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富豪妖精リッカの事件墓~収入の謎~

 迷宮都市アザナエル。ここでは幸せと不幸が交互にやってくる。私の幸せ、敵の不幸せ。私の幸せ、他人の不幸せ。

 今日も私たちは命を賭けたギャンブルに大勝ちして凱旋するのだ。


 迷宮にはいろいろなヒトデナシがいる。


 迷宮に住んじゃうやつ。魔物を殺して平気なヤツ。そして、人から物を奪うヤツ。


 武装したカネに目が眩んだ集団が、無法地帯に集まっているのだ。当然、何か起きる。

 ただ、基本的に人類同士の戦闘や奪い合いは禁止されている。当たり前だ。奪って良し殺して良しなんて事になったら……大変だよ、ねぇ?


 この無様な争いを避ける方法はたった一つの魔法具に委ねられている。

 【ファーストブラッド】と呼ばれる水晶玉が迷宮の入口にある。ここに手を触れて『人の道に反さず、自ら人を襲う事の無い事をここに証明する』と告げるとピカッと光るのだ。夜にロウソク消した後にベッドに入るのに便利だから1個欲しい。


 なんでも、噓をつくと違う色に染まるとか、手が張り付いて離れなくなるとか、実は適当に光ってるだけとか、色んな説はあるけれど、自分たちから率先して人を襲う者は迷宮の出入り口でバレる仕組みなのだ。


 何日か経てばバレないってのも、公然の秘密だけどね。何日も迷宮にいたらお酒吞めないし身体は臭くなるし、なにより危ない。だから、ルールは守った方が安全だよ。

 この臭さを乗り越えた連中が迷宮の中に完全に住居を移して暮らしているわけだ。迷惑この上ない。


 あ、もちろん、身を守るために人を殺した場合は当然セーフだよ。だから、襲われたら返り討ちにしていい。その場合は上手く倒せば武器や鎧などの装備品が手に入る。

 上手く無い場合はメイスやレイピアみたいな武器だけが手に入る。


 何処かで聞いた話だね?



「妖精が居ると運が向いてくるって本当なのね」

「お、おう」


 宝箱の中にはちょっと重くて嵩張る石像が入っていた。鍵とかリボンとか動物の像とか、なぜか迷宮にはそういうがたくたがよく出土する。これがそこそこの値段で売れる。

 今日はもう帰り道なので回収していこう。魔法のバッグに入れて妖精のポケットにポイだ。

 さっき手に入れた魔法のロングソードも良い値で売れるだろう。こっちはラワーヌが背負う。


 毒の矢の当たったサイオーガが毒消し酒を口に含み、傷口に吹きかける。残りは飲む。普通に傷口に掛ければ良いんだけどね。


 ラワーヌは私という幸運の女神がいるおかげで収入がぐんと増えたのでとても機嫌がいい。


 ニアタールも儲かったお金でまた新しい魔法を教えて貰ったとホクホク顔だ。

 別に魔法を教わるのにお金なんて掛からないはず(システム)なのだが、誰かに騙されているのだろうね。


 私の仕事の罠解除は順調だ。身体のサイズにあわせて手が小さいので、鍵穴に直接手を突っ込むことだってできる。指先の器用な人間なんかとは器用さのレベルが違う。


 その代わり、小さい私は荷物持ちとしては役に立たないし、魔法だって使えない。だから、せめて視界を広くとれるようにと、ランタンを持って高い位置を飛ぶのが仕事と言える。結構役に立っているんだよ!

 うん、私たちのパーティーは非常に順調に回っていると言える。



「なぁ、もう一回ここに手を当てて宣誓して貰っていいか?」

「はいはい『人の道に反さず、自ら人を襲う事の無い事をここに証明する』これでいい?」


 ピカリと光るファーストブラッド。首を傾げる管理官。


 ご機嫌で迷宮から出てきた私たちに、迷宮管理官が声を掛けてきた。珍しい。いつもは賄賂だけ受け取ったらさっさと通してくれる係なのだが。

 どうやら、フルメンバーですらないメンバーで毎回稼いで帰ってくる私たちが余程珍しいらしい。


 迷宮の通路は、三人が横に並んで武器を振り回せるほどの幅がある。

なので、前衛と後衛三人ずつで六人で探索を行うパーティーが多い。しかし、そうしなければいけない訳では無い。少ない方が良い事もある。そう、パーティーメンバーが少なければ、それだけ分け前が多いのだ。


「なぁ、お前ら本当に悪さしてないか?」

「なんで?」

「カネを貯めて、そこの嬢ちゃんが背負ってる魔法のロングソードと同じ物を買ったばかりの連中がな、昨日迷宮に入ってまだ出て来ないんだよ」

「これって、そんな珍しい一品物なのかしら!」

「いや、そうじゃ無いけど」

「なんだ、量産品なのね」


 がっかりと肩を落とすラワーヌを申し訳なさそうにみる管理官。この人、いい人だな。


 もちろん、私たちは悪いことなんてしていない。


 しかし、戦利品を売却して山分けしながら呑んでいると、不意にラワーヌが奇妙なことを言い出した。


「でも、なんで妖精が居るとこんなに儲かるのかしら?」

「おい、そりゃ」

「あー、あの、あのな?」


 しどろもどろになる男達を見下ろして、私はくるりと華麗に舞うと金貨の山の上に舞い降りた。


「じゃあ、そのカラクリを富豪妖精リッカが種明かしして見せましょう」


 みなさんも、わかるかな?


アザナエルは「禍福はあざなえる縄のごとし」

リッカは「李下に冠を正さず」

サイオーガは「人生万事塞翁が馬」

ラワーヌは「門前の小僧習わぬ経を読む」

ニアタールは「犬も歩けば棒に当たる」


昔の死んだ相棒のキッツは「泣きっ面に蜂」からとった名前です。

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