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勇者の役割

作者: 宮槁逢煉

 とある世界。そこには数々の種族が住んでいる。例えば、妖精のような愛らしい容姿を持つエルフ族や神々からそれぞれに合ったスキルを与えられえる人族。そして、特別な力を宿し、体のどこかに刺青のような模様がある魔族。

彼らはお互いに干渉を避け暮らしてきた。

 だが、ある時を境に人族と魔族は争いあうようになっていた。何が理由でこの争いが始まったのかは今ではもうわからない。しかし、この争いは時を経て変わっていった。人族側は多くの兵士で戦うことをやめ、人族の中から1人、神々から魔族と戦う者を選び出してもらっていた。その選ばれた者を『勇者』とし、人族の平和を守るために戦わせるのである。

 一方の魔族は、魔族の中から武力、知識共に優れたものを選び出し、その者を王として魔族全体のリーダーとした。もし魔族の王『魔王』が人族側に殺された場合は、魔族側は負けとなる為、魔族全体が魔王を守護し、そして自らの暮らしを守るために戦ってきた。

 こうして、『魔族』と『人族』の争いは『勇者』と『魔王』の戦いに変わっていった。

 それに伴い、人族の中から選ばれる者のスキルは必ず「勇者」というものになったのである。このスキルは人族全体にとっては祝福のようなものである。魔族の脅威から平和に暮らせる理由が出来るのだから。しかし、「勇者」のスキルを手に入れたものにとってはこのスキルは「呪い」でしかないのだ。







 とある少年は「勇者」のスキルを与えられた。初めは嬉しかった。誇り高き「勇者」のスキルを与えられたのだから。多くの人を救うことが出来る。悪だと言われている魔族の王を倒すことが出来るのだから。

 だが、それは所詮刷り込みに過ぎない。魔族の王が本当に悪なのであろうか?「勇者」のスキルが本当に誇り高きスキルであるのだろうか?

 この時の少年は今まで教えてもらったことが真であると信じて疑わなかった。気づいた時には遅く、少年は呪いに蝕まれ少年が大事だった人を殺してしまったのだった。






「哀れだな。呪いのようなスキルに侵され、ただただ与えられた役割を果たすだけに動かされている。まるで、神々の生き人形のようだ」

 魔族の王として勇者と相対する、まだ20にも満たない少年は、懐かしい、友であった『勇者』を見てそう呟いた。


 魔王を倒すために今まで必死に進んで来た『勇者』である少年はどこかぎこちない動きで魔王に迫る。

「もう…い、やだ。戦いたくない。殺したく、ない。だって、だって君は……。」




 しかし、「呪い」は少年の意志とは関係なく、役割を全うするために、『勇者』に魔王を倒させたのだった。


 こうして、『少年』の犠牲によって、人族にとっての()()()な平和がもたらされた。



 所詮は()()()なもの。また時が経てば新たな『魔王』が生まれ 、そして、新たな「勇者」のスキルを与えられた人が『勇者』となって魔族と戦うことのなるのである。これは、世界の条理。世界が正しく回るために行われる、云わば、儀式のようなものだ。



 これは始まりに過ぎない。この先「勇者」のスキルは新たな「呪い」を生み、スキルを与えられた者に苦しみも与えることになる。そして、それがまた「呪い」となって次の『勇者』に苦しみを与えるのだ。長く続く負の連鎖である。

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