天雷!舞い降りる光
「司令!遊馬を置き去りにするつもりですか?!」
「マイクロウェーブを躱したらすぐに浮上する。それまで生き延びられると踏んでいる。」
「果たしてそれが出来るかな?」
「お前はもうちょっと自分の息子の心配をした方がいい。」
結果的にその危険に置いてきてしまったクリス司令には言えないことかもしれないが。それにしたって和馬はドライすぎる。
「アイツはやれば出来る子だから、なにも心配はないよ。」
「それはわかるが・・・。」
「それにいざという時は自分の命の方が惜しい。」
「お前。」
潜水を開始したネプチューンは、大陸棚の境目にある海溝を目指す。時間の猶予はなく、遊馬を置き去りしたことに誰もが後ろ髪を引かれつつも、最大船速で離脱する。
一方、遊馬は海中の様子がわからないので、無事に逃げおおせてくれたことを祈る・・・ところだがそんな余裕もない。いつ天から裁きの光が降り注ぐのかもわからぬ状況で、あてどもなく空を逃げ回っている。
「島?」
水平線上に、小さなでっぱりが見えた。陸地というにはあまりにも小さなそれは、わずかばかりの木が生えた島だった。そこに救いなどあるはずもないのに、今まさに溺れそうになっている遭難者のような思いで、遊馬はその島を目指して飛んだ。
「あっ、なんの光?」
東の空に、一条の紫色の光が降り注いできた。明らかに自然現象でないそれは、マイクロウェーブを放つためのレーザーサイト、裁きの光の最終通告だ。その威容はまさに圧倒的、これだけの距離があるというのに安心感を一切感じられない。まだ離れなくては・・・。
そういえば、敵の姿が見えなくなった。おそらく遊馬よりももっと安全な場所にいるんだろう。
「ここより、もっと上の方が安全なのかな?」
海面だと、水蒸気爆発の衝撃波や津波が怖い。もっと上空ならその心配もないだろうが、おそらく待ち構えていることだろう。前門の虎後門の狼とはこういうことか。だが、ここでまごついてはいられない。レーダーに注意しながら上空に向かう。
「予測発射時間まで、あと10秒・・・本当に来るのか?」
「司令!ネプチューンの退避完了です!」
「よし、全員対ショック態勢!衝撃に備えろ!」
「おねーちゃん、あれきれいだねー?」
「そうだねー。アレ大丈夫なの?」
「計算ではここまでは大した衝撃は来ません。」
「だってさ、安心だねー?」
「やつら、マジで撃つつもりか・・・。」
「そんなことより、はやく上がってこないかな、先輩たち。」
「姉さん・・・。」
恐怖のカウントダウンが進む中、各々がその様を見つめる。




