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悪魔探偵  作者: 豚しゃぶポン酢
サザーク区怪死事件
1/1

プロローグ 《探偵》

「さて、仕事を始めよう」

 夜の帳が下り、月明かりと街灯のみが頼りとなるロンドン市街。往来の少ない街を駆ける一人の男がいた。盗人である。どこぞの家から貴重品を盗みだしたのだろう、妙に上機嫌で駆けている。そんな男は路地に入り、成果物を確かめている。

「へへへ、今日は収穫だな」

 男はニヤつきながら袋に入れた宝石類を眺めている。すると、路地の中に何者かが入ってきた。

「この近辺の家に侵入し続けているのは君だね?」

 入ってきたのは、手袋をつけたシルクハットを被りスーツを着た男である。ただ、顔をペストマスクで隠している。

「誰だお前!?」

「私か?私は・・・《探偵》とでも呼んでくれたまえ」

「探偵だぁ?何だよ、警察じゃねぇなら失せろ」

 そう言い、男は拳銃を抜いた。盗品ではなくどうやら自分の持ち物らしい。

「…私がそのような玩具を恐れるとでも?」

「そうかよ、それなら死ね!」

 銃口が光り、弾丸が探偵を名乗る男に飛んでいく。が、弾丸を喰らった探偵は身じろぎもせずその場に立っている。

「なぁっ!?」

「…スーツに穴が開くからやめたまえ。でなければ少し乱暴に対応しなければならない」

 探偵は、右腕を巨大化させながらそう言った。彼の腕は人のそれとは形を変え、黒と紫の斑がうごめいている。

「は、ハァッ!?何なんだよお前!?」

「今すぐ投降するか、大怪我して捕まるか、どちらか選びたまえ」

 彼は巨大化させた拳を握り、質問した。

「この化物が!」

 そう言い、盗人は銃を連射した。しかし彼には通用しない。

「交渉決裂か。致し方ない、では痛い目に遭ってもらおうか」

 弾切れして焦る盗人を、巨大な拳が襲った。盗人は10mほど吹き飛んで向こう側の大通りに飛び出した。大通りの方で少しのどよめきが起きる。探偵はそれを気にせず、スマートフォンを取り出し電話をかけ始めた。

「ああ、クラリス。依頼人に伝えてくれ、空き巣は捕まえた」

「分かりました。あと、ジェフリー様がお見えになっています」

「そうか、分かった」


 ベイカー街の大通り、その路地を少し入ったところに彼の事務所がある。『ウォーナー探偵事務所』という新しめの看板が見えるが、周りの暗さが何故か年季を感じさせる。階段を上ると、雑居ビルに似つかわしくないアンティークな扉が見える。扉を開き、中に入ればそこは別世界のような光景が広がっていた。ペルシャ調のラグの上にはオークのテーブルと黒いソファ、テーブルの上には花が活けてある。ソファの後ろには大きなマホガニーのデスクとレザーのチェアーがあり、その左手側、部屋の隅には部屋の雰囲気によく合う蓄音器が見える。時代遅れの蓄音器からはジャズが流れている。

 ソファにはスーツを着た金髪の太った男が座っていた。

「随分忙しそうだな」

「ジェフリー警部、今日はどういったご用件で?」

 すると、奥の部屋から誰かが出てきた。ブロントヘアーの男装をした少女だ。

「お疲れ様です、ご主人様。お茶をお持ちしました」

「ああ、ありがとう、クラリス」

「どうも」

「では、奥で待機してますので」

 そう言って、少女は奥の扉へ消えていった。

「用件っていうのは他でもない、依頼だよ」

「依頼?警察がまたどうして?」

「・・・実は、今サザークでよく分からん事件を扱っていてな」

「どのような事件でしょうか?」

「殺人だ。ところがこれが意味の分からんものでな、外傷や毒物検査に一切引っかからないんだ。既往症やら持病やらが関係しているかと思えばそんなことも無い」

「なるほど、確かに奇妙ですな。ですが何故私のところに?」

「超常の力ではないかと思ってな、そうであれば警察じゃどうにもならん。そこはお前の方が詳しいしな」

「・・・分かりました、お受けいたしましょう」


 茶を飲み終わると、警部は帰って行った。相変わらず蓄音器からはジャズが流れている。しばらく茶を飲む探偵だが、入れ替わりで誰かが来た。2メートル20㎝はあろうかという軍服の巨漢である。ドアをくぐって入ってくるその姿は威圧感を感じる。

「おや、《大佐》。どうかしましたか?」

「・・・・・・」

「今お茶をお持ちしますね」

 男は無言のままソファに座った。丸太のような腕と険しい顔は怒っているようにも見える。

「相変わらずですね。それで、ご用件は?」

「…部下が殺された。死因は外傷や毒じゃない」

 ドスの利いた野太い声で、先程の依頼と同様のことを言い始めた。

「先程ジェフリー警部にも似たことを言われました」

「犯人を捜して欲しい」

「…見つけてどうするのですか?」

 大佐の表情がわずかに変化する。

「殺す。そうでなければ示しがつかん」

「やはり、そうですか。警部から調査を依頼されていますのでそれは・・・」

 地雷を踏み抜いたのだろうか、大佐の拳がテーブルを叩いた・・・と思ったらテーブルを破砕した。そんなことは露知らず、蓄音器からは小粋なジャズが流れている。どうやら一周したらしい。

「…悪かった、弁償する」

「請求書は後でお送りいたしますね」

「とにかく、私ではお受けできませんので」

「むう・・・」

「ジャックにでも頼めばどうですか?もっとも、忙しいでしょうが」

「ここに来るまで距離もある。間に合わん」

「分かりました、では共に調査いたしましょう」

「…いいのか?」

「まあ、それで納得していただけるのなら」

「……恩に着る」

 大佐は入ってきた時と同様に、ドアをくぐって出て行った。

「では、お疲れ様です」

 クラリスはそう言うと、ビルの階段を昇って行った。どうやら上に住んでいるらしい。探偵は蓄音器を止め、扉のプレートを裏返す。『CLOSED』の文字が書かれている。事務所に入り、鍵をかけると奥の部屋に消えていった。

 真っ当にあとがきを書くなんて初めてだから稚拙なのはご容赦を。このシリーズは不定期更新で気分転換にちょいちょい書いていくよ。メインも書きたいし短編だって出したいからね!まあそれはそれとして、メインの『アウトローズ』が会話率75%だって小耳にはさんだ。まさか違うよなぁ?って思ってたらマジだったみたいだね。やっぱり幕間やあとがきに会話をガンガンぶち込んだからかな?まあいいや、やりたいように書いたし。では私はこれにて。更新自体はするから気長に待ってておくれ。

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