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5.試合終了!今年のチームはもしかして強い……かも?

 後半戦が始まるホイッスルがスタジアムに鳴り響いた。

 前半と同様、終始優勢に試合が運ぶ。

 そして、前半と同じように私のテンションは終始高いまま、試合終了のホイッスルが鳴り、スタジアムに勝利の歓声が上がった。


「勝ちましたね!!」


 私は勝った喜びでテンションが高いまま、吉川さんに笑顔を向けた。

 吉川さんも二コリと笑みを浮かべて、「良かったね」と言ってくれる。


「はい!いつも下の順位をウロウロしているチームなので、見に行っても負け試合だったことも多くて……。今年から指揮をとる監督は、1部リーグも2部の上位チームの監督を経験したことのある人なので……これは……期待出来るかもです!!」


 グッと両手を握りしめて熱く語る私に対し、


「前回も今回も試合を見たけど、チームが弱いっていう印象は無かったな……」


 意外そうな表情を吉川さんは見せた。

 私は去年のことを思い出しながら語る。


「正直、去年見に行った試合で勝った試合を見れたの8試合中1試合でした。見に行ける回数少ないとはいえ、勝利数も少なかったですしね」


「へぇ……監督が変わっただけでこうも違うんだね。確か友人も『去年といい意味で違う!』って試合終わった後、興奮したように言っていたな」


「ですですっ!次の試合見に行くの楽しみです!!」


 まだシーズンは始まったばかりで、浮かれるのはまだ早いと思うんだけど、今年はいい順位までイケるのでは?となんとなく期待してしまう。


「次はいつ行くの?」


「次の休みがまだ未定なので……早くて来月になりますね……」


 吉川さんの問いに私はそう答える。

 仕方がないのだ。

 サービス業だから、なかなか土日休み取れないし、試合は基本土日開催だからね。

 むしろ、月1で休み貰えているだけでも有難い。


「そうなんだ。良かったら次も一緒に見たいんだけど……どうかな?」


 窺うように私を見てくる吉川さんのお誘いに驚きつつも、


「お友達さんと一緒に見なくてもいいんですか?」


 元々、今日もお友達さんと一緒に見る予定だったはず。


「あいつはまた応援ゾーンの方に行くだろうから、一緒に行っても1人で見るハメになりそうだし……、それだったら、高藤さんと一緒に見る方が楽しいし……どうかな?」


 吉川さんも一緒に見て楽しいと思ってくれたんだ。


「私も一緒に見るの楽しかったので、吉川さんがそう言ってくれて嬉しいです!お友達さんさえ問題なければ次も一緒に試合を見ましょう」


「ありがとう。じゃあ次の休みが決まったら連絡よろしく」


「わかりました!」


 私は元気よく返事をした。


「そういえば、高藤さんはここまで何で来たの?車?」


「いえ、バスで来たので……」


「どこまで乗るの?」


「市内の市駅までです」


 バイクも車も免許未取得な為、駅の駐輪場に自転車を置いて、試合の日に運行される臨時の試合会場直通のバスに乗ってここまで来ていている。

 そして自転車で自宅に帰るといった感じだ。


「俺、車で来てるからそこまで送ろうか?」


 吉川さんの提案に心惹かれるのもがあったが、


「帰りのバスチケットをすでに買ってるので、今回はバスで帰ります」


 両手を合わせて謝る。


「残念。もうバスに乗るの?」


「はい。駅とスタジアムの直通臨時バスが出てるんですけど、試合終了後30分で運行終了なので……」


 のんびりしてたら乗り過ごしてしまう。

 せめて試合終了後1時間まで運行してほしいなと思う……が予算の都合上無理なんだろうなぁ。


「じゃあ急いだ方がいいね」


 荷物を手に持ち、お互い席を立つ。

 スタジアムから外に出て、駐車場に向かう場所で立ち止まり、吉川さんに頭を下げお礼をする。


「今日はありがとうございました!楽しかったです!」


「構わないよ。次回は車で一緒に行こうか。そうしたらゆっくり帰れるし」


「その時はお願いします」


「じゃあ、気をつけて帰って」


「はい!お疲れ様でした!」


「うん、お疲れ様。また」


 私は吉川さんに手を振り別れると、スタグル広場の方にあるバス乗り降り場に早足で向かった。


 こうして、初めての2人観戦は試合の勝利とともに幕を閉じた。


 今回も人でぎゅうぎゅうになったバスに乗り、道路の渋滞も重なったせいで、普段30分で着くところを1時間もかかり、少しヘトヘトになった状態で駅のバス停に着いた。

 駐輪場に置いていた自転車に乗り、家に帰る前に近所のスーパーに寄る。


 スタジアムに午後1時に着き、駅に戻って来たのが午後5時すぎ。


 渋滞がなければもっと早く帰れただろうな。

 もしくは郊外じゃなくて街中にスタジアムがあれば行きやすいのに……と少し愚痴る。

 スタグルも食べて、そんなにお腹空いてはいないし、夕飯はそんなに食べないだろうと、缶チューハイとカップうどんを買って、家に帰った。


「ただいまー」


 1人暮らしなので返事は返ってこないが、何となく言ってみる。

 買ってきた物と家にあったお菓子をテーブルに並べて、部屋着に着替える。

 そしてタブレットの電源を入れ、サッカーの試合映像を流しているスポーツ配信アプリを立ち上げ、今日見た試合の視聴ボタンを押す。


 地上波では毎試合放送はしていない。

 仕事で行けない日の試合や、相手チームの会場で試合を行う際、こういったアプリで視聴をしている。

 もちろん、見に行った試合を再度見たい時とか。

 現地で見たけど、勝った試合は何回でも見たいしね!


 映像を流しながら、スマホを手にし、吉川さんにお礼のメッセージを送る。

 その後は今日の試合について呟いたり、写真を投稿しているSNSのタイムラインを眺めた。


「ほんと、今日は楽しかったなぁ……」


 欲しかったグッズも目当てのスタグルも買えて、試合も勝ったし!

 こんなに満足したの久々じゃないかな?


「社交辞令じゃないなら、ほんと、次も一緒に見てくれたらいいな……」


 吉川さんの方から次もと誘ってくれたから、社交辞令という可能性は低いと思うのだが……本当に次も一緒に見てくれるのか少し不安に思う。

 深く考えすぎかな。


 好きなことを一緒に語りながら見れるというのは、どのジャンルにも言えることだけど、楽しいし、出来れば次も一緒に見たいなぁ、でもなぁと悩んでいたが、暫くした後に吉川さんからメッセージが返ってきて、『次の休みが決まったら教えて下さい』と書いてあったので、社交辞令じゃないことが判明してホッとした。


 次の休みが決まったら、吉川さんにお誘いのメッセージを送ろうと決めた。


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