボール当たったの、ごめんね。」

ふん。謝るの、遅いんだよ。

「それから、ゆきぴろは運動神経がないわけじゃないよ。運動しないから体の使い方がうまくないだけなんだ。

 やれば、なんでもできるはずだよ?

 こないだ、めちゃくちゃ速く走れたでしょ?」

何が言いたいんだ?

「自分で自分の可能性をつぶしているから。

 興味があったら、運動が苦手だなんて思わずにやってみるといいよ。」

分かったよ。

もう、遅いんだ。寝るからな。

「あ~、話し半分にしか聞いてない感じ~。」

瞳はぶつぶつ言っていたが、俺の意識は薄れていった。

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