♥ 只今、キャンプ場 2
私は3人用のソファーに寝そべって、スマホを弄っているわけで──。
弓弦さんはタープテントの下で、夕食の料理を作っていてくれて、何故か玄武も弓弦さんと一緒に料理を作っている。
味見がしたいんじゃないかしらね。
絶対にそうだと思うわ。
私も「 手伝う 」と言ったけど、玄武に却下された。
どうしてかしらね?
因みにテーブルセッティングは玄武がしている。
一体何処でテーブルセッティングなんて覚えたのよ…。
食器や食具は落ちても割れない軽い素材で出来た物を使っている。
テーブルセッティングを見てるだけで、「 キャンプでお洒落なディナーでもするつもりなのかしら? 」って、思っちゃう。
結界の中では玄武が放し飼いにしている式神達が、各々自由に寛いでいる。
野性動物や脱走動物が近付いて来ないように見張りをしてくれているの。
結界の中は丁度良い温度が保たれているから、快適に過ごせるのが嬉しい。
虫に悩まされる事もないし。
雨,風,雪,黄砂も防いでくれるんだから、結界って凄いわ!
玄武様々ね。
厳蒔弓弦
「 ──衛美、待たせたな。
料理が出来た。
玄武が盛り付けてくれるから待っていてくれ 」
衛美
「 は〜〜〜い♥ 」
衛美
「 ──御馳走様でした!
身体がポカポカします(////)」
玄武
「 やはり、すき焼きは良いな 」
衛美
「 玄武は、お肉ばっかり食べてたわね! 」
玄武
「 衛美の為に毒味をしたまでだ 」
衛美
「 毒味にしても食べ過ぎだったわよ! 」
厳蒔弓弦
「 衛美、ココアを入れた。
飲むだろう 」
衛美
「 有り難う御座います♥ 」
弓弦さんからマグカップを手渡しで受け取った私は、マグカップに口を付けた。
玄武
「 弓弦、ワタシもココアを飲みたい 」
厳蒔弓弦
「 用意してある 」
弓弦さんはココアを入れたジョッキーを玄武に手渡した。
衛美
「 それで──、玄武。
明日は何処へ行く予定なの? 」
玄武
「 明日は教会だな 」
衛美
「 教会?
今度は教会が心霊スポットなの? 」
玄武
「 そうだな。
既に廃墟になっている教会だ 」
衛美
「 …………また廃墟なの… 」
玄武
「 仕方無いだろう。
淀みは廃墟に溜まり易いからな 」
厳蒔弓弦
「 玄武、何と言う教会なんだ? 」
玄武
「 確か…グレイルシー教会ではなかったか? 」
厳蒔弓弦
「 グレイルシー教会か?
間違いないのか? 」
玄武
「 多分な 」
衛美
「 弓弦さん、グレイルシー教会…の事を知ってるんですか? 」
厳蒔弓弦
「 …………あぁ…。
グレイルシー教会には、地下へ降りる階段があるらしい。
地下には牢屋があってな、大勢の罪人が様々な拷問を受けていたそうだ。
罪人へ拷問をしていたのは聖職者達だ 」
衛美
「 …………聖職者が罪人を拷問していたんですか? 」
厳蒔弓弦
「 200年程前の事らしい。
拷問で亡くなった罪人は1000人近く居たそうだ 」
玄武
「 時代が時代だからな、弔われてないのだろうな。
呪具が隠されている可能性は高い 」
衛美
「 その…グレイルシー教会では何が起きてるの? 」
玄武
「 逆さ吊りの状態で磔にされた死体が度々発見されるらしい 」
衛美
「 ………………えっ??
磔の死体??
度々…ですか??
それって──今もって事? 」
厳蒔弓弦
「 そうらしい。
面白半分でグレイルシー教会へ来た観光客が被害者になるらしい。
地元の人間はグレイルシー教会へは近付かないからな。
他所から来た者が被害に遭うのは事実だろうな 」
衛美
「 …………今も被害者が出る教会へ行くなんて嫌よぉ… 」
玄武
「 安心しろ、衛美。
淀みに集まった野良式神の仕業だ。
拷問で殺された罪人の残留思念を取り込んだ野良式神が悪さをしているだけだ。
退治をして淀みを消せば、被害者は出ない 」
衛美
「 …………本当に野良式神が犯人なの? 」
玄武
「 野良式神に取り憑かれた人間の仕業の可能性もあるな。
どのみち、野良式神が関わっている事には変わりない。
原因が分かっているんだ、怖くないだろう? 」
衛美
「 普通に怖いわよ! 」
厳蒔弓弦
「 グレイルシー教会では、度々ポルターガイスト現象も起きるそうだ 」
衛美
「 ポルターガイスト?! 」
玄武
「 霊感の弱い一般人には野良式神が見えないからな。
ポルターガイストと思うのは仕方無い事だ。
正体が分かっているから衛美は怖くないだろう 」
衛美
「 怖いわよ!!
正体が分かってようが、怖いモノは怖いの!
見えても怖いの!! 」
玄武
「 結界を張るから大丈夫だ。
ザコは式神に片付けさせるから安心しろ 」
衛美
「 ………………任せるから… 」
厳蒔弓弦
「 呪具があるなら教会の地下に隠されているかも知れないな 」
玄武
「 そうだな。
見付かり易い場所に隠したりしまいよ。
ザコは式神に任せるとしてだ、現地に着いたら隠し階段を探すとしよう 」
厳蒔弓弦
「 それが良いな。
直ぐ見付かればいいが… 」
玄武も弓弦さんも、明日行く、グレイルシー教会の事で盛り上がっている。
式神と退魔師って、やっぱり話が合うのね。
まるで私は茅の外。
まぁね、心霊スポットの話なんて寝る前に聞きたくもないわ。
私は明日に備えて早目に寝る事にした。
お風呂は明日、朝シャンしようと思う。
衛美
「 弓弦さん、ココア──、御馳走様でした。
私、早目に寝ますね。
玄武、明日の朝、別邸に連れてって。
朝シャンしたいから! 」
玄武
「 良いだろう。
夜更かしをしないとは偉いぞ。
確り休む事だ 」
厳蒔弓弦
「 お休み、衛美 」
衛美
「 お休みなさい、弓弦さん,玄武 」
私は1人で直ぐ後ろのテントへ移動する。
枕を定位置に置いて、ベッドの上に上がったら、掛け布団を頭から被った。
玄武と弓弦さんの話し声を子守唄にして、私は瞼を閉じた。