表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

7.対戦相手はラスボス?!2回目の観戦 前編

 桜も散り、日差しがとても強い4月中旬の日曜日。

 今日は吉川さんと一緒に試合を見に行く日だ。


 ユニフォームを着てアイボリーのワイドパンツを穿き、ブルーグリーンの薄手のロングカーディガンを羽織る。

 紫外線が強いので、日焼け止めも忘れずにしっかりと塗った。


 屋根なんて無いに等しいスタジアムだから、観戦中は直射日光を直に浴びるので、対策は必須だ。

 帽子を被って家を出る。


 今日の対戦相手は、10年間対戦して1度も勝ったことのない、黄色がクラブカラーのチーム。

 特別強いというわけではない……はず。

 只々、何故か応援しているチームとの相性が悪いようで、何回試合しても勝てない。

 そんな対戦相手は今季無敗で首位。


 まさにラスボスである。




 ショッピングモールの第一駐車場付近で待ち合わせと決まり、その場へ向かうとブラックのジャケットの袖を少しまくり、オレンジのシャツとネイビーのジーンズ姿の吉川さんがいた。


「こんにちわ!」


 吉川さんに声をかけると、二コリと笑みを浮かべて挨拶をしてくれた。


「こんにちわ」


「今日はよろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げると、吉川さんも同じく頭を下げた。


「こちらこそ。何か買っていくものはある?」


「無いので大丈夫です!」


 飲み物もスタジアムで買うし、必要な物はすでに購入してバッグの中だ。


「そっか。じゃあ、行こう」


 吉川さんに案内され、車の助手席に座る。

 人の車に乗るのってなんだか緊張するなとか、汚さないようにしなきゃとか思いながらシートベルトをする。


 車内はフレグランスを置いているのか、ほのかに爽やかな香りがした。

 普通車だからなのか、この車の性能なのか、エンジン音が静かなのに内心驚きつつ、スタジアムに向かって車は走り出した。


 県道から国道に出てしまえば、あとは一直線にスタジアムに着く。

 その国道は高速道路のインターチェンジの出入口があり、主要道路の為、基本渋滞している道路。

 バスでスタジアムに行くとなると、大体30分以上かかるが、車だとどの位の時間で行けるのか……。


 ラジオをBGMに外を眺めながら、何か会話した方がいいんだろうか?それとも運転の邪魔だから黙っていた方がいいのか私が迷っていると、吉川さんの方から話かけてくれた。


「そういえば、前回の試合も見に行ったんだよ」


「どうでしたか?」


 視線を外から吉川さんの方へ向ける。

 前回の試合というのは4月上旬、土曜日開催の今年1部リーグから降格してきたチームとの試合のことだ。

 私が吉川さんと一緒に見に行こうか迷った試合で、この試合も無事勝利をおさめていた。

 ただ、その前後のアウェーの試合は敗戦しているので、チームの順位は中位のままだ。


「勝った試合だったから楽しかったけど……」


 そう言うが、吉川さんは少し困った表情をした。


「友人と一緒に行ったけど、結局また途中から1人で見ることになっちゃってね……」


「……それってコアサポなお友達さんですか?」


 例の初観戦の吉川さんを放って応援ゾーンに行ったという。

 吉川さんは頷き、


「そうそう、今日も一緒に行こうって誘われたんだけど断ったよ」


 その言葉に私は驚く。


「え、良かったんですか?!断っちゃって……」


「だって、あいつと一緒に行っても1人でみるようなものだし。だったら高藤さんと一緒に見た方が楽しいからね」


「……そ、そうですか。ありがとうございます……」


 なんて言えばいいのか、そう言ってもらえて嬉しいやら恥ずかしいやらで、とりあえずお礼を言うが、顔がカッと赤くなるのを感じ吉川さんから視線を逸らした。


「今日はスタジアム入る前にスタグル買ったりする?」


「えっと……、スタグルは勿論買います!あと、グッズショップで新商品見て、あと…選手のサイン会しているみたいなので、もし可能ならサイン会に参加したいです」


 今日の試合情報を公式HPで確認すると、選手のサイン会が開催されると掲載されていのだ。

 どの選手なのかは当日発表みたいで、誰が登場するのかわからないけれど、選手のサインを貰ったことが一度もないので、この機会に是非参加してみたい。


「サイン会か……、色紙とか持ってきたの?」


「あ、はい。ミニ色紙買って持ってきました」


 スタジアムのグッズショップでも色紙を売ってるのだけど、通常のサイズの色紙しか置いていなくて、持ち歩くとなると邪魔かな?と思って、文具ショップで手のひらサイズの色紙を買ってきた。


「じゃあ、サイン会は絶対参加しないとだね」


「2枚色紙あるので、吉川さんも一緒に参加しませんか?」


 私だけ参加して待たせるのも悪いしと提案してみる。


「そうだね、一緒に参加するよ」


 そんな試合に関する会話を続けていたら、お昼過ぎということもあるのか、夕方よりかは渋滞も少なく、20分程度でついた。

 やはり、途中乗車があるバスよりも車の方が早いなぁと思った。


 陸上競技場以外にも体育館や公園に動物園があり、それらの利用者も駐車する。

 駐車場は日曜日ということもあり、やや混んでいたが、無事駐車することができた。


 そこから、徒歩でスタジアムである陸上競技場まで歩いていく。

 そこまでの道のりには、選手の幟が背番号順に並べられていて、そこはバス停から下りて見る風景と一緒だなと思った。


 まずはグッズ売り場に向かう。

 今回の新商品は選手・監督・マスコットのキーホルダーで、それらはガチャガチャで入手できるものだ。

 3回だけ回して、いつも試合にでている背番号10番の選手とマスコットのキーホルダーを2つゲット。


「俺も回して見ようかな……?」


 吉川さんも私につられてか、同じく3回回した。


「高藤さんと同じ10番のキーホルダーだ」


「あ、ほんとですね」


 吉川さんは背番号1、10、15の選手のキーホルダーを引き当てていた。

 全て試合でスタメンで出ている選手を引いていて、当たりを引いたのでは?と思わずそう口に出した。


「わ~……全部スタメンの選手ですよ」


「へぇ……確かに。10番のキーホルダーは高藤さんとお揃いだね」


 吉川さんはカプセルからキーホルダーを取り出し、それぞれを手のひらに乗せて、そこから10番のキーホルダーを指で摘み、ニコリと笑みを浮かべながら私に見せてきた。


「そっ……そうですね!」


 吉川さんの爽やかな笑みに、何故か精神的ダメージを受ける。




 次にサイン会をしている場所はスタグル広場と同じところということで、そちらへ向かったが……。


「うわぁ……すっごい列ですね……」


 長蛇の列が出来ていて、私は唖然としてしまった。


「……あ、高藤さん、最後尾見て」


 吉川さんの言葉に最後尾を見る。

 スタッフの人が立っており、手にプラカードを掲げていた。

 そこに書かれている文字は……。


『受付終了』


 と書かれており、そのスタッフさんが、周囲に聞えるように大声でアナウンスする。


「参加者が多いため、こちらの方で終了となりますー!ご了承下さーい!」


「うそぉ……」


 予想していなかった事態に私は驚いてしまう。


「もうちょっと早く着いてれば良かったね」


 吉川さんは、残念そうな表情で声をかけてくれる。


「私も、こんなに参加者が多いと思って無かったので……」


 これは想定外だ。

 先着とか何もHPに書いて無かったし、こんなに並ぶとは思っていなかった。


「また次サイン会がある時は、早めに来た方がいいみたいだね」


「そうですね……今日より1時間くらい早めに来れば、並んで参加出来ますかね?」


「多分、大丈夫じゃないかな?」


「じゃあ、次はそうしましょう!」


 サイン会に参加出来ないのは残念だけど、次また機会があると信じる!

 私達はそのままの足でスタグルを買って、前回と同じ席辺りに座った。


 勿論?今回も、お互い買ったスタグルを一緒に撮り、一緒に肩を並べて写真を撮ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ