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推理!裏腹な事実

 「で、その具体的な方法って何?」

 「ひとつ、あるとすればこのゲーム世界のクリアだと思う。」

 「クリアするって言ったって、最近このゲームには目標もラスボスも存在しないと気づいたところなんだけど?」


 それは至極まっとうな意見だった。本当ならもっと早くに気づくべきなのだろうけど、この世界に詰め込まれた我々には、選択権も決定権もなかった。

 

 「なら、ここらでいっちょ反撃に入ろうじゃないか?巻き込まれ、流され続けてきたボクたちの反撃だ。」

 「「「どうやって?」」」


 出来上がった機体の肩に乗りながら、トビーは語りだす。


 「そもそもこの世界自体、元はと言えばエヴァリアンの用意したものだった・・・ゲームという名の現実改変装置だよこれは。となれば、クリアとはすなわちエヴァリアンにとって有益なものであるはず。エヴァリアンの欲していたものは何だろう?」

 「世界征服出来る戦力?」

 「それもある、けどエヴァリアンの目的はあくまで、裏からの支配だった。そこに欲しいのは戦力ではなく、『カリスマ』だと思う。」

 「カリスマ?」

 

 それは人を導き、扇動する力。いかにヒーローが究極であろうとも『個』である以上、『群』には勝てない。同じことがエヴァリアンにも言える。彼らが歴史の被害者であり、地球人がその真実を知ろうと、多くの地球人は知らんぷりを決め込むだろう。


 「だから、説得力を持たせるための『人気者』が必要になる。だから、イングリッドを手中に収めたかったんだ。」

 「けど、それはもう手に入っちまったろう?」

 「うん、けどそれって本当にエヴァリアンの目論見通りなんだろうか?」

 「どういうこと?」

 「本来の歴史がどういう風にイングリッドという駒を動かすのかは知らないけれど、少なくともそれはバミューダ・ショックによるものではなかったはずだろう?だって、バミューダの介入は『後付け』の設定になるんだから。」


 こちらのゲーム世界にバミューダがやってきたことと同期して、現実世界でのバミューダの武装蜂起は起こった。ならば、バミューダの襲来が不測のアクシデントだった以上、それはエヴァリアンの計画の外ということになる。


 「じゃあなに、クリス司令はバミューダ・ショックをエヴァリアンのマッチポンプだといってたけど、実際は違うと?」

 「そう考えたほうが自然だと思う。この考え方では。」

 「・・・思っていた以上に、バミューダの存在に引っ掻き回されているな。」


 ヤツが生きていたら、その混迷ぶりに大笑いしていたことだろう。もう死んでるけど。


 「エルザ、ユウジ、もしもキミたちがひっそりと生きていて、そんなバミューダの存在が現れたら、キミたちはどうしていたと思う?」

 「・・・勿論戦いに行く。が、俺たちにはもう戦うことは出来ない。」

 「それが出来るとすれば、私たちの子供だけ、か。」

 「そういうこと。それはきっと本心から出た、正義感のもとの行動だったんだろう。それをエヴァリアンは利用した。」


 タマゴじゃなくてニワトリが先だったということか。


 「果たして、このままエヴァリアンと戦うことが正しいことなのかは、今はまだわからない。けどエヴァリアンが好き放題したいと言うなら、ならばボクたちは最大限自分たちのしたいことを選ぼう。そのためにもアスマを死なせるわけにはいかない。」

 「ようやく一周して戻ってきたな。」

 「螺旋階段なら、一周分上がったってトコロだね。」


 ぐるぐる回っているように見えても、ちゃんと前には進んでいる。


 「よし、ドリルも付けよう。」

 「ドリル?なんで?」

 「ドリルも回転のパワーだよ。前進し続けることこそがパワーを生み出す、そんな素晴らしい発明だよ!」

 「よくわからんけど武装には入れておこうかな。」


 ドリルはロマン、回転とはお手軽な強化手段、よってドリルはロマンがあって強い。

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