悪行?世界融合
とうとう20万文字数突破しました。ここまで到達できたのも、ひとえに皆様のおかげです。
「で、向こうで僕が死にそうになってる間、みんなはなにやってたの?というかここどこ?」
「ふっふっふっ、見るがよい!」
レンチを振るっていたトビーが、仰々しく覆いを外す。
そこにあったのは、黒光りする機体。アンテナや肩の姿はカサブランカによく似ていた。
ここは火星基地のドックだ。最終作戦において、アダムは追撃から逃れるために自爆したはずだったと思うが・・・。
「まだ使えそうなところを探して、資材をかき集めてたんだよ。」
「主に俺らがな。」
「僕は機体を組むための情報を集めてたから。」
「それもカサブランカのデータでしょう?」
「(>ω・)」
テヘペロ、とおどけるが、今こうしてレンチを振るっていたからには、トビーが組み立てを取り行っていたんだろう。
「そうしてコイツは出来上がったというわけ。まだ名前も洗礼も受けてないよ。」
「名前か・・・。」
「カサブランカを継ぐもの、スーパーカサブランカ・・・とか。」
「ダサい。」
かといって、Mk.Ⅱの名前は、向こうの世界でもう使われている。ややこしくなるので別な名前にするべきだろう。
「っていうか色も被っちゃってるよね。」
「色、実は最初は白だったんだけど・・・。」
「みんないろんな色を主張したせいで真っ黒になっちゃったの。」
カラスみたいな話だ。みんな勝手なんだから。
「色は、アーマーチェンジが出来るようにするとか?」
「着せ替え!いいね!アスマはアイデア担当だね。」
「でもそのアーマーはどこに置いておくんだ?」
「それなんだよなぁ。そもそも、向こうの世界で僕死にかけだし。こう、手元にポンと召喚できれば・・・。」
「召喚!そういうのもあるのか!」
「出来ますのトビー?」
「いや、質量保存の法則から言ってナンセンスだね。」
「ズコーッ!」
ないのか。やはり遊馬の死は逃れえぬものなのか・・・。
「そりゃ人はいつか死ぬだろう。」
「死にたくないから戦ってたんだけどなぁ・・・。」
「いっそこっちで生きていったら?」
「それも嫌だな・・・向こうの世界で、約束をしちゃったから。」
「そっか・・・。」
それは非常に小さな約束であるが、遊馬にとってはとても大きな意味を持っている。
「なら、その願いを叶える手助けをするのは、仲間としてやることだね。」
「ホント?」
「未だに俺達の望みである、元の世界に帰るって願いは叶いそうにないがな。」
「もう諦めたら?」
「そういうわけにはいかん。」
「ならどっちにしろ、それまでにアスマには死なれちゃ困るんじゃない?」
「そうなるな。協力するのもやぶさかでない。」
相変わらずモンドはツンデレだなぁと思いつつ。
「で、その方法って?」
「そんな方法があるんですか先生?」
「いきなりこっちに話を振るな。」
「黙って聞いてれば、勝手に盛り上がってくれたけど、結局は私たち頼み?」
隅でじっと親のように見守っていたエルザと雄二が、呆れたような声をあげる。
「だってこの世界について一番詳しいのはエルザと雄二でしょ?」
「だからってなんでも知ってると思わないでほしいのだけれど?」
「ハーン、使えねえの。」
「カッチーン。」
「まあ落ちつけ。可能性があるとすれば、世界そのものの昇華だ。」
「世界の昇華?」
「こっちの世界なら、アイテムを使えば即回復できるわけだろう?」
「それと同じことが現実の世界でも出来れば苦労はしない。」
「逆に考えるんだ、世界そのものの方を作り替えてしまえばいいと。」
「そんなことできるの?」
「出来る。というか、今まさにそんな風になってしまっているだろう?」
「そうか、クラックを広げて、世界の融合を進めればいいんだ!」
「うんう・・・ん?おい待て、それじゃあ今までやってたことなんだったんだ?」
「モンド、人は生きていくうえで多くの間違いを犯す。けどそれを背負っていくのも人生なんだよ。」
「今まさに目を背けようとしているじゃないか。」
クラックの封印を考えていたが、やるべきはその逆、クラックを広げることだった?
タイムライダーの世界なら、タイムゲドンのすることだ。むしろタイムゲドンが時空犯罪を犯す旨味がわかるというか・・・。
「でもモンドもタイムゲドンなら問題ないでしょ。」
「問題あるわ!」
まあ、わざわざ罪を重ねる必要はないわな。しかし、こういう時に使える台詞を遊馬は知っていた。
「モンド、タイムライダーが守るのはタイムライダー法じゃなくて、人類の命と未来でしょう?」
「そうだな。」
「僕は人類の一部、僕の命と未来が危ぶまれている。」
「そうか。」
「よってこれはモンドの名誉を傷つけない、君が守るのは、法律じゃない。」
「今度は誰のセリフだ?」
「未来の君だよ。」
「なら仕方ないな。」
「よっしゃ。」
交渉成立。見事な交渉術だと自分を褒めてやりたいところだ。




