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回復への道


涼しい風が窓際から規則正しく吹いてくるのを感じて、目が覚めた。

 

 気がついたらベットに1人のようだ。体は重いが動きそうだ、気分も悪くない。

 手を握ったり、開いたりして感触を確かめる。

 

 部屋のなかはベットと小さな丸椅子が1つの簡素な部屋だった。

 花瓶が1つあり、黄色のフリージアの花が綺麗に飾ってあった。


 「あの?誰かいませんか?」

 部屋の外に声を掛けてみると、看護師さんがすぐに来てくれた。

 自分の声が随分と明るい若々しい声だったので、自分で声を出しておいてなんだが1人でこんな声かと驚いていた。


 「気分はどう?」

 白いナース服に、黄色のショートカットがよく似合う褐色の肌をした眼鏡美人さんだ。

 言語は通じるようだが、ネームプレートに書かれている名前は読めない。

 声をかけながら、体の上半身を起こしてくれて話す態勢を作ってくれる。


 「大丈夫だと思います。まだ無理はできそうにないですが」

 子供が年長者に話しかける言葉をイメージして話す。

 

 「そう、よかったわ。でも無理はだめよ。

 フェリクス君が死んだ時は泣いちゃったけど、生き返ったと聞いた時はもっと泣いたんだから」

 明るい声で話しているが心配してくれているのは伝わってくる。


 「ご心配おかけしました。早く元気になれるといいのですが。ところで前に死んじゃった時の理由って分かりますか?」


 自分の名前はフェリクスと言うことが分かった。憑依した時には、すでに前の住人がいなくなってたのでそれ以前の記憶がない。


 「通称、未開地って呼ばれているこの地域特有の伝染病よ。子供は誰でも1回はこの病気になるんだけどフェリックスくんの場合は病状が重くて、都会から仕入れた特級ポーションも神父の祈祷も効かなかったのよ。病院では栄養あるものを流動食で与えて、清潔にすることで自己治癒を期待するしかなかったわ」


 「そうだったんですか、ありがとうございました」

 記憶が無い時も、看病してもらっていたことに感謝した。


 「ところでそこの黄色い綺麗な花は、誰からですか?」

 先程、気になった花について聞いてみる。


 「女性司祭の娘さんよ。あなたと年は一緒だったかしら。司祭にはいつも読み書きを教えてもらってるでしょ。毎日、お花を持って来てくれてるみたい」

 センスのいい子なんだろうなと、どんな子か想像したくなる。


 「ご家庭に目が覚めたことを伝えてくるわ。起きてすぐ長話しになっちゃったから、疲れたでしょ。横になって無理しないで」

 優しくベットに横にしてくれる。

 言われたとおり、回復に努めようとそのまま眠りについた。


 ◆


 次に起きたら、部屋が変わっていた。

 ベットが大きく豪華になっている。部屋も広いようだ。

 起き上がれそうな気分なので、ベットから出て歩いてみる。うん、違和感なし。


 自分の手足を見てそれにしても、小さくなったと楽しくなる。性別は名前からも男性のようだ。

 窓のガラスに映った顔を見ると、少しクリンクリンとクセのある黄色に近い髪色のボサボサ頭が見えた。肌色はさっきの看護師さんと比べると白い。顔にはまだ幼さの残るかわいらしさが見えた。


 パジャマ姿だったが、トイレに行きたくなって部屋の外に出てみた。

 同じ扉並んでいて、どこに入っていいか分からない。どうやら裕福な家庭の子供らしい。


 「あのー、誰かいますか?」

 とりあえず、分からなければ聞くしかない。長い間寝ていたこともあって、溜まるものが溜まっている。


 誰かが階段を騒がしく上がってくる音が聞こえる。


 「坊っちゃん」


 黒いシャツにスラックスを履いた男性にきつく抱きしめられる。この世界は男性に熱烈に抱きしめる習慣でもあるのかと勘ぐりたくなる。そんなことを考えていると思考を中断せざるを得ないくらいに苦しくなる。また死にそうだ。

 真っ黒男の背中をタップしてギブアップを伝えるも、熱い抱擁をしていると勘違いしてるのか緩めてくれない。トイレの我慢の限界は早くも来てしまった。。

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